平成7年度 委託研究ソフトウェアの中間報告

(1) KLIC の実行時システムの改良・拡張

研究代表者:近山 隆 助教授
      東京大学大学院 工学系研究科 電子工学専攻


[中間報告]

【1】 研究進捗状況
☆ 世代方式ガーベジコレクタ: 本格的な利用に耐える世代方式の   ガーベジコレクション (GC) を実現するために, GC の諸方式の サーベイ, 現行のKLIC の GC の調査を行なってきた. その後, 基盤化プロジェクトで試作した世代方式 GC について, 試作を担 当した三菱総研の関田氏のご協力を得て調査し, その問題点を明 らかにした. 現在その結果に基づき新たなアルゴリズムを設計 中である.
☆ デバッグ機能の強化: 柔軟で豊富な機能を提供するトレーサを 実現するため, KL1 自身でトレーサを記述する方式の概略の設計 と, そのために必要な KLIC システムの機能設計を固めた. こ れに基づき, 必要な機能を KLIC システムに付加した. これと 並行して, ソースコードの書換えを行なう方法でステップ実行機 構を模擬し, トレーサのサンプルコーディングを行なってきた. 付加機能つきの KLIC システムの完成を受けて, 現在はこれを試 用しつつ, トレーサの開発を進めている.
☆ 自動負荷分散機構: プログラム中の簡単なアノテーションと実 行時システムの協同による自動負荷分散機構を設計した. この機 構は, 全体の稼働状況を管理する管理プロセスと, 各ワーカ毎の 分散可能タスクを管理するプロセスからなる. プログラム中に 分散しても良いと付記されたタスクを, ワーカが忙しくなければ 自分で局所的に, 自分が忙しく他に暇なワーカがいればそこで実 行させる. そのプロトタイプは完成したが, 実行終了判定につ いて問題点があり, そのアルゴリズムを再設計中である.
☆ その他: 上述の研究の途上で発見したものを含め, KLIC のバグ や, 今後の拡張上問題になる点を修正した版を作成した.

【2】 現在までの主な成果
- バグ修正や整理を施した KLIC 処理系
- さらにステップ実行機構を付加した KLIC 処理系

【3】 今後の研究概要
☆ 世代方式 GC: 実用に耐える世代方式 GC を設計, 試作し, これを評価する.
☆ デバッグ機能の強化: KL1 自身によるトレーサを構築する. ま た, 時間が許せばグラフィック・インタフェースを付加する.
☆ 自動負荷分散機構: 異なる方針に基づく自動負荷分散機構を開 発し, 性能を比較, 時間が許せばもっとも有望な方針に基づくも のについて KLIC 処理系自身にサポート機能を組み込む.

【4】 今年度目標成果
以下の諸機能を持つ KLIC の新版を構築, 提供する.
☆ 性能向上に貢献する実用的な世代 GC
☆ 豊富で柔軟な機能を持つトレーサ
☆ 簡単に使え, 利用範囲の広い自動負荷分散機構



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