第3章 米国政府支援SDP(Software Design and Productivity)研究開発の動向
1999年2月に、米国のPITAC(ITに関する大統領諮問委員会)は、ITに関する米国政府支援の研究開発に対し、長期的基礎研究とソフトウェア研究の重要性を訴える提言を行った。この提言を受けて、米国の情報技術研究開発政策の柱であるネットワーキング及び情報技術研究開発(NITRD:Networking and Information Technology Research and Productivity)に「ソフトウェアの設計と生産性」(SDP:Software Design and Productivity)という研究領域が追加された。本章では、このSDPが何を目指しているかについて、2001年4月アーリントンで開かれたワークショップの内容から紹介し、2003年度のSDPの活動計画として、米国はどのような研究に取り組んでいるかを紹介する。また、SDPが目指すものに関連した注目すべき最近の技術、システムについて紹介する。
1999年2月に、PITAC(ITに関する大統領諮問委員会)は、ITに関する政府支援の研究開発に対し、次の示すように、長期的基礎研究とソフトウェア研究の重要性を訴える提言[1]を行った。
●1992年以来、IT関連の生産高はGDPの1/3を占め、数百万ドルの雇用機会を提供してきた。
●しかし、現状の政府の投資は、長期的なハイリスクな研究開発よりも、各省庁のミッションを追求する短期的な課題に偏りすぎている。
●このままであると、過去20-30年に渡って続いてきたIT革命へのアイデア供給の流れは途切れてしまう。
●従って、2000-2004年の5年間に下記の研究開発テーマに4,743Mドルを長期的基礎研究開発に追加投資すべきである。
このPITACの提言を受け、政府は、2000年には「21世紀に向けての情報技術」IT2計画として366Mドルの研究開発投資を追加し、2001年にはこれまでのCIC計画(2000年の予算は1,089Mドル)と統合して、ITR&D計画として、1,928Mドルと大幅に増額している。そして、現在は、ITR&D計画はNITR&D計画と名前を変更し、予算規模は1,830Mドル(2002年)となっているPITACは、追加投資すべきとしたソフトウェアについては、以下のような現状、課題、であるとの調査結果を発表し、
●ソフトウェアに対する要求が、国家的なソフトウェアの生産能力を上回っている。
●脆弱なソフトウェアに国家が依存している。
●信頼性と安全性に優れたソフトウェアを構築するためのテクノロジが不十分である。
●ソフトウェア・システムは、急速な勢いで多様化と洗練化が進んでいる。
●一般的な市民にとって、ソフトウェアへの依存度はしだいに高まりつつある。
●ソフトウェアの基礎研究に向けた国家の投資が不足している。
その対策として、次のことを提案している。
●ソフトウェアの基礎研究を最優先課題とする。
●ソフトウェアの開発手法、およびコンポーネント・テクノロジに関する基礎研究に向けた投資を強化する。
●ヒューマン/コンピュータ・インタフェースと相互作用に関する基礎研究を支援する。
●情報管理の方法に関する基礎研究を強化する。
●主な情報テクノロジ関連の研究構想の中に、ソフトウェアの研究を主要な課題として位置付ける。