米国政府支援によるIT研究開発の成果が、今日の米国の経済的繁栄をもたらした大きな要因であることは、インターネットの例を引くまでもない。米国政府の研究開発イニシアチブは相互に影響し合い、新たな研究開発領域を創成し、その成果は産業、経済、社会に大きな影響を及ぼした。こうした成果を生み出したメカニズムについての具体的な調査は、今後のわが国のIT研究開発を考える上で必要なことである。
このような背景から、当研究所では米国における最新のIT関連研究開発イニシアチブに関する調査を、NSFのプログラム・マネージャを経験し、現在、米国World
Technology Evaluation Center, Inc.(WTEC)のVice Presidentを務めるY. T. Chien博士に委託した。本資料はその調査報告書の日本語訳である。
本報告では、電子図書館と電子政府、バイオテクノロジー、インフラストラクチャおよびツールの3つの研究開発計画（イニシアチブ）を取り上げ、それらが誕生した背景、計画の内容、異なる分野間での技術の融合、さらには産業、経済、社会に及ぼした影響などについての調査結果を記述している。また、調査の結果から得られた情報に基づいて、日本のIT研究開発における政府支援の進め方に対する提言も行っている。
米国の政府支援によるIT研究開発に、研究、管理の両面から深く関わった専門家による詳細な調査報告と貴重な意見は、今後のわが国における研究開発に対する政府支援のあり方を考える上で、大いに参考となるであろう。