第五世代コンピュータプロジェクトの開始当初の計画には、その技術目標の 実現に関連すると思われたハードウェアやソフトウェア、さらに知識処理の 応用など、いろいろな研究課題が挙げられていた。 それらの中には、柔軟なマンマシンインターフェース実現を目指した 画像や音声処理、自然言語処理技術等も含まれていた。
これらの研究課題は、研究の進捗とともに評価され、相互に比較されて、 徐々に絞り込まれた。最終的には上で述べた、中核的な目標との関連において 最も重要と思われた二つの大きな技術の グループにまとめられた。
一方、実験的応用システムとしては、当初の関連研究課題に挙げられていなかっ た遺伝子情報処理システムや、判例をもとに被告の罪状を推論する法的推論 システムなどの新しいシステムの試作が追加された。 実験的応用システムは、本プロジェクトで開発された並列 プログラミング技術や知識表現技術などの評価を効果的に実施することを 可能とした。
また、その開発を通して、知識を記述したり体系化する際の難易度が、応用 分野ごとにかなり異なることもわかってきた。たとえば、自然科学分野に比べ、 社会科学分野や人文科学分野では難易度が高く、さらに深い基礎研究が必要 である。そのほか、実験的応用システムは、それ自身が新しい応用 分野を開くという重要な役割を演じた。