前項のPerformance Budgetingからも明らかなように、NPR/GPRAの成功の鍵は、いかに行政(予算要求を行なう大統領及び各省庁)と立法府(予算決定権者)が密接にリンクし、業績情報に基づく予算配分を効果的に行なえるか、というところにある。第2次大戦以降4度にわたり試みられた業績主義予算への取り組みは、行政サイドの業績に基づく予算要求と立法府の資源配分プロセスのリンクに失敗し、うまく行かなかった。それに比較し、NPR/GPRAは各省庁の戦略計画策定に際しての両者協議をより明確に義務付け、Performance Budgetingの実行メカニズムをより詳細に設計している点で成功する確率は高いと考えられる。
2.4 NPR/GPRAの限界、問題点
しかしながら、前項で明らかになったPerformance Budgetingの問題点(予算プロセスが本質的に持つ政治的要素)は、やはりそのままNPR/GPRAそのものの弱点であると言いかえることができる。より踏み込んで言えば、NPR成功の鍵を握る行政と立法の連携は、異なる原則の下に成り立ち、本来的に拮抗するように設計されている二つの権能の連携なのであり、両者の協力関係は本質的に脆弱であるといわざるを得ない。
すなわち、克服すべき課題とは、行政と立法の予算協議をいかに実質の伴うものとし、時に矛盾し、資源をめぐってあい争う省庁のプログラムの利害をどのように調整していくのか、ということである。
会計検査院(General Accounting Office)は独立した権限を持つ組織であるが、議会への報告書「Performance Budgeting:Past Initiatives Offer Insights for GPRA Implementation」で、以下のような問題点・背景を指摘している(要約)。
1. 生来的に拮抗・競争関係にある行政と立法の関係 立法府と行政府のチェック&バランスの関係は常に存在していなければならない。であるが故に、立法府は自身の監視者としての役割に集中し、短期的業績を追求する傾向がある。一方、行政府の官吏は長期的目的の達成を強調し、変化するニーズへの適応性、政策実施におけるフレキシビリティを重要視する傾向にある。 2. 業績評価作業自体が省庁の重荷になるという懸念 GPRAの要求事項は、既存の情報公開や報告書提出の義務にさらに上乗せされるものであり、ことのほかわずらわしい厄介なものとなる可能性がある。 3. 予算削減圧力とGPRA推進圧力の相乗効果(負の効果) 複数の省庁関係者は、この二つの圧力のおかげで、省庁のスタッフの間にはより守りの姿勢を強めるかもしれないと指摘している。 4. 省庁による情報操作の可能性(モラルハザード) 立法府のスタッフは、「省庁と議会が連邦政府歳出を削減する方策をめぐって議論することになると、省庁間やプロジェクト間の業績をめぐる軋轢や利害衝突がより頻繁に表面化するだろう。そうなると、省庁サイドは、あらかじめ情報を再加工して業績のばらつきを少なく見せかけるなど、情報操作を行なう心配がある。」と述べている。 5. プロジェクト廃止決定と省庁のGPRAへのサポート GPRAによって業績と予算配分を連動させていく以上、自省庁のプロジェクトが廃止される決定がされる場合もあろう。その際、行政サイドでのGPRAへの支持を維持することが一体できるだろうか。 |
これら一連の問題は、大統領府、省庁、議会のうちどれか一つ欠けても解決はできない。全ての利害関係者がその解決に参加せねばならないのである。