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2.3 Performance Budgetingとフレキシビリティ

2.3.1 経営管理上のフレキシビリティと「Waiver(免除)」

ここに言う「Waiver」とは、存在する省庁内規則や方針(Policy)から逸脱する権限/裁量を与えられることを意味する。この「Waiver」は、Performance Budgetingの基本方針を具現化する「経営管理上のフレキシビリティー」を実現する上で、重要な政策ツール/手段となっている。大統領は1998年、各省庁の内部規則に関する「Waiver」授与のプロセスを促進/効率化するために以下のようなメモランダムを発表している。Waiver申請と授与がスムースに進行させる実効性の高い内容となっている。

MEMORANDUM FOR THE HEADS OF EXECUTIVE DEPARTMENTS AND AGENCIES
THE WHITE HOUSE, April 21, 1998
Subject: Streamlining the Granting of Waivers (「Waiver」授与プロセスの合理化)
(要約)
「これらのWaiverは、多くの場合、より効果的効率的な政府を実現しようとする前線の担当官によって要請される。各省庁のトップにおかれては、彼等により多くの権限を委譲し、その莫大な潜在的能力を引き出すようにお願いしたい。--- さまざまな成功事例が挙がってきている。」
「Waiverを積極的に授与していく次のような運用が行なわれている。以下の方法を貴省庁でもどんどん取り入れていっていただきたい。
  1. Waiver の要請は30日以内に審査および授与の可否の決定が行なわれる。30日を超えてなお結論が出ない場合、そのWaiverの申請は認められたものとして実行に移すことができる。
  2. 省庁の内部規則を改変する権限を持っている担当官はWaiver申請を「認可」することはできるが、「却下」できるのは各省庁の長のみである。」

但し、本メモランダムは補助金によって運営されるプロジェクトには該当せず、また法律によって必要とされている業務に関しては及ばない。本メモランダムは連邦法によって定められていない各省庁の内部規則についてのみ妥当する。

 一方、GPRAでは、連邦予算費目を「逸脱」して費目間の柔軟な移行を認める「Waiver」に関して言及している。

1993 GPRA SEC. 5. MANAGERIAL ACCOUNTABILITY AND FLEXIBILITY.
Chapter 97 of title 31, United States Code, Sec. 9703. Managerial accountability and flexibility (a)
「FY1999より、GPRAにより提出が定められた年間業績計画書においては、人員配置、報酬、費用負担等の事務手続に関する「Waiver」を提案することが認められる。また、本来は禁止されている予算費目間での資金の流用を、以下の費目コードの範囲で認めるような「Waiver」に関しても同計画書を通じ提案することができる。 予算費目分類20および小分類11, 12, 31, 32である。こうした費目間流用が認められる代わりに、そのプロジェクト/部署では、業績目標を達成することに対する説明責任が要求されることは言うまでもない。」

上記のごとく、GPRAで費目間流用が認められる予算分類は以下のものである。

 ここでは、予算分類25.5「研究開発契約」もこの費目間流用の対象に含まれていることに注目したい。上記分類コードの範囲内で、他の費目から、また他の費目への資金の流用が可能になる。この予算費目間の流用はFARに「Waiver」の範囲を拡大するものである。次に紹介する国防省の例は、FAR/DFARSに対する「Waiver」が認められたケースである。

NPR Waiver Clearinghouse Information
Department of Defense, Defense Logistics Agency
Authority to Deviate from the FAR and DFARS

Synopsis: Defense Procurement has granted contracting activities participating as designated National Performance Review Reinvention Laboratories authority to deviate from the FAR and DFARS

Description: The FARS and DFARS authority applies only to those deviations necessary to support a reinvention objective. It does not apply to those deviations which require publication in accordance with the requirements of FAR 1.501 (the solicitation of agency and public views, those reserved for the Director, Defense Procurement in accordance with DFARS 201.402 (1) (i), requirements imposed by statute, or requirements that implement the regulations or directives of other agencies.

Anticipated Results: Provide authority to deviate from the Federal Acquisition Regulations (FAR or the Defense Federal Acquisition Regulation Supplement (DFARS)

Progress and Accomplishments: Waiver approved
Last Update: 04/16/98



2.3.2 Performance Budgetingの進展の遅れ、問題点

 「Waiver」授与のシステムは決して順調に進んできているわけではない。FY1998/1999では、省庁内規則に対する「Waiver」授与のパイロットプログラムが企画されたが、申請された「Waiver」の数がそもそも少ない上に、そのほとんどが却下されるという憂き目を見た結果、当該会計年度の同パイロットプログラムは事実上お流れになってしまった。その結果、OMBへ提出される年間業績計画で「Waiver」の申請を行なった省庁はなんと皆無だった。

<関係担当官の談話>
Deidre Lee, OMB's acting Deputy Director for Management
「各省庁が言うには、彼等はまだ業績評価の尺度や新しい予算構造の構築が済んでおらず、予算要求と業績を連動させる準備ができていない、ということです。各省庁はまた、業績に関する情報を予算に使うことで議会の注目を浴びてしまい、逆に予算カットの餌食になってしまうのでは、と憂慮しています。」
「しかしながら、FY2001にはパイロットプログラム省庁が選定され、予算を要求するさまざまなフォーマットを実験的に試していくことになっています。例えば、異なるレベルの予算額でどのくらい政策プロジェクトの成果に差が出るか、といった感度分析のようなものもそこには含まれています。」

Paul Posner, GAOユs Director of Budget Issues (政府経営、情報、技術に関する下院政府改革小委員会での議会証言)
「たいていの省庁は、議会や大統領府と同様、いまだに予算要求を「意図された結果」よりも、人件費や旅費、設備費といった「費用そのもの」にリンクさせて考えている。」
「予算作成・決定プロセスは生来的に政治的選択(要は資源の取り合い)の実践である。業績に関する情報は究極の決断の背景となる一要素ではあり得るが、決して唯一のものではない。」

 上記の談話に見られるように、各省庁レベルでの躊躇、そして予算プロセスが本質的に持っている政治的要素が、Performance Budgetingをそう簡単には実現させない要因として立ちはだかっているようである。 行政管理予算庁(OMB)は、2001年3月、その時点までに連邦政府が得たPerformance Budgetingの経験について、報告書を議会に提出することになっている。

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