これまでの調査を通じ、日本と米国の研究開発の仕組みはかなり大きな違いがあることが解ってきた。特に、国が負担する研究開発費用の費目・内容に大きな違いがあること、また会計制度そのものの違いがその根底にあることが明らかになってきた。
また、米国では1993年の政府業績結果法(GPRA:Government Performance and Results Act)により、規則遵守の行政から業績・結果重視の行政管理へ転換(99年完全実施にむけて各省が準備)が図られており、これが研究開発の運営に大きな影響を及ぼすことが予想される。
本章では、米国の国家プロジェクトにおける予算費目と会計処理について、また政府業績結果法の影響について、具体的な事例により、解り易く解説する。本事例の調査は、MUSE
Associatesに調査委託し、とりまとめたものである。
●本調査は以下の2点に関する調査を行った。
なお、「成果物納入において請負者に認められる権利」に関しては、1999年3月の当研究所の資料「米国の政府支援研究開発プロジェクトにおける知的財産権の取り扱いの変遷の歴史とその背景」において詳しく調査されており、本報告書ではその要点を記するにとどめた。
●本調査によって、米国の政府支援研究開発においては、その委託企業が算入できる費目の範囲が広範にわたり、事実上企業活動において発生するほぼ全ての費用を、合理的な配賦の理由がある限り、直接間接に政府契約に賦課できる事が判明した。このような費用算入を可能にする仕組みの背後には、連邦政府の費用会計制度(Cost Accounting Principles)が、民間の会計基準であるGAAP/FASBをほぼ全面的に取り入れ、費用会計のプラットフォームを民間と政府が共有していることにある。
●さらに、現在進行中の行政改革(1993年政府業績結果法を中核とするクリントン政権の政府業績評価タスクフォース)の下では、委託先企業、調達担当官双方の立場から、「調達」規則や省庁の内部細則を鵜呑みにせずに、実情に合わせた合理的運用(契約請負者が事前申請した会計原則からの逸脱、費目間の資金トランスファー、規則細則の柔軟な運用等)が可能であることもわかった。特に担当調達官による裁量権限の拡大については、実情に即した合理的運用を保証する「Waiver(免除)」の仕組みが確立されつつある(1998年大統領令)。このクリントン政権の行政改革は、「Performance Budgeting(業績に基づく予算の作成・決定・執行)」を柱としており、FY1999に初めて全政府規模でのコミットメントがスタートし、2000年3月末に初の業績結果報告書が各省庁から議会と行政府に提出される予定である。
4.2.1 調査対象となるシステム
本調査は、以下の3つのシステムを調査対象とする。1)FAR(Federal Acquisition Regulation (連邦「調達」規則(連邦調達規則)に基づく研究開発政府調達*($25.9B/FY1999、調達総額$173B/1998)、2)政府省庁のニーズと合致する小規模企業の研究開発活動を資金援助するSBIR(Small Business Innovation Research Program、$1.05B/FY1998)、及び3)企業(もしくは営利・非営利のコンソーシアム)の研究開発提案に応じて各省庁が部分的に費用負担するATP(Advanced Technology Program,$204M/FY1999)である。
(*本報告書で言う「調達」とは、英語でProcurementまたはAcquisitionの訳語であるが、日本語で言う「調達」が持つ「既製品・消耗品の買い入れ」という語感よりもはるかに広い概念である。「政府による物品・サービスの購入およびサービス提供の委託」といった語感である。研究開発活動の「調達」もFederal Acquisition Regulation (連邦「調達」規則と訳出)において独立の章(FAR35 Research And Development Contract)として論じられている。)
SBIRやATPは「研究開発の支援」を主目的としているが、政府調達の基本的性格は「政府のニーズを満たす調達契約」である。
(1)政府調達、SBIR、ATPの費用負担スキーム これら3つのシステムの費用負担は以下のようになっている。
政府調達
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SBIR
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ATP
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負担対象費用 | 「直接費用」+「間接費用」=総費用 | 「直接費用」+「間接費用」=総費用 | 「直接費用」 |
負担制限 | 基本的に無し。 | 制限あり(上限・期間) | 制限あり(負担割合、期間) |
●政府調達:支払対象費用は「直接費用」+「間接費用」の合計。
●SBIR:支援対象費用は「直接費用」+「間接費用」の合計。但し上限金額と負担期間の制限がある。「第1期」では上限$100kを最長6ヶ月に渡り負担。「第2期」においては上限$750kを最長2年間に渡り負担。
●ATP:支援対象費用は原則「直接費用」。但し企業規模・タイプにより費用負担項目・割合の制限が異なる。単一中小規模企業(売上高<$2.9B)の場合、企業が間接費用の全額を負担、政府は直接費用のうち上限$2Mを最長3年間に渡り負担。単一大規模企業(売上高>$2.9B)の場合、企業が総費用の最低60%を負担、政府は直接費用のうち上限$2Mを最長3年間に渡り負担。ジョイントベンチャーの場合、企業は年間総費用の最低50%を負担、政府は上記条件の下で、直接費用を上限無く、最長5年にわたり負担。
(2)契約の種類
政府調達、SBIR、ATPでは以下のような6つの契約形態が可能である。
契約形態
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適する内容
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1.Cost-reimbursement |
研究開発の政府調達に最も適し、通常はこの契約形態を選択。 |
2.Fixed-price incentive (固定価格及出来高払契約) |
費用削減度合や成果に対応するインセンティブを契約上設けることが望ましく、実際上可能である場合。 |
3.Cost-plus-incentive-fee (費用及出来高払契約) |
費用削減度合や成果に対応するインセンティブを契約上設けることが望ましく、実際上可能である場合。 |
4.Short-durationfixed-price (短期固定価格契約) |
契約者の成果を、事前に短い期間ごとに細分化することが可能な場合。 |
5.Fixed-price (固定価格契約) |
研究の目的/定義が事前に明確であり、価格の交渉に際しての費用の推定が高度に確からしい場合。または費用分担契約による研究開発契約に続く契約で、当該研究開発契約が「製造」の必要性をその内容に含んでいる場合。 |
6.Cost sharing (費用分担契約) |
ATPやSBIRで採用される契約形態。1.Cost-reimbursement(費用払戻し契約)の1種である。契約請負者は利益金を受けず、合意によって合法的費用の一定部分のみを払い戻される。 |
(3)費用捕捉のスキーム:GAAP/CAS/FAR
上記のように、3種のシステムは費用負担の構造が互いに異なるものの、費用を捕捉する上で用いられる基準は連邦政府共通の費用原則(Federal cost
principles)、すなわちGAAP(一般に認められた会計原則)に基づくCAS(Cost Accounting
Standards、費用会計基準)である。CASはFAR(連邦調達規則)の一部が1992年にCASB(Cost Accounting
Standards Board)によって改定された部分にあたる。CASはそのほとんどはGAAPと互換性があるものの、より政府の利益を保護する内容となっている。
連邦政府の公会計制度は、CASを通じてGAAPに準拠しているわけだが、GAAP(一般に認められた会計原則)とは、本来は私的経済活動を念頭においた財務会計原則である。1930年代の大恐慌の経験にかんがみ、一般投資家に対して、「真実と公平性」を具備した、企業の財務状況の共通尺度を整備・提供する目的で発達してきたものである。また、GAAPとは、その全てが当初から明示的に条文化されてきたものではなく、「実践されている会計手法を定義づける、過去からの因習、規則、手続等の総称」(Statement
4、Accounting Principles Board 1958-1972)であり、暗黙的に広く一般に受容された合意である。GAAPは財務会計に関する最も広い視野にたった原則であり、CASはその一部であると言えよう。
GAAP : Generally Accepted Accounting Principles (一般に認められた会計原則)
FASB : Financial Accounting Standard Board (財務会計基準審議会)
FAR : Federal Acquisition Regulation (連邦調達規則)
CAS : Cost Accounting Standards (費用会計基準)
4.2.2 費用会計制度の実際
本項では、特に以下の8つのイシューに関し、米国での状況をみていく。
(1)接費用と間接費用の定義、振り分け方法
CAS(費用会計基準)の下では、「総費用」とは
「直接費用」+「間接費用」−「対政府払戻し金」+「資本(資産)コスト」
とされる。
費用の名称
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定義(FAR/CASにおける定義より抜粋)
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直接費用 (Direct cost) |
直接費用とは、ある特定の最終費用目的(例えば特定の政府調達契約)の為にのみ発生したと明確に把握することができる費用である。直接費用とは、単に最終製品の内部に原材料や人件費として含まれる費用項目のみに限定されない。その特定の調達契約の為に発生したと判別できる費用全てを直接費用として計上する。 |
間接費用 (Indirect cost) |
ある特定の単独最終費用目的(例えば特定の単独の調達契約)に直接貢献する費用とは認められないものの、二つ以上の最終費用目的にまたがって、または最終費用目的に至る中間費用目的に貢献する費用として特定できるいかなる費用も間接費用として計上する。間接費用は、ある一定の目的毎に間接費用プールを設定し、その中に積算されていく。通常、製造オーバーヘッド、販売費、管理費(G&A)といったプールを設定する。 |
対政府払戻金 (Credits) |
契約者(請負人)に発生したリベートや各種報奨金・奨励金等の収入は、当該契約の費用減算か政府への直接納付によって同契約に帰属する部分が政府に還元されなければならない。(例:配賦部分の年金積立金に発生した利息、原材料の大量仕入れによるDiscountやリベート等) |
資本(資産)コスト (Cost of Money) |
設備等の資産に投下された資本のコスト。資産価額(償却対象となる定形・非定形資産の残存簿価)に財務省指定の年間利子率(付属資料:Cost of money rate)を乗じた額 |
直接費用/間接費用の振り分け、間接費用の配賦のメソッドに関しては、一元的に明示・限定する規則はない。全ての契約応募者は「Disclosure Statement」を事前(契約前)に提出することが義務付けられている。このステートメントにより、契約請負者は自社の間接・直接費用の配布に関する会計原則・メソドロジーを事前に申告することを求められる。
〔注:ここで重要なのは、このステートメントを提出させる趣旨が、政府の既定のコスト配賦規則に契約請負者を一元的に従属させるということ(政府規則の下での一元的公平性・一貫性)ではなく、各請負者が自社の事業全体において、すなわち自社内で遂行中の他の政府調達契約案件や自社独自業務をも全て通じて、統一した会計規則を適用するように求めている点(各社それぞれの内部統一性を重視する多元的公平性・一貫性)である。契約請負者にとっては、自社の既存の会計原則をそのまま適用できるので無駄が無く、都合が良いといえる一方、政府契約には別の配賦手法を用いて余分に経費を算入する等のごまかしがきかない。この方策は、連邦政府がGAAPを基にしたCASを採用するなど、産業界とのシームレスな会計原則を基盤として共有しているからこそ可能なのであり、大変合理的な方法でもある。〕
Disclosure Statementは、複数の政府契約に共通して用いることができる。すなわち、自社の会計原則が変更されない限り、契約毎にStatementを出す必要はなく、最初に出したStatementが継続して有効となる。
契約内容のProposalを受け、各省庁の担当Contracting Officersは、契約に記載された費用請求、配賦方法が妥当であるかどうかを審査する。その際、まずは「Reasonableness(合理性)」と「Allocability(配賦可能性)」に関して検討され、そこで妥当である場合に、最後にCAS/FARに基づく「Allowability(合法的賦課可能性)」が審査される。
Reasonableness:その費用が、思慮のある経済合理的な人間が競争状況にあるビジネスにおいて 当然請求するであろう内容と金額を越えていない時、その費用は「合理的」である。 |
Allocability:以下の条件のいずれかを満たす場合、その費用は政府契約に「配賦可能」である。
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(2)直接・間接に賦課可能な費目内容
CAS/FARの下でのCost-reimbursement契約(直接費用・間接費用ともに政府負担)において賦課が認められる費用のうち、特にソフトウエア開発で大部分を占める人件費関連の費目内容は次ページの表のようになっている。大変広範囲の費用が算入可能となっている。
<人件費関連賦課可能費目とCAS/FARにおける賦課可能性>
特に「31.205-6 人的サービスに対する報酬」は主に以下のような費用項目を含むとされる。
上記を見れば明らかなように、企業の事業活動遂行の上で必要な費用のほぼ全てが政府研究開発調達契約においても賦課可能となっていることがわかる。
昨今導入がめざましい自社株式取得に関連する報酬については以下のように定められている。
株式付与・ストックオプション CAS9904.415に定める株式ベースの報酬(自社株式の付与やストックオプション)はその費用額が固定金額として測定される限りにおいて*、繰り延べ報酬として契約期間相当部分は賦課可能である。固定金額としての測定とは、株式付与の場合は付与株式数の決定日における市場価値であり、ストックオプションの場合は付与するオプション数とオプション価格が決定した日における[(市場価格−オプション価格)*オプション数]で計算される。測定日においてオプション価格が市場価格を上回っている場合は費用計上できない。 *FAR31.205-6に、企業債券の市場価値の変動に応じて計算される報酬は賦課不可能、とされている。 |
(3)社内設備(Tangible assets)を政府支援研究開発で使用した場合の費用負担
CAS/FARの下で、既存施設利用の費用は二通りの方法で「賦課可能」とされている。一つは「資本(資産)コスト(Cost of money)」として、もう一方は「減価償却費」としてである。
「資本(資産)コスト」(FAR31.205-10)の算出方法は既に記した通りであるが、同規則ではさらに、この資本はその源が自己資本であるか借入金であるかを問わない、としている。
「減価償却費」(FAR31.205-11)とは、説明するまでもなく、有形固定資産の有効寿命期間にわたってその資産価値を消費していくことを費用の発生として捉え、それを一定の利用期間毎に最終費用目的に対して配賦・賦課していくものである。資産の簿価から残存価値を減じた額を有効寿命期間に割り当てていくものである。
減価償却費を賦課する際に、「間接費用」と「直接費用」のどちらとするかについては、ケースバイケースである。CAS9904.409-40(b)の(1)から(3)で以下のように説明されている。
(4)社内の無形資産(Intagible assets)の使用コスト
特許、ソフトウエア、ノウハウといった社内で開発・醸成された無形資産(Intangible assets)は「資産化」が可能であり、それらが政府調達契約で使用された場合、GAAPに基づいて「原則として」配賦・賦課が可能である。
SFAS No. 2, Accounting for Research and Development Costs by FASB しばしばソフトウエア開発は研究開発活動と密接不可分である。本規則は、研究開発に該当するソフトウエア開発/取得コストは適切に研究開発費用として計上されねばならない、と定めている。特に研究開発費用として計上されるべきソフトウエアとしては、以下のように本規則で指摘されている。
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SFAS No. 86, Accounting for the Costs of Computer Software to Be Sold, Leased, or Otherwise Marketed by FASB 本規則は社外へ販売することを目的として開発されたソフトウエアのみをカバーする。本規則の下では、販売対象の製品やプロセスの密接不可分な一部であるソフトウエアの開発/調達費用は、資産化すること、と定められている。(詳細原文は英語版p.18参照) 内部利用目的のソフトウエア開発/調達費用も資産化されるべきである、という声がNational Association of Accountants からあがったが、FASBは「大多数の企業において、内部利用目的のソフトウエア開発は経費として費消されており、FASBはそれが著しく妥当性を欠くとは認識していない」として要望には応じていない。 |
SOP 98-1, Accounting for the Costs of Computer Software Developed or Obtained for Internal Use by AcSEC (AICPA's Accounting Standards Executive Committee) 本規則は、SFASNo.86では対象外とされた「内部使用目的のソフトウエア」の開発/調達費用を資産化し、償却対象とするよう定めている。 ここでいう「内部使用を目的とする」という判断基準は以下の通りである。 |
しかしながら、いわゆる財務会計(CASの手本となったGAAPはこちらの部類。)と税務会計(IRS Code)とでは、「内製されたソフトウエア」の取り扱いが異なっている。すなわち、財務会計系(FASB)ではソフトウエアの開発費用が資産化・減価償却が可能とされているのに対し、税金徴収に関する費用基準であるIRS(歳入庁)
Codeでは償却不可、とされている。例外としては、「Any license, permit, or other right granted by a governmental
unit or agency or instrumentality of such an organization, any covenant (取り決め)
not to compete, and any franchise, trademark, or trade name, even if self-created」があげられ、これらは償却可能である。(US
CODE TITLE 26 - INTERNAL REVENUE CODE, Subtitle A - Income Taxes
CHAPTER 1 - NORMAL TAXES AND SURTAXES, Subchapter B - Computation of Taxable
Income, PART VI - ITEMIZED DEDUCTIONS FOR INDIVIDUALS AND CORPORATIONS, Sec.
197. Amortization of goodwill and certain other intangibles)
上記のIRS Codeによる「内部開発された無形資産(Self-createdIntagibles)」を償却対象外とする規則には批判が集まり、その改正を促す機運が産業界で高まった。それに呼応して、IRSは1997年にコンピュータソフトウエアの資産化、償却を認める規則改正案を公表した。
IRS Proposed Regulations Relating to Amortization of Certain Intellectual
Property, 1997 (This proposed regulations are to implement section 197
of the Omnibus Budget Reconciliation Act ("OBRA") of 1993) 本規則は、コンピュータソフトウエアの償却を、そのソフトが使用され始めたときから36ヶ月間に渡って償却することを認めるものである。同様に、ソフトウエアの内部開発費用が第167条(次頁)でいう「償却可能」な資産を形成することにつながる場合に、納税者が償却を選択する際も本項が適用される。 |
Sec. 167. Depreciation. (f)Treatment of certain property excluded from section 197 |
AT&Tの事例
本事例は必ずしも政府支援案件に関するものではないが、CAS/FARによって、政府調達契約にも社内の会計原則と一貫性を持たせることになっており、この事例がそのままCAS/FAR下でのソフトウエアの取り扱いということになる。AT&Tは、自社開発ソフトウエアの取り扱いとして、前述のSOP98-1とSFAS
No.86を使い分けている。
「AT&TはSOP98-1に準拠し、ソフトウエアの開発に関する直接/間接費用を他の資産と共に資産計上し、3年間を超えない期間で償却している。事前プロジェクト段階での費用やその後のメンテナンスや教育訓練に関しては資産化せず発生の都度費用として費消している。また、AT&Tは初期のOSソフトウエア費用に関してはそれを資産化し、そのOSの関与するハードウエアの有効稼動期間に合わせて償却している。」
「AT&TはSFAS No.86に準拠し、アプリケーションソフトの開発費用を資産化(capitalize)して、資産(Property)、工場、設備に含め、3年間を上限に償却している。この償却の配賦期間は、当該ソフトウエア技術の実現可能性が確定した時点から、顧客にサービスを提供できるようになるまでの間である。」
(Source: AT&T 1998 annual report Financial highlights, Notes on Consolidated
Financial Statements, Summary of Significant Accounting Principles)
(5)人件費基準額のアップデート
CAS/FARの下で、契約者は直接人件費(Direct labor cost)の計算において、標準単価(Labor rate)を使用することができる。この標準単価を算出し、Disclosure
Statementを通じて提案するのは契約者であり、政府ではない。この提案を受け、政府(各省庁)の調達契約担当官(Contracting officers)が、その合理性を評価・判断する。
一般に政府調達契約において、契約者は個々の従業員の実際の賃金ベースで直接人件費を算出することも選択できるが、多くの場合、契約者は「標準単価」を設定、事前に提示する。この標準単価に基づいて、契約者は直接人件費の見積もり、積算、会計報告を行なう。ほとんど全ての大中規模(従業員500名超)の契約企業が
「平均労働賃率(Average labor rate)」 を採用している。この賃率は、その契約企業の各職種の中の労働者のグレード毎に平均賃金を算出して設定されている。会計原則の一貫性を維持するため、1会計年度中の賃率変更は認められない。
当然ながら、賃金相場の急激な変化などで現実に発生する人件費と標準賃率の間に差異が生じる。この差異は、一定のコストプールに積算され、最低1年に1回は精算されなければならない。
(6)外注(Subcontracting)に関する制限
研究開発に対する政府支援という文脈では、外注に対する制限が1)その仕事内容と2)全体の金額に対する割合、3)外注部分が契約者の費用負担分としてカウントされない等、外注への制限やdisincentiveが設定されている。
SBIR: Phase I では、少なくとも3分の2の「研究及び(もしくは)分析的業務(research and/or analytical work)」が主たる契約者によって遂行されなければならない。Phase II では、少なくとも2分の1以上の「研究及び(もしくは)分析的努力」主たる契約者によって遂行されなければならない。 |
ATP Proposal Preparation Kit: EXHIBIT 6. FORM NIST-1262 Subcontracts 契約希望者はプロジェクトへの応募に際し、外注先を明示しなくてはならない。しかしながら、正当な理由なく、ATP資金の大幅に外注されるようなプロジェクト提案は、採用するか否かの評価が低くなる。その理由は、主契約者のプロジェクトへのコミットメント(真剣に取り組み、資源を投入する姿勢)に懸念が生じるからである。また、外注先に支払う金額は、コスト分担契約における契約者側のコスト分担部分とは見なされない。 |
FAR35.007 - 募集(Solicitations) プロジェクトの募集にあたっては、「scientific or technical work」のいかなる外注計画についても、契約応募者が応募時に必ず明示するよう、要求しなければならない。 |
FAR35.009 - 研究開発活動の外注(Subcontracting Research and Development Effort.)
そもそも、研究開発の契約者の選考にあたっては、最高の科学的技術的能力を備えた契約者候補のプール(「Source」という)を母体としているわけであるから、それら契約応募者は調達契約担当官の事前の認可(Approval)なく技術的科学的業務を外注することはできない。
費用払戻し契約の交渉においては、調達契約担当官は、研究開発のいかなる部分の外注に関して完全な情報を得なければならない。また、固定価格契約の場合は、担当官はこれらの情報を十分吟味しなければならず、場合によっては政府がその外注によって不利益を蒙らない旨の合意文書を作成することができる。研究開発に限らず、外注全般に関しても同様の事前認可の取り決めがある(FAR52.244-2)。 |
一般に、連邦政府は契約者による研究開発活動の外注を好ましいことだとは考えていないようである。本来その契約応募者が固有に持つ科学的技術的能力の高さによって契約先・調達先を選定するというのが政府支援研究開発、政府調達研究開発の本来の意義だからである。
また、外国人、外国企業への外注に関しても制限がある。特に明白に外国企業への外注を実質上禁じているのはATPである。
ATP Proposal Preparation Kit:EXHIBIT 6. FORM NIST-1262
Subcontracts ATPの目的は米国経済の成長を創り出すことにある。ATPから支援を得た者は、米国に存する米国の外注業者を使用し、その外注による便益が米国内で与えられることが期待されている。従って、外国の外注先を含み、それを完全に正当化する事由を述べていない提案は、経済的便益が米国に帰属せねばならないという判断基準に基づくATP選考において、低い評価を受ける。 |
(7)契約期間前に発生した費用の負担方法
FAR31.205-32により、契約期間開始前に発生した費用は、それがその契約を期日までに完了する為に必要と認められる場合、賦課することができる。
FAR 31.205-32 -- Precontract Costs. 契約前費用とは、契約前の交渉に関する費用や、契約が取れることを見越して、契約の終了期限に間にあわせるために必要とされる業務を契約開始日以前に行なったことに関する費用である。このような費用は、それら費用が契約後であっても同様に発生したであろうと判断される限りにおいて賦課可能である。 |
(8)会計手法の変更(例:費目間振替え等)に関する条件・制度
契約者は、基本的に承認されたDisclosure Statementで申請した会計原則を守る義務がある。調達契約担当官に無断で会計原則を変更/実施した場合、罰則がある。この罰則は、その会計原則変更によって政府がより大きな費用負担を強いられていたことが判明した場合に適用される。
罰則(Penalties)
|
CAS/FARと契約者の実際の会計原則の運用に食い違いが出てくるのは以下の3つの場合である。
1)契約締結の直前もしくは時を同じくして政府の調達規則が新しくなったり、変更されたりした場合。
2)契約者の会計原則の運用がそもそも最初からCAS/FARに反している場合。
3)契約者が自発的に会計原則の実際の運用に変更を加えた場合。
上記のうち、3)のケースでは、契約者による会計原則変更によって生じる政府への費用賦課額の変化が著しく小さい場合、契約者は合法的に事前に申告した会計原則を自発的に変更することができ、罰則も適用されない。
FAR 30.602-3 - 自発的変更(Voluntary Changes)
|
このように、契約者による会計原則変更が条件付で認められるケースがある一方で、各省庁の契約担当官が第3章に述べるGPRA(政府業績結果法)の下で、「適用除外」を認められ、FARから逸脱した費用会計を行なうことが可能である。
FAR Subpart 1.4 - FARからの逸脱 (Deviations From the FAR) 1.402 - 基本方針(Policy) 法律、大統領令、規則によって禁じられていない限り、各省庁のニーズを満たすために必要な場合には、FAR(連邦調達規則)からの逸脱が認められる(granted)場合がある。新たな調達技術や方法を開発したり試したりすることが、単に既存のFARに抵触するというだけで妨げられることは避けなければならない。 |
4.2.4 プロジェクトの成果物に対する条件
本項は、1999年3月の当研究所の資料"米国の政府支援研究開発における知的財産権の取り扱いの変遷の歴史とその背景"において詳細が報告されているため、要点をごく簡単に記述するにとどめる。
各省庁に姿勢のばらつきはあるものの、連邦政府レベルの公式見解は、「政府契約の下で開発したソフトウエアに対する権利は民間契約者が保持し、政府はその後の使用に対してはロイヤリティーベースの使用権を確保する」、というものである。
Executive Order No. 12591, "Facilitating Access to Science and Technology", April 10, 1987 "Each agency head shall … cooperate, under policy guidance provided by the Office of Federal Procurement Policy, with the heads of the other affected departments and agencies, in the development of a uniform policy permitting federal contractors to retain rights in software, engineering drawings and other technical data generated by federal grants and contracts, in exchange for royalty fee use by or on behalf of the government." |
ソフトウエアのソースコードに関しても、契約者がその後の商業化を求めている場合は、政府への納入を求めないよう考慮する旨がFARに明記されている。
FAR 27.406 -- Acquisition of Data. (b) Additional data requirements (3) Agencies not having an established program for dissemination of computer software shall give consideration to not ordering additional computer software under the clause at 52.227-16, Additional Data Requirements, for the sole purpose of disseminating or marketing of the software to the public especially if this will provide the contractor additional incentive to make improvements to the software at its own expense and disseminate or market it. This should not preclude an agency from including a summary description of computer software available from a contractor in any data dissemination programs which it operates, with a statement as to how the potential user can obtain it through the contractor, licensee, or assignee. In cases where the contracting officer orders software for internal purposes, consideration shall be given, consistent with the Government's needs, to not ordering particular source codes, algorithms, processes, formulae or flow charts of the software if the contractor shows that this aids its efforts to disseminate or market the software. |
(1)その使命
1993年政府業績評価法(GPRA)は、クリントン政権(ゴア副大統領がリード役)の行政改革推進母体、National Performance Review(国家業績評価)タスクフォースの核となる法制である。(NPRは現在、「上意下達」ではなく「省庁との対等の協力関係」を印象付けるような表現であるNational
Partnership for Reinventing Governmentと名を変えている。中味は同じである。)GPRAの意義はNPR全体の文脈の中で評価されねばならない。
公式的には、NPR/GPRAの使命は「21世紀に向けて、政府をより上手に、より安く、米国民の望む仕事をやり遂げること」と表明されている。
実質的にNPRの背後にある真の目的とは、
1)各省庁が自己の「業績」や「結果」に基づく予算立案と執行を行なう環境を整備すること。
2)「顧客(国民と産業界)の満足」を最重要の優先事項、業績/結果の評価尺度とすること。
3)政府のサービスの質を低下させずに経費/予算を削減し、よって均衡財政を実現すること。
また、これらの目的を達成する方策として、
1)産業界のベストプラクティスを積極的に公会計や調達制度に取り入れ、市場原理を働かせること。
2)「顧客」や「市場」との接点を持つ前線の官吏へ「権限」と「説明責任」の双方を委譲すること。
3)業務効率を改善すると共に効果的サービスを提供していくため、情報技術を積極的に活用すること。
(2)業績に基づく予算編成:「Performance Budgeting」
「Performance Budgeting」とは、ミッションに導かれた、結果重視の予算編成を意味し、まさにNPRの使命を体現するコンセプトである。クリントン大統領は政府の予算に対する責任説明の尺度・体制(Accountability System)を、これまでの「プロセス、手続き、誰がいくらもらうのか」から「予算をどれだけ使うと何が達成でき、実際にどこまで達成されたのか(Performance & Result)」へ根本的にシフトさせることの重要性を強調した(ゴア副大統領による方針宣言文書は下記)。
Performance Budgeting実現へ向けた3つの方策
|
(3)NPRの時代背景
NPRが立ち上がった1993年は、その前年に連邦政府予算が赤字のピーク($300B超)に達し、累積財政赤字が$5,000Bに到達しようか、という状況であった。1993年には、連邦予算総額の14%が累積赤字の利息支払であった。歳出削減のプレッシャーは日に日に増すばかりであった。このような状況の下で、「政府サービスの質の低下を招かずに(願わくば向上させつつ)コストを削減すること」が大命題として浮上してきたのである。
(4)NPRのフレームワーク及びマインドセット
連邦政府にとって「顧客」とは、政府から直接に何らかのサービスを受ける国民及び企業である。
(5)NPRの先駆者達
クリントン政権のNPR以前にも、米国には「業績重視の予算を推進するプラン」が4つも存在した。しかし、今回のNPRはその中でも最も長期に継続しており、達成度も最も高いと考えられる。
これら先達とNPRの違いは、予算立案、予算決議、業績をより明確にリンクさせ、現実に実施できる具体的メカニズム(後述)を作り上げたことにある、といわれている。
|
(6)NPRの経緯
現在に至るまで、NPRは数々の法律、報告書、イベントを生み出してきている。
2000年3月末には、1993年のNPR立ち上げ以来、最初の年次業績報告書(FY1999)が提出期限を迎える。その報告書がどのように予算決定プロセスに活用されていくのか、その後の展開に要注目である。
<NPR年表 1993-2000> (斜体字は報告書名)
4.3.2 全体構造
(1)NPR・Performance Budgetingの実行メカニズム
NPRは、以下のように計画、実施、業績フィードバックの仕組みを作り上げた。
(2)計画(Planning)
1993年政府業績結果法は、各省庁が「戦略計画(Strategic Plan)」と「年間業績計画(Performance Plan)」の二つを提出することを義務付けている。
戦略計画 (Strategic Plan) 行政管理予算庁(OMB、実質的に大統領)に5年ごとに提出、3年ごとに見直しが義務付けられる。 本計画は以下の事項を明記していなければならない。
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年間業績計画 (Performance Plan) 行政管理予算庁(OMB)と議会に対し、予算案提出(1月か2月)に合わせ毎年提出が義務付けられる。 本計画は以下の事項を明記していなければならない。
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(3)実施(Implementation)
(a)Reinvention Laboratory(刷新の実験室)
Performance Budgetingを実施するにあたり、その実行部隊としてReinvention Laboratory(刷新の実験室)なるチームが各省庁の前線の職場に設けられた。1998年現在でその数は325を越えたとされる。これらの「実験室」は、民間企業のQCサークルにも似たチーム指向のボトムアップ戦術であるが、QCサークルに無い強力な武器が存在する。それが各省庁規則やFARからの必要に応じた「Waiver(免除)」の権利である。
NPRは、このReinvention Labを「官僚制の波間に浮かぶ革新のための橋頭堡」と呼んでそれへの期待を表明した。このLabは「NPRタスクフォースの先兵として、全く新しい仕事のやり方、情報共有の仕方、失敗と成功の省庁横断的相互学習の方策を積極的に試してみるための組織である。」
しかし、1999年の全省庁レベルでのGPRA展開(FY1999からの年間業績計画提出開始)とともに、このLabの役割も終わっているといえる。1998年末以降、Reinvention
Labのホームページの更新も一切行なわれていない。すなわち、Reinvention Labは、FY1999年の全面展開へ向けての、緻密に計算されたパイロットプロジェクトとして位置付けることができる。背後にはAndersen
Consulting等、優秀なOC(組織変革)エージェント・コンサルティング集団が存在していた。
(b)High Impact Agencies
Reinvention Labよりももう1ランク上のレベルでのNPR実施の仕組みは、1998年に決定されたHigh Impact Agenciesである。ここでは、特に国民(G
to C)と産業界(G to B)に直接関わる度合いが最も高い32の省庁・組織をHigh Impact Agenciesと認知し、特に強力にNPR運動を展開するターゲットとして設定した。
(c)Performance-Based Organizations(PBO: 業績指向組織)の認定
PBOは、1996年に創設されたNPRの連邦政府の予算及び業務遂行をマネージする概念である。議会が、省庁から申請のあった特定の部署をPBOとして認定すると、その部署の長は連邦調達規則や人事規則からの広範な免除を受けることができる(逸脱が裁量で認められるようになる)。その代償として、その部署は厳しい業績評価を受けることになる。しかしながら、議会はこれまでこの制度をあまり重要視しておらず、FY2000以前のPBO申請は無視されつづけていた。ようやく2000年度から少し動きが出てきた。
<FY2000のPBO申請済み政府組織(議会承認待ち)>
(d)Information Technology Management Reform Act of1996 (ITMRA:情報技術管理改革法)
情報技術の調達をより組織的・効果的に行なうことを企図したITMRAの要点は以下のようにまとめられる。
(4)業績評価
GPRAに定められたごとく、各省庁は業務に直結した数値目標の進捗状況を、年度業績報告書を通じてOMBと議会に提出することが義務付けられている。それに加え、以下の顧客満足度指標も用いられている。
(a)各省庁の顧客満足度基準
大統領令12862号(1993年9月)により各省庁は以下のアクションをとらねばならない。
大統領令 12862: Setting Customer Service Standards.
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(b)American Customer Satisfaction Initiative(ACSI)
民間とのシームレスなベンチマーキングをさらに徹底するため、連邦政府はミシガンビジネススクールによって開発された顧客満足度指標を採用、1994年から民間企業と全く同列の基準によって各省庁のサービスに対する顧客満足度を測定し始めた。
(www.acsi.asq.org/results.htmlにて、個別企業/政府組織別の調査結果を閲覧可能。)
<1994-1999産業/セクター別ACSI総合指数>
ACSIの導入と関連して、民間のベストプラクティスの評価も積極的に行なわれている。フェデラルエクスプレス等、個々の企業名を指摘し、その効率と効果の高さを分析、評価し、各省庁の手本とすべく公表している。日本であればさしずめ「A社」「B社」とするところか。
4.3.3 Performance Budgetingとフレキシビリティ
(1)経営管理上のフレキシビリティと「Waiver(免除)」
ここに言う「Waiver」とは、存在する省庁内規則や方針(Policy)から逸脱する権限/裁量を与えられることを意味する。この「Waiver」は、Performance Budgetingの基本方針を具現化する「経営管理上のフレキシビリティー」を実現する上で、重要な政策ツール/手段となっている。大統領は1998年、各省庁の内部規則に関する「Waiver」授与のプロセスを促進/効率化するために以下のようなメモランダムを発表している。Waiver申請と授与がスムースに進行させる実効性の高い内容となっている。
MEMORANDUM FOR THE HEADS OF EXECUTIVE DEPARTMENTS AND AGENCIES THE WHITE
HOUSE, April 21, 1998
但し、本メモランダムは補助金によって運営されるプロジェクトには該当せず、また法律によって必要とされている業務に関しては及ばない。本メモランダムは連邦法によって定められていない各省庁の内部規則についてのみ妥当する。 |
一方、GPRAでは、連邦予算費目を「逸脱」して費目間の柔軟な移行を認める「Waiver」に関して言及している。
1993 GPRA SEC. 5. MANAGERIAL ACCOUNTABILITY AND FLEXIBILITY. Chapter 97 of title 31, United States Code, Sec. 9703. Managerial accountability and flexibility (a) 「FY1999より、GPRAにより提出が定められた年間業績計画書においては、人員配置、報酬、費用負担等の事務手続に関する「Waiver」を提案することが認められる。また、本来は禁止されている予算費目間での資金の流用を、以下の費目コードの範囲で認めるような「Waiver」に関しても同計画書を通じ提案することができる。 予算費目分類20および小分類11, 12, 31, 32である。こうした費目間流用が認められる代わりに、そのプロジェクト/部署では、業績目標を達成することに対する説明責任が要求されることは言うまでもない。」 |
上記のごとく、GPRAで費目間流用が認められる予算分類は以下のものである。
ここでは、予算分類25.5「研究開発契約」もこの費目間流用の対象に含まれていることに注目したい。上記分類コードの範囲内で、他の費目から、また他の費目への資金の流用が可能になる。この予算費目間の流用はFARに「Waiver」の範囲を拡大するものである。次に紹介する国防省の例は、FAR/DFARSに対する「Waiver」が認められたケースである。
NPR Waiver Clearinghouse Information Synopsis: Defense Procurement has granted contracting activities participating as designated National Performance Review Reinvention Laboratories authority to deviate from the FAR and DFARS Description: The FARS and DFARS authority applies only to those deviations necessary to support a reinvention objective. It does not apply to those deviations which require publication in accordance with the requirements of FAR 1.501 (the solicitation of agency and public views, those reserved for the Director, Defense Procurement in accordance with DFARS 201.402 (1) (i), requirements imposed by statute, or requirements that implement the regulations or directives of other agencies. Anticipated Results: Provide authority to deviate from the Federal Acquisition Regulations (FAR or the Defense Federal Acquisition Regulation Supplement (DFARS) Progress and Accomplishments: Waiver approved |
(2)Performance Budgetingの進展の遅れ、問題点
「Waiver」授与のシステムは決して順調に進んできているわけではない。FY1998/1999では、省庁内規則に対する「Waiver」授与のパイロットプログラムが企画されたが、申請された「Waiver」の数がそもそも少ない上に、そのほとんどが却下されるという憂き目を見た結果、当該会計年度の同パイロットプログラムは事実上お流れになってしまった。その結果、OMBへ提出される年間業績計画で「Waiver」の申請を行なった省庁はなんと皆無だった。
Deidre Lee, OMB's acting Deputy Director for Management 「各省庁が言うには、彼等はまだ業績評価の尺度や新しい予算構造の構築が済んでおらず、予算要求と業績を連動させる準備ができていない、ということです。各省庁はまた、業績に関する情報を予算に使うことで議会の注目を浴びてしまい、逆に予算カットの餌食になってしまうのでは、と憂慮しています。」 Paul Posner, GAO's Director of Budget Issues (政府経営、情報、技術に関する下院政府改革小委員会での議会証言) |
上記の談話に見られるように、各省庁レベルでの躊躇、そして予算プロセスが本質的に持っている政治的要素が、Performance Budgetingをそう簡単には実現させない要因として立ちはだかっているようである。 行政管理予算庁(OMB)は、2001年3月、その時点までに連邦政府が得たPerformance Budgetingの経験について、報告書を議会に提出することになっている。
4.3.4 NPR/GPRAの限界、問題点
前項のPerformance Budgetingからも明らかなように、NPR/GPRAの成功の鍵は、いかに行政(予算要求を行なう大統領及び各省庁)と立法府(予算決定権者)が密接にリンクし、業績情報に基づく予算配分を効果的に行なえるか、というところにある。第2次大戦以降4度にわたり試みられた業績主義予算への取り組みは、行政サイドの業績に基づく予算要求と立法府の資源配分プロセスのリンクに失敗し、うまく行かなかった。それに比較し、NPR/GPRAは各省庁の戦略計画策定に際しての両者協議をより明確に義務付け、Performance
Budgetingの実行メカニズムをより詳細に設計している点で成功する確率は高いと考えられる。
しかしながら、前項で明らかになったPerformance Budgetingの問題点(予算プロセスが本質的に持つ政治的要素)は、やはりそのままNPR/GPRAそのものの弱点であると言いかえることができる。より踏み込んで言えば、NPR成功の鍵を握る行政と立法の連携は、異なる原則の下に成り立ち、本来的に拮抗するように設計されている二つの権能の連携なのであり、両者の協力関係は本質的に脆弱であるといわざるを得ない。
すなわち、克服すべき課題とは、行政と立法の予算協議をいかに実質の伴うものとし、時に矛盾し、資源をめぐってあい争う省庁のプログラムの利害をどのように調整していくのか、ということである。
会計検査院(General Accounting Office)は独立した権限を持つ組織であるが、議会への報告書「Performance Budgeting:Past
Initiatives Offer Insights for GPRA Implementation」で、以下のような問題点・背景を指摘している(要約)。
1. 生来的に拮抗・競争関係にある行政と立法の関係 2. 業績評価作業自体が省庁の重荷になるという懸念 3. 予算削減圧力とGPRA推進圧力の相乗効果(負の効果) 4. 省庁による情報操作の可能性(モラルハザード) 5. プロジェクト廃止決定と省庁のGPRAへのサポート |
これら一連の問題は、大統領府、省庁、議会のうちどれか一つ欠けても解決はできない。全ての利害関係者がその解決に参加せねばならないのである。
4.3.5 NPRの達成度・今後
上記のごとく様々な問題を抱えるNPRタスクフォースであるが、過去4度の業績ベースの予算編成への挑戦の教訓を活かした仕組み作りがなされている。このタスクフォースによるPerformance BudgetingはFY1999に本格稼動したばかりであり、これまでの達成度を語るには時期がまだ早い。2000年3月末に議会提出されるAnnual Performance Reportが最初のアウトプットであり、これの内容にまずは注目すべきである。今後も仔細にモニタリングが欠かせないであろう。一方で、クリントン政権は1993以降、莫大な額の歳出削減を達成し、ついに均衡予算を達成した。しかしこれは政府職員の削減などを通じてであり、Performance Budgetingが実った、というものではないことを明記しておく。
本章を通じて、1)連邦政府によるCAS/FAR/GAAPベースの費用会計システム、2)民間契約請負者への手厚い知的所有権保護、そして3)クリントン政権に見られるGPRAによる業績ベースの予算実現による行政改革への真剣な努力を見てきたわけであるが、ここから三者に共通する「米国連邦政府の信念」とでも言うべき根本原則を抽出することができる。
すなわちそれは、
ということである。
さらに、本レポートでカバーした3つのイシューをおしなべて考えてみると、これらに共通する根本的問題へ立ち返ることにならざるを得ない。すなわち、 「政府とは一体誰の利益を最大化するための存在なのか?」という疑問である。それは、
少なくとも本レポートから言えることは、米国政府は個々の米国企業が政府支援によって経済的利益を得ることは、それら企業が市場原理によって選ばれ、それら企業が政府支援に基づく便益を基礎にさらに市場での経済的発展を企図しているかぎり、望ましいことだと考えている、ということである。すなわち、競争を通じて切磋琢磨する意志と能力のある個々の企業に対しては積極的に便益を与え、それがひいては国家経済の発展や国民福祉の増進に長期的に寄与するであろう、という信念である。
Pubic Law 92-41, Renegotiation Act Rates, Secretary of the Treasury
Rates