FGCSプロジェクトの評価に関する報告

Wolfgang Bibel
Technical University Darmstadt
Germany

1992年6月4日

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 1990年の始めに約2週間にわたってICOTを訪問し、FGCSプロジェクトの枠組みの中
で遂行されている多くのプロジェクトの各側面についてより詳細に知ることができた。この
ときは、ちょうど、プロジェクトの最終段階の作業計画が最終的に決定されるときだった。
これは千載ー遇のチャンスであり、私は、計画作業に携わるスタッフに対して、演繹推論と
自動的な定理証明が、プロジェクトの終了時にPIM上で動作する予定の基本ソフトウェア
のための有望なアプリケーション領域であることを強調した。

 この13年間に何度か日本を訪問したばかりでなく、ICOTから何人か訪問者を迎える
機会も得た。1981年月に淵博士と故元岡教授がミュンヘンのTechnical Universityを訪
れ、第1回の会議の概要を説明してくれた。その後、ICOTから何人かの研究者(少なく
とも10人)がミュンヘンの私の研究所を訪れ、また最近はやはりドイツのダルムシュタッ
トの研究所を訪れ、成果、経験、および意見の交換を積極的に行った。その中には、古川博
士、長谷川博士、藤田博士などがいる。

 1991年にドイツのBirlinghofenのGMDで開催された「演繹推論に関するドイツ一日本
ワークショップ」では、お互いの成果について特に詳細にわたって意見を交換することがで
きた。このワークショップでは、私はコーディネータの役を担った。日本からは8人の研究
者(大部分はICOTから)が参加し、ドイツからは2人の研究者が参加した。

 さらに、IJCAI、AAAI、ロジックプログラミング、自動演繹推論などの会議では、ICOT
から参加した研究者と出会う機会が数多くあった。

 これらのことを述べたのは、このプロジェクトの最終成果に対する私の評価が、このプ
ロジェクトのライフスバン全体の作業を私がかなり熟知していることに基づくものであるこ
と示すためである。また、まさにこのプロジェクトの開始時点から、私が大きな興味と共感
を持ってこのプロジェクトを追跡していたことを示すためである。この点から、私の判断は
片寄っているとも考えることができるであろう。しかしながら、科学に対して同じ所見を持
つことに問題はないはずである。

2 評価規準

FGCSプロジェクト程度の規模のプロジェクトを評価する方法にはいくつか考えられる。
これらの方法のどれを適用するかによって、得られる評価結果も変わってくる。誤解の可能
性を排除するため、まず最初に現在の状況を踏まえて、私がこれらの方法の内からどれを採
用したいかを明らかにする。

 1.財政担当者の評価方法では、1981年に発行されたこのプロジェクトの当初のレポー
  トに立ち返って、それをチェックリストとして便用し、現在実際に達成された目標の
  パーセンテージを計算することになるであろう。私は、FGCS程度の規模の基礎研究
  プロジェクトでは、このような評価はほとんど意味がないと強く信じている。したがっ
  て、このレポートではこの方法は採用しない。にもかかわらず、私の持っている感覚
  では、このプロジェクトは、その一里塚となる主な目標のすべてを実際に達成したと
  いうことができる(ただし、あまり重要でない話題の中には、何らかの理由で途中で
  断念されたものもある)。

 2.ジャーナリストの評価方法では、何らかの過程やできごとによって発生した社会的な
  期待に対する成功の度合いを計ることになる。FGCSプロジェクトは、たしかに人に
  よってまったく異なる各種の期待を与えた。たとえば、日本の報道機関は、アメリカ
  の報道機関とはかなり異なる理解を示した。(かなりの量の国家資金が投入されるた


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