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(3)GII構想:1994年〜
 1994年3月、ブエノスアイレスで開催された国際電気通信連合ITU総会において、ゴア副大統領がGII構想を発表した。各国のNIIを連結し、グローバルな情報基盤を作ろうというものである。GII構想については、HPCC・IT委員会の情報基盤タスクフォース(IITF)によって、GIIアジェンダ(The Global Information Infrastructure: Agenda for Cooperation)が1994年秋に発表されている。このアジェンダでは、次の5つの基本原理が示されている。

(GII-1)民間投資を支援すること
(GII-2)競争を促進すること
(GII-3)オープン・アクセスを提供すること
(GII-4)柔軟な法環境の整備
(GII-5)世界的なサービスの確保

 これらの基本原則は、ITU総会において、ブエノスアイレス宣言に取り上げられた。これらをNIIの基本9原理(NII-1)〜(NII-9)と対応してみると、大筋を簡素化していることがわかる。また、HPCC計画においても目立った対応はされていない。その理由として、NII構想によって登場したナショナル・チャレンジ(NC)の延長線上にGIIがあると考えているためと思われる。
GII構想の発表は科学技術的な要素を全面に出した情報化政策というよりは、アメリカが今後情報技術において主導権を握るための先手策であると考えられる。また、GII構想の発表には(NII-8)の内容が深く関与していると考えられる。

 この頃、米国会計検査院(GAO ; General Accounting Office)は、HPCC計画について興味深い報告書を出している。この報告書のタイトルは、モHigh Performance Computing and Communications: New Program Direction Would Benefit From a More Focused Effortモ(1994)で、調査内容は、

(1) HPCC計画が設定した目標と評価プロセスに対して、現在の組織体制が妥当であるか
(2) HPCC計画の研究テーマのプランニング・実施が、どのように各産業に浸透していったのか

である。この調査を通じて、HPCC計画は省庁間プロジェクトとして、多くの研究成果を産出し、大成功を収めていることが報告されている。なお、GAOは調査結果に基づき、HPCC計画に対する政策提言を記している。
 この報告書で注目すべき点は、GAOの政策提言に対する科学技術政策担当大統領補佐官のコメントである。コメントでは、コアとなる研究テーマに焦点をあて、柔軟な実施体制を編成する旨が記されており、現在に至る情報政策に反映されている。これ以降、政府から発表されるプロジェクトに対するマネジメントは、HPCC計画(1997年からはCIC計画)が研究開発の将来的な方針を評価していると考えられる。また、科学技術政策担当大統領補佐官のコメントにあったアプリケーションに関する機関は、1997年に設置された。

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