【前へ】

(4)HPC法失効とCIC計画(1996年〜

 96年度までで実施されたHPCC計画が成功を収めたのを受け、HPC法案失効後の継承計画として開始された。なお、CIC計画について、HPCC計画のときのHPC法のような立法措置は取られていない。CIC計画では、プロジェクトが次のように編成された。

(CIC-1) 高性能コンピュータ通信
(HECC ; High - Performance Computing and Communications)
HPCC計画との関連: 高性能コンピューティングシステム(HPCS)と先進ソフトウェア技術とアルゴリズム(ASTA)の研究対象領域に相当
プロジェクトの目標: 高性能コンピュータシステムにおけるハードウェア及びハードウェアの研究。

(CIC-2) 大規模ネットワーク(LSN ; Large Scale Networking)
HPCC計画との関連: 研究・教育ネットワーク(NREN)と情報基盤技術とアプリケーション(IITA)の研究対象領域に相当
プロジェクトの目標: 高性能な広域ネットワークの構築及び運営に必要な技術の研究。

(CIC-3) 高信頼性システム(HCS ; High Confidence Systems)
HPCC計画との関連: HPCC計画では該当するプロジェクトなし
プロジェクトの目標: 信頼性の高いコンピュータシステムの構築とセキュリティに対する安全性の高いネットワーク構築の研究。

(CIC-4) 人間との親和性を考慮したコンピュータシステム
(HuCS ; Human Centered Systems )
HPCC計画との関連: HPCC計画では該当するプロジェクトなし
プロジェクトの目標: コンピュータを人間にとってより利用しやすいものにするための人間工学的な研究。

(CIC-5) 人材育成 (ETHR ; Education , Training , and Human Resources )
HPCC計画との関連: 基礎研究と人材育成(BRHR)の研究対象領域
プロジェクトの目標 : 教育、トレーニング、人材育成に関する研究。

 次に予算規模であるが、総額はHPCC計画とほぼ同額で、ほぼ毎年増額されている。なお、CIC計画をプロジェクト毎に見ると、最も予算が割り当てられているのが高性能コンピュータ通信(HECC)であり、総額の40%強を占める。次に大規模ネットワーク(LSN)、人間との親和性を考慮したコンピュータシステム(HuCS)がほぼ同額で25%強を占める。予算配分で興味深いのは、新規プロジェクトとして始まったHuCSにLSNとほぼ同額の予算を投資している点である(図表2.5参照)。

図表2.5 CIC計画の各プロジェクトに対する予算(単位:百万ドル)
FY
HECC
LSN
HCS
HuCS
ETHR
Total
備考
1996
(HPCC)





1043
予算実績
1997
453.71
(43.6%)
259.79
(25.0%)
31.95
(3.1%)
248.82
(23.9%)
45.31
(4.4%)
1039.58
(100.0%)
予算
要求額
1998
462.43
(41.9%)
288.19
(26.1%)
33.18
(3.0%)
281.12
(25.5%)
38.64
(3.5%)
1103.56
(100.0%)
予算
要求額

 さて、これらのプロジェクトは複数の研究テーマから構成されている。この研究テーマは、あるプロジェクト単独のテーマである場合と、複数のプロジェクト合同の研究テーマの場合がある。そして、これらの研究テーマについて、ある省庁が主体となり、他省庁が協力するという体制で研究が進められている。
 例えば、研究テーマ「大規模システムとソフトウェア」は、高等計画研究局(DARPA)が主体であり、全米科学財団(NSF)、エネルギー省(DOE)、航空宇宙局(NASA)、国家安全局(NSA)が協力して研究が進められた。この研究テーマにはHECCから35.2百万ドル、HCSから5百万ドルの予算がついている。
 また、研究テーマ「NSFNET」のように、DARPA、NSF、DOE、NASA、国立衛生研究所(NIH)が研究主体で参加し、その他の省庁が利用者として参加するケースもある。
 大統領府からCIC計画のプロジェクトに至るまでの実施体制は図表2.8のとおりである。

図表2.8 CIC計画開始当初(97年度)の実施体制
(Bluebook96, Bluebook97,HPCC implementation Plan 97を参考に作成)

【次へ】