太平洋シーサイドライン
Pacific Seaside Line

しばらく海際の道々を駆け続ける. Up & Down はあるものの適度なもので, 車の数も少なく, 右は太平洋, 左はなだらかな丘のような草原. 自然僕の平均速度も上がる.
「お, 見つけた」
前方はるか向こうにチャリが見えた.
「トーゲン (仮名) だろう」
というのは, マウンテンバイクに乗ってるみたいだし, 後ろにタオルを干してるみたいだし, 結構急いでこいでるみたいだし, 十分トーゲンであるための要素は揃っていた.
しかし, 他の塾生は何処に行ったのだろう. トーゲンが急いでいる様子からすれば, 彼はパンクかなんかして塾生を先に行かせ, 修理を終えた後追いかけるという図なのではないのだろうか. 別に珍しい状況ではない. 僕はそう思ってトーゲンに接近を試みた.

ところがである. いくら飛ばしてもトーゲンに近づく事はできないのである. 「どーしたことだ. これが現役と OB の違いなのか‥‥」と愕然となってみたりもしたが, この北海道のほぼ平坦な道で, スポルティフがマウンテンバイクに負けるわけにはいかない. もう周りの景色そっちのけで爆走モードにシフトチェンジ.
「やるじゃねぇか, トーゲン」
必死になってペダルをこぐ. 徐々にわずかずつ差が縮まっていく. チャリンコ・チェイスを小一時間ほど繰り返し, その差があと 100m ぐらいになって,
「あれ, トーゲン‥‥じゃない‥‥」

結局僕が死にもの狂いで追いかけた「にせトーゲン」は見知らぬチャリダーだった. 彼に追いついたのは, 彼のチャリのタイヤがパンクして止まったときだった. 僕はゆっくり近づいて
「こんにちわぁ 早いですねぇ」
というと
「いやぁ パンクしちゃいましたよ. まいりました」

結局トーゲンだと思っていたのは実は赤の他人だった. とすると奴等は何処まで行ったのだろう. 僕が霧多布岬を見てまわっている間に行ける距離を考えても, 今の僕の位置より先にいる可能性は非常に少ない.
「やはり, 国道を行ったか‥‥」
どうやら 5km ほど内陸の国道 44 号を進んでいるようである. 午後 3:00 僕もそろそろ寝床を決めなければならない. このまま道々を進んでも町はない. 持っている食料はカロリーメイト程度しかない. 買い出しも必要だ. 根室市まで 40km ぐらいか. 元気のあるうちならともかく, 筑紫恋キャンプ場から始まった今日はもうヘトヘトなので, 根室まで行く気はしなかった.
「初田牛から国道に出て, 厚床でゲリキャンするか」
残り 10km ちょいという距離ならいいだろう. 道々は海から離れるため直角に左に曲がり, 初田牛へと北上する.


Next-spot is 初田牛駅.