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3.情報技術の領域と技術開発分野

 ここでは、新しい情報技術の構成領域、すなわち、プラットフォーム、コンテンツ、ユーザインタフェースの各領域における今後の技術開発分野を検討する。
 これまで情報技術はプラットフォーム技術を中心に発達し、「情報技術≒プラットフォーム技術」と捉えられてきた。ところが、パソコン、インターネット、携帯情報機器の出現とその発達、普及により、情報技術の及ぶ範囲が、従来の科学・工学、文書作成・事務作業等から、ビジネス全般、日常生活にまで広がり出した。これにより、情報技術の扱う対象が従来の数値や図形から、より人間に身近な音声や映像などに拡大している。今や、それらがどのようなメディア(データ形式)かということより、どのような中身かを問うことの方が意味のある視点となっている。それらの対象を「データ」でなく「コンテンツ」と呼ぶことが多いのはこの事情を反映している。
また、従来、プラットフォームはそれが使いやすい場所と方法で利用されてきたが、ユーザ層・場所・用途が広がった結果として、新たな相手と状況により適したユーザインタフェースの実現が重要となった。逆に、改良されたユーザインタフェースはさらに情報技術の適用範囲を広げる。
 このように、コンテンツ、ユーザインタフェースの領域が大幅に拡大した結果として、情報技術の重心が従来のプラットフォーム中心から移動しつつある。新しい情報技術を捉えるパラダイムは、もはや従来の「プラットフォーム中心」でなく、「3つの領域(プラットフォーム、コンテンツ、ユーザインタフェース)から構成される技術の総体」が適切である。「目的はコンテンツとユーザインタフェースの実現にあり、その手段がプラットフォーム技術である」と理解することが適切な場面が増えるであろう。情報技術が社会経済一般や娯楽・芸術にその対象世界を広げるにつれ、情報技術を担う人材も従来の情報技術者を中核としながら、各分野の専門家・従事者にまで広げて考えて行くべきであろう。
このように、情報技術は内部的なバランスを変化させながら、全体として産業・経済・社会全体における比重が大幅に増大する (その中で、プラットフォーム技術の絶対的重要度も高まる) 。そして、情報技術の成長発展が今後の経済社会の発展の重要な部分を担うと予想される。
 以下、各構成領域において、今後5年〜10年スパンで重要なものとして研究されうる主な技術及び課題について述べる。

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