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(5)A Framework of Global EC:1997年〜

 電子商取引(EC)に関しては、1997年7月、ゴア副大統領により、Global EC構想が発表された。フレームワークとは、今後の政策策定のガイドとなる原則を示すとともに、電子商取引(EC)の主要課題に対する行政府の姿勢を明らかにし、さらに今後の国際的な交渉の指針を与えるものとされている。このフレームワークでは、5つの原則と検討すべき9つの分野に対する提言を示している。その内容は下記の通りである。

−5原則
(EC-P1) 民間が主導するべきである。
(EC-P2) 政府はECに関する不必要な規制をかけるべきではない。
(EC-P3) 政府が関与する場合、商取引に関する法律を予見できる最小限で一貫した法的環境の整備を行うことを目指すべきである。
(EC-P4) 政府は、従来の通信手段の持つ法的整備が踏襲できないインターネットの特徴を十分に理解するべきである。
(EC-P5) グローバルを基本としたEC促進

−9提言
(EC-R1) 関税と課税:
インターネットにおいて、関税フリーを基本とするべきである。また、課税する場合は、国際的に整合の取れたシンプルなものにするべきである。

(EC-R2) 電子決済システム:
この分野の商業・技術的環境は急速に変化しているので、柔軟性を持たない法律・法令による規制をかけるべきではない。

(EC-R3) ECのための取引規約:
アメリカはEC促進のための国際標準の開発を支援している。インターネット上の商取引が多用されてきたのも、広く認められた規則に基づいた商取引を行うことができたためである。

(EC-R4) 知的財産権の保護:
インターネット上の商取引における知的財産権の効果的な保護のため、WIPOの著作権保護協定は批准されるべきであり、また政府としてはデータベースの保護の検討、GII構築に重要な特許権保護の促進、トレードマーク保護の各国の差異から生じる問題の解決に努力する。

(EC-R5) プライバシー保護:
行政府は民間における自主規制的なプライバシー保護制度を支持し、自主規制や現行技術で不十分な場合は産業界と連携し開発を推進する。

(EC-R6) セキュリティの確保:
GIIを安全で信頼できるものとするべく、行政府は産業界と連携し、信頼性の高い公開鍵暗号のインフラの開発を促進し、必要とされるセーフガードを提供する。

(EC-R7) 通信インフラと情報技術:
多くの国で通信政策により最新のデジタル・ネットワークの発展が阻害されている。わが国は国際的にそれらの競争障壁を除去するように努める。

(EC-R8) コンテンツ:
行政府は、産業界の自主規制、コンテンツの格付け、子供を教育上好ましくないコンテンツから守る技術の開発を支援し、さらに貿易相手国が非関税障壁ともなりかねないコンテンツ規制を阻止すべく合意を取り付ける努力を行う。

(EC-R9) 技術標準:
政府ではなく、市場がインターネット上の技術標準やインターオペーラビリティを決定すべきである。

 Global ECに関する政府の動きの一環として、1998年4月に商務省より「ディジタル・エコノミー」と題する報告書が発表された。この報告書は、ECの現状と今後の展望を述べており、過去5年間の経済成長のうち、約4分の1が情報技術による効果であり、情報技術によりインフレ率が約1.1%抑制効果が働いたと報告している。ただし、Global EC自体に対する提言はされていない。
 また、1998年5月15日にはECに関する日米共同声明を発表した。その他、プライバシー保護の問題、知的財産権、認証問題、暗号政策などECに係る政策的な動きは見られるが、Global ECをキーワードとした、省庁横断的なプロジェクトが大々的に活動を行っている様子は見られない。

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