本編では、米国政府支援のIT研究開発プログラムの最新動向について説明し、さらに本ワーキンググループの調査対象である「人間主体の知的情報技術」について、最近の米国政府の支援する情報技術研究開発の動向を示すために、Blue
Book 2001のトピックの概要(本文は付属資料2参照)、および、Blue Bookの刊行時期に最初の採択プロジェクトが発表されたITRイニシアチブ、そして開始から3年目となり、次々と成果が出てきているデジタルライブラリ・イニシアチブ(フェーズ2)について説明した。
昨年度のBlue Book 2000刊行時は、ちょうど、PITAC報告等により基礎研究重視の雰囲気が急速に盛り上がった時期であり、人間主体の知的情報技術に関連する研究コンポーネント領域HuCS(Human
Centered System)の記述においても、基礎研究支援の中心であるNSF関連の研究開発の紹介に、かなりの重点が置かれていた。
一方、Blue Book 2001は、基礎研究重視の2000年度予算に続いて基礎研究に対するさらなる増額要求を行った2001年度の大統領予算案に対して、議会がさらに基礎研究予算を増額して可決し、いよいよ実行段階に入るという状況の元で出されているが、基礎研究支援の中心であるNSFは前年度にかなりの部分が紹介済みのため事例紹介が少なく、NIST等の他省庁を中心に紹介されている。それらの特徴としては、省庁のミッションに関連した幾つかの息の長い重要研究が、内容の進展とともに、複数の年度に渡り何度か繰り返して紹介されているという点があげられるかもしれない。NISTのSIMA(製造アプリケーションのためのシステム統合)等は、繰り返し紹介されている。
以上のことから、「人間主体の知的情報技術」について、米国の連邦政府の行う情報技術研究開発支援の全体像を知るには、Blue Book 2000とBlue
Book 2001の両方をあわせて参照して頂くほうがよいと思われる。同じ理由から、昨年度の報告書も参考にして頂きたい。
これら、Blue Bookで紹介されたHPCCおよびIT R&Dは、90年代のほとんどを占めるクリントン-ゴア政権の情報技術研究開発の成果による米国の繁栄を象徴している。しかし、2001年早々にブッシュ政権が発足し、米国の情報技術研究開発政策も大きく変わる可能性を秘めている。機先を制する意味もあってか、まだ大統領着任後間もない2月9日にPITACから大統領に向けて以下の3つの報告[1]が出され、ITの重要性が説かれている。
今後、2002年度の大統領予算要求などによって、まもなく方針が明らかにされていくことになるので、ウォッチが必要である。