(1) KLIC の実行時システムの改良・拡張
研究代表者:近山 隆 助教授
東京大学大学院 工学系研究科 電子工学専攻
- 【1】 研究進捗状況
- ☆ 世代方式ガーベジコレクタ: 本格的な利用に耐える世代方式の
ガーベジコレクション (GC) を実現するために, GC の諸方式の
サーベイ, 現行のKLIC の GC の調査を行なってきた. その後,
基盤化プロジェクトで試作した世代方式 GC について, 試作を担
当した三菱総研の関田氏のご協力を得て調査し, その問題点を明
らかにした. 現在その結果に基づき新たなアルゴリズムを設計
中である.
- ☆ デバッグ機能の強化: 柔軟で豊富な機能を提供するトレーサを
実現するため, KL1 自身でトレーサを記述する方式の概略の設計
と, そのために必要な KLIC システムの機能設計を固めた. こ
れに基づき, 必要な機能を KLIC システムに付加した. これと
並行して, ソースコードの書換えを行なう方法でステップ実行機
構を模擬し, トレーサのサンプルコーディングを行なってきた.
付加機能つきの KLIC システムの完成を受けて, 現在はこれを試
用しつつ, トレーサの開発を進めている.
- ☆ 自動負荷分散機構: プログラム中の簡単なアノテーションと実
行時システムの協同による自動負荷分散機構を設計した. この機
構は, 全体の稼働状況を管理する管理プロセスと, 各ワーカ毎の
分散可能タスクを管理するプロセスからなる. プログラム中に
分散しても良いと付記されたタスクを, ワーカが忙しくなければ
自分で局所的に, 自分が忙しく他に暇なワーカがいればそこで実
行させる. そのプロトタイプは完成したが, 実行終了判定につ
いて問題点があり, そのアルゴリズムを再設計中である.
- ☆ その他: 上述の研究の途上で発見したものを含め, KLIC のバグ
や, 今後の拡張上問題になる点を修正した版を作成した.
- 【2】 現在までの主な成果
- - バグ修正や整理を施した KLIC 処理系
- - さらにステップ実行機構を付加した KLIC 処理系
- 【3】 今後の研究概要
- ☆ 世代方式 GC: 実用に耐える世代方式 GC を設計, 試作し, これを評価する.
- ☆ デバッグ機能の強化: KL1 自身によるトレーサを構築する. ま
た, 時間が許せばグラフィック・インタフェースを付加する.
- ☆ 自動負荷分散機構: 異なる方針に基づく自動負荷分散機構を開
発し, 性能を比較, 時間が許せばもっとも有望な方針に基づくも
のについて KLIC 処理系自身にサポート機能を組み込む.
- 【4】 今年度目標成果
- 以下の諸機能を持つ KLIC の新版を構築, 提供する.
- ☆ 性能向上に貢献する実用的な世代 GC
- ☆ 豊富で柔軟な機能を持つトレーサ
- ☆ 簡単に使え, 利用範囲の広い自動負荷分散機構
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