FGCSプロジェクトの評価に関する報告

Wolfgang Bibel
Technical University Darmstadt
Germany

1992年6月4日

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要約

 このレポートでは、第五世代コンピュータシステム(FGCS : Fifth Generation Com-
puter System)プロジェクトの成果について簡潔に評価を試みる。まず最初に、私の評価
の背景を明らかにするため、このプロジェクトに参加した研究者たちと私の関係について説
明する。次に、評価の規準を明確にする。3章の「評価」では、技術的な成果について主に
以下の3つの観点から記述する。

 ・マシンとソフトウェアを同時に設計することに関して、ロジックを、統一的かつ効率
  的な枠組みとして提示。

 ・並列性の採用により示された非常に大きな進歩。

 ・ロジックでプログラムを作成することによる効率の向上を証明。

 これらの点を考慮し、またこのプロジェクトのその他の多くの成果を考慮した結果、こ
のプロジェクトはたぐいまれな成功を納めたと判断できる。さらに4章では、このプロジェ
クトの基盤に横たわる主な仮説についていくつか考察し、結論としてそれらがすべて現実
のものとなり、正しく証明されたことを述べる。最後の章では、ICOTの将来とFGCSの
精神を受け継ぐ研究について多少の意見を記述する。ICOTは一定期間は存続させるべき
であり、また情報技術の基礎研究のために日本が何らかの研究機関を設立するように提案す
る。

1 ICOTの研究と私の関係

光栄なことに、私はFGCSブロジエクトの要人とその準備の段階から、もっと正確には1979
年8月に東京で開かれたIJCAI-79から接触を持つことができた。その会議で淵博士との議
論を通して、プログラミング、問題解決、および知識工学のためのコンピュータを構築して
使用するために、ロジックが統一的かつ包括的なアプローチとしての潜在的に利用できると
の共通の認識を持った。

 1981年に、私は、最初のFGCS会議において6つの招待講演の1つを行う名誉を得た。
この講演において、論理の視点から、ソフトウェア開発に対する私の見解を示した。この概
念は、プログラム合成にMGTPなどのツールを適用することなど(すなわちMENDELS
ZONE)、現在FGCSプロジェクトの中で開花しつつある。


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