平成7年度 委託研究ソフトウェアの提案 |
これをさらに高度にすることを考えた場合,複数ロボットによる協調作業が考 えられる.例えば,作業環境上に置かれている積木を箱の中に片付ける問題を 解決するのに,4台の垂直5自由度マニピュレータロボットと視覚センサを用い ると,各ロボットは積木と箱の位置を入力に頼ることなく認識でき,受渡し協 調作業を行なうことで,遠くの箱に積木を片付けることが可能になる.
しかしながら,複数の自律ロボットによる協調動作を行なうためには,ロボッ トどうしの衝突回避や受渡し作業を依頼するために交渉を行なわなければなら ず,また,受渡し作業を実行中に目標位置が動いてしまったような場合,現在 の作業を中止し,新たな受渡し作業計画を作成しなければならない.それらの ことを一つのプロセスで実行することは困難であり,以上の機能を並列分散に より処理可能なロボット言語が必要となる.
本研究では,複数台のロボットが環境上に存在し,物体をつかみ,またロボッ トどうしが同期を取りながら受渡し等を行なうことにより,ゴールを達成して いくシステムの設計を目指す.この時,本研究ではタスクエージェントを用い て問題解決を行なっていく.タスクエージェントとは,1つの物体をゴールま で移動するタスクを,それぞれエージェントと考えたものである.それぞれの タスクエージェントどうしが,交渉し合い,競合解消,最適プランの選択を行 なうことで,ゴールを達成していく.
1つの実験例として,作業スペースにブロックが散乱しており,それをボック スに片付けていく片付け問題を本研究では取り上げる.また,実験環境として, 縦180cm,横180cmの作業スペースに,垂直多関節型5自由度マニピュレータを4 台配置し,動的環境の対応のためにこの作業スペースを上から視覚センサが捕 らえている環境を考える.この環境において,マルチエージェントロボットシ ステムを設計する.
熟考性と即応性を考慮したシステム
プランニングを行ないプランの実行をする際には,どのプランを実行するのが 最も良いかを考える必要がある.そこで,プランの実行にあたっては,どのプ ランが最適かを熟考する必要がある.しかし,例えば物体を受け渡している途 中にボックスが移動した場合には,そこからどのボックスに入れるのが良いか 他のロボットと交渉していたのでは,遅い.そこで,このような場面には最も 近いボックスに入れるプランを選択し実行する.これは,即応的な行動を行な う.このように,熟考と即応を組み合わせることによってより効率的な作業が 可能となるマルチエージェントロボットシステムのアルゴリズムを作成する.
システムの汎用化
以上のようなシステムは,本研究の実験環境でしか動作しないものであり,プ ログラムも他人には非常に難解なものとなっている.そこで,利用者が理解し やすく,また利用者自信の環境にあったシステムへの変更が容易なシステムを 設計する必要があると言える.そこで,汎用性を有するマルチエージェントロ ボットシステムの構築が必要となる.そのために本研究では,KL1によるKLIC 処理系で動作可能なロボット言語を設計する.ロボット言語は,複数のオペレー タからなり,行動オペレータを始めとして,計画作成オペレータ,環境監視オ ペレータ等が存在する.ロボット言語は,抽象的な表現を入力することで容易 にロボットに作業を行なわせることが可能なものと設計する.
その後,開発を行なったロボット言語を用いて,動的環境に対応したマルチエー ジェントロボットシステムを設計する.
またインタフェースは,X-Windowにより作成する.このインタフェースからは, ロボットの台数,稼働範囲,受渡し可能範囲等を入力可能にし,利用者が自信 の環境により容易に変更できるものにし,より汎用性の高いシステムを構築す る.
www-admin@icot.or.jp