JIPDEC AITEC NEWS
News on FGCS Technology and related activities by Research Institute for Advanced Information Technology(AITEC), the successor of ICOT

Decenber 20, 1996
Issue #7

[目次]


[はじめに]

今年も残すところ、あと10日ばかりとなりました。年末に向けて、ラストスパー
トをかけて、皆さんお忙しくしていることと思います。

AITEC 第五世代普及振興部も、「第一回KLICプログラミング・コンテスト」の
審査を無事終え、通常業務に戻り、今年中の仕事を終えようと忙しくしています。
AITEC のもう一つの部である、技術調査部も2つのワーキンググループの活動が本
格化し、更に近々もう1つワーキンググループの立ち上げ準備で、これまた、目ま
ぐるしい毎日を過ごしています。

さて、こんな中で、12月19日(木)「第一回KLICプログラミング・コンテスト
」の審査結果をお知らせするための「サイバー表彰式」を AITECの Home Page上に
作成しました。入賞者の喜びの声や顔写真、審査委員の結構きびしい講評なども
載せさせていただきました。こちらの方も是非ご覧ください。

ところで皆さん、「サイバー」という言葉をご存知ですか?「オンライン」でも
「バーチャル」でもなく、「サイバー」です。

元は何かと辞書を引くと次のように出ています。

「cybernetics  n. 人工頭脳研究、サイバネティクス: 人間の制御機能と
    それに代わるように設計された機械的電気的組織の研究で、統計機械学の
    情報工学への応用を含む.(小学館ランダムハウス英和大辞典編集委員会編、
    「小学館ランダムハウス英和大辞典」1992年1月20日発行、P632 )

しかし、最近は、「サイバーカルチャー(cyberculture)」、「サイバースペース
(cyberspace)」、「サイバーパンク(cyberpunk)」などがあるようです。
    (参考文献: Michael Sullivan-Trainor 著、秋田俊生訳:「ポスト・インター
               ネット 情報スーパーハイウェイはここまで来ている」
               ソフトバンク(株)出版事業部、1995年4月10日発行)

上記の参考文献によるに、サイバースペースは「コンピュータと通信ネットワーク
が作り出すオンラインの世界。ここでは物理的に移動することなくお互いに交流で
きる。」とあります。つまり、皆さんに物理的に移動することなく、いつでも参加
できる表彰式を、コンピュータと通信ネットワークを使って、「サイバー表彰式」
という形で実現しました。ぜひご参加下さい。


それと今回は、クリスマス (^^) も近いですし、皆さんに「KLIC プログラミング
・コンテスト」の審査結果以外にもプレゼントとして、2つの記事を用意しました。
きっと皆さんに喜んで頂けるものと思っています。

それでは、AITEC NEWS 第7号の Headline をお伝えします。
                                                        (高橋 千恵)

【AITEC-NEWS HEADLINE】

1. 「KLIC プログラミング・コンテスト」入賞者決定。 「サイバー表彰式」で発表!!

「第一回KLICプログラミング・コンテスト」は、第五世代コンピュ−タプロ ジェクトで開発された、並列論理型言語KL1の処理系KLICの普及促進を図 るために企画されました。実行/審査委員会のメンバーは、かつてICOTにおい て、KL1の設計や処理系開発、また、そのユーザであった方々です。 そこで決定した課題、部門、実施時期などは、いままで何度か皆さんに AITEC News でお知らせした通りです。そして広く公募を行なった結果、77点の応募を 頂き、逐次環境部門:54点、並列環境部門:15点、自由課題部門: 8点と なりました。複数部門応募した方を差し引くと、応募者(グループ参加を含む)は、 57名となります。 審査に際しては、部門ごとに審査委員の先生が責任者となり、協力者の方々と 一緒に、実行時間やプログラムの構成の美しさの比較、マニュアル等ドキュメン ト類の評価などを含め、正確かつ公平に審査を行ないました。 特に並列処理部門では、評価データの種類の追加や、プログラムの分析なども 行ない、さらに、安定した計測結果が得られるまで計測作業を繰り返すといった 当初予想できなかった長時間にわたる評価作業を実施しました。 このような審査委員の方々の苦労の末に決定された「第一回KLICプログラミ ング・コンテスト」の審査結果をお知らせします。 なお、審査結果は「サイバー」表彰式でもご覧に頂けます!! 皆さんお誘い合わせ (^^) のうえ、 http://www.icot.or.jp にご参加下さい。 (但し、会場までの道が細いところもありますので、込み合う時間帯を避けて ご来場下さい。)

(記事 No.7-1)

2. 技術調査部のワーキンググループが本格的に活動開始!!

AITEC の技術調査部は、先端技術の調査を行ない、通産省が新しい事業を実施 したり、メーカが研究計画をたてる時に有用なデータを提供することを目的と しています。 そのために、世界各地で研究が進められている先端的な情報処理技術の情報収集 や分析のほか、米国の政府支援プロジェクトの動向調査を行ない、わが国の先端 技術開発の仕組みとの比較などを行なっています。 現在、「ペタフロップスマシン技術調査」と「ネットワーク及びAI関連 新技術調査」の2つのワーキンググループが活動しています。これらは、分散・ 並列処理やネットワークが全勢となりつつある現在、新たに生まれつつあり将来 が期待される技術の調査を行なっています。 この2つのワーキンググループの活動について、報告します。

(記事 No.7-2)

3. 海外出張報告 - Frontiers'96に出席して -

AITEC 技術調査部の 2 名が IEEE シンポジウム Frontiers'96 に参加したことを、 前回の AITEC News の HEADLINE で簡単にお知らせしたところ、「もっと詳しい話 しを聞かせて下さい。」というご要望を頂きました。それで今回、技術調査部の高張 邦夫主任研究員に海外出張報告を執筆して貰いました。シンポジウムの内容、参加 者の様子、シンポジウムに関する率直な感想などが書かれてきます。

(記事 No.7-3)


【 「KLIC プログラミング・コンテスト」入賞者決定。 「サイバー表彰式」で発表!!】

「第一回KLICプログラミング・コンテスト」は、第五世代コンピュータプ ロジェクトで研究開発の行なわれた並列論理型言語KL1の汎用機上の処理系 KLICの普及促進を図ることを目的に企画されました。コンテストは、並列 環境部門、逐次環境部門、および自由課題部門の3つの部門からなり、11月 17日の締切までに、3部門合計で57人の方から計77点の応募を頂きまし た。 かつてICOTにおいて、KL1の設計や処理系開発、また、そのユーザであっ た方々からなる審査委員会のメンバーの中から各部門毎の担当委員をお願いし、 その方に中心となっていただいき、審査委員会以外の多くの方々のご協力を得 て、審査を進めました。 審査は単に処理速度だけではなく、マニュアルを始めとするドキュメント類も 評価の対象とし、12月11日の審査委員会で決める事になっていました。 しかし、並列環境部門については、受賞者を決める事は出来ませんでした。 審査委員を納得させるための評価データを得るために、委員会後も多大な作業が 必要となりました。担当の委員により最終的な受賞者の推薦がなされたのは16日の 午後でした。その後、メールにて各委員の承認を得て最終的な入賞者を決定しました。 「第1回KLICプログラミング・コンテスト」の入賞者の所属とお名前は次 の通りです。 【逐次環境部門】 ○ 最優秀賞 北陸先端科学技術大学院大学 味松 康行 殿 ○ 優秀賞 東京大学 工学系研究科情報工学専攻 宇佐 治彦 殿 ○ 佳作 東北大学大学院 情報科学研究科情報基礎科学専攻 寺西 克敏 殿 【並列環境部門】 ○ 最優秀賞 該当者なし ○ 優秀賞 東京大学 工学系研究科情報工学専攻 宇佐 治彦 殿 ○ 佳作 京都大学 工学部情報工学 大野 和彦 殿 東京工業大学 情報理工学研究科 川崎 直丸 殿 【自由課題部門】 ○ 最優秀賞 早稲田大学大学院 理工学研究科情報科学専攻 長 健太 殿 ○ 優秀賞 東京大学 工学系研究科情報工学専攻 荒木 拓也 殿 ○ 佳作 京都大学大学院工学研究科情報工学専攻 津邑 公暁 殿 ○ 技術賞 東京工業大学 名取 伸 殿 以下に、今回のコンテストのまとめとしてお寄せいただきました、実行委員長 兼審査委員長をお願いした、東京理科大学の溝口文雄教授のご挨拶をご紹介さ せていただきます。 ======================================================================== KLICプログラミング・コンテスト実行委員長 東京理科大学理工学部経営工学科教授(委員長) 溝口文雄 第五世代コンピュ−タプロジェクトで開発された並列論理型言語KL1の処理系KL ICの普及促進を図ることを目的に「第一回KLICプログラミングコンテスト」が 企画されると聞き、第五世代プロジェクトで開発されたマシンや言語のユーザでもあ りましたので、実行委員長兼審査委員長をお引受けしました。 KLICの講習会は、ICOT研究所が解散した後も、AITECがその後を継いで 、日本各地の大学などで開催され、多くの人がKLICを用いてKL1言語を学びま した。また、KLIC処理系をダウンロードした方は、1300人を越えていると聞 いています。しかし、日本では、米国に比べ、並列マシンの普及が遅く、実際にKL 1を用いている人がどのくらいいるのか定かではありません。多少、時期尚早の感は ありましたが敢えて実施することとしました。 その後、課題の設定や、並列環境部門、逐次環境部門、自由課題部門の3部門の設定 、実施時期などを決定し、皆さんにご案内を差し上げました。幸い、77点の応募を 頂きました。内訳は、逐次環境部門:54点、並列環境部門:15点、自由課題部門 :8点でした。複数の部門に応募した方もありましたので、それを差し引くと、応募 者 (グループ参加を含む)は、57名となります。並列マシンの普及していない現状 を考えると、まあまあの応募数と考えています。 さて、審査委員会の作業ですが、委員会のメンバーとしては、かつてICOTにおい て、KL1の設計や処理系開発、また、そのユーザであった方々に参加していただき ました。また、与えられた課題に対する応募作品の実行時間の測定やマニュアルの評 価などを正確かつ公平に行なうため、かなりの数の方々に協力いただきました。 各部門の審査状況について、簡単にご報告しておきたいと思います。 「逐次環境部門」については、まず、いくつかの異なるパターンからなる評価データ を用いて、実行時間を計測致しました。それとともに、プログラムの構造、それにマ ニュアルなどドキュメンツ類の品質を合わせて評価し、応募作品の優劣をつけました 。各作品とも、KLICの逐次処理系の上でデバッグし、チューニングもしてあり、 全体的に完成度は高かったと思います。このため、入賞者の決定は、比較的容易に行 なうことができました。 「並列環境部門」は、当初の審査委員会の予想を大幅に越える作業を伴う審査となり ました。応募者の皆さんの手近なところに自由に使える並列マシンと並列KLIC処 理系があり、デバッグやチューニングが容易に行なえる状況であったなら、審査の様 子は大部変わったものとなっていたことでしょう。しかし、実際は、そのような状況 にはなかったことから、ほとんどの応募者は、プログラムを並列化した後、高速化の ためのチューニングが不十分のまま作品を提出することとなりました。 審査委員とその協力者の方々は、それぞれのプログラムを、標準的なパターンからな る評価データを用いて評価するとともに、データ数を大幅に増やした評価データを新 たに追加して、実行時間の評価を行ないました。また、プログラムの動作が不安定な ものについては、プログラムの内容を精読して、原因を分析しつつ評価をすすめまし た。このようなプログラム本体の評価と共に、他の部門と同様、マニュアルや並列化 についての考察を説明したドキュメントの有無や品質を評価し、入賞作品を決定しま した。結果は、最優秀賞は該当作品無し、優秀賞1点、佳作2点とすることと決定し ました。 来年度、同様の企画を行なうとすれば、主催者側で、応募者が利用できる並列環境を 準備し、デバッグやチューニングを行なえるようにする必要があると痛感いたしまし た。並列部門へ応募された方々、ご苦労さまでした。 さて、「自由課題部門」ですが、ここでは、おもしろいプログラムが集まりました。 かなりの大作が多く、なかなか優劣をつけるのが困難でした。自由部門ですから、審 査委員の主観によるところも大で、結局、審査委員および審査協力者の全員(約20 名)の挙手による投票により順位を決定しました。 全体的にみると、応募作品はKL1の特徴をよく理解し、工夫を凝らした作品が多く 、審査委員長としては、満足のいく結果となりました。改めて、応募していただいた 方々に感謝の意を表します。 このようなこともあり、当初、動作しない作品には、何も賞をあげないとの基準を設 けて審査しておりましたが、未完の作品も、それなりに努力の跡が認められることか ら、主催者とも相談のうえ、記念品として、「第五世代コンピュ−タの並列処理19 93年7月号 bit別冊共立出版」を進呈することと致しました。 今後、皆さんの周囲に、並列マシンが導入されましたら、KLIC処理系をインスト ールされ、来年のコンテストの並列環境部門に、是非ご応募いただけるようお願いし たいと思います。同様に、逐次環境部門や自由課題部門への応募もよろしくお願いし ます。 ご応募頂いたみなさん、また、審査にご協力頂いたみなさん、ありがとうございまし た。来年も、同様のコンテストを実施する計画ですのでよろしくお願い致します。 ========================================================================== 応募された方々、審査委員長/実行委員長を始めとする委員の方々など、多く の方々のご協力を得て、第一回のKLICプログラミングコンテストを成功の うちに終了することができました。次回以降、より一層充実したコンテストと するため、今回のコンテスト実施につきまして改善すべき点、ご要望などあり ましたら、是非お寄せください。次回のコンテストで参考にさせて頂きたく存 じます。 来年度も「第二回KLICプログラミング・コンテスト」を開催する予定でお ります。今回同様、皆様お誘い合わせの上、是非ご参加頂けますようお願い致 します。 (金田 喜代史)

【技術調査部のワーキンググループが本格的に活動開始!!】

----------------------------------------------------------- 2.1) ペタフロップスマシン技術調査ワーキンググループ活動状況 ----------------------------------------------------------- このWGの、設置趣旨、活動内容等の枠組みはWebにて公開されていますが、 AITEC NEWS上で、活動状況をお知らせするのはこれが最初になります。 ペタフロップスマシンは、その名の示す通り、現在、製品として市販されて いるスーパコンピュ−タの最高性能である"数テラフロップス(Tera FLOPS)" を3桁以上上回るコンピュ−タを指すものです。その計算性能は、一台で 現在全米にあるすべてのコンピュ−タの計算能力を合わせたものよりも、 大きなものと見積もられています。 その用途も、軍事用以外に、経済予測、核物理や天体物理学、生物学(遺伝子 解析や蛋白質合成)、薬学、機械工学、自動推論、データベース/知識ベース 処理などがあげられており、これらのための応用ソフトウェア構築のための 研究も含まれております。 このような先端的技術の研究開発は、その研究途上においても、有用な派生的 技術を生み出すことが多く、特にソフトウェアに関しては、並列処理に関する 有効な新アルゴリズムなど多くの新技術が生み出されると思われます。 我々は、WGを作り、山口主査(電総研)のもと11人の委員の方々の叡知を集め、 ハイエンド・コンピューティング研究の極限を目指した米国のペタフロップス マシンの研究開発動向の調査・分析を行うこととしました。 WG会議は、月に1回、全5回開催を予定しており、通常、東京芝にあるAITECの 4F会議室にて開催しています。会議は、午後6時からの開催となっていますが、 出席される委員の方々は、昼間の仕事の疲れも見せず白熱した議論を行ってい ます。 第一回会議は10月16日(水)に開催されました。最初の会議ということもあり、 内田所長、山口主査挨拶に続き WGメンバ自己紹介等が行なわれました。 討議内容ですが、まず、AITEC幹事がWebで調べた米国におけるペタフロップス・ マシンの研究状況、および関連資料について紹介し、それをもとにフリーディ スカッションが行なわれました。 「超並列機の信頼性」、「汎用並列マシン開発の困難さ」、「ソフトウェアと ハードウェアのイニシアチブの問題」、「アプリケーションの必然性」等、 アーキテクチャ、ソフトウェア、アプリケーションの各分野にわたり、意見が 述べられ、いくつかの重要な問題点が抽出されました。 第二回会議は11月14日(木)に開催されました。AITEC幹事によるペタフロップス マシンを主題とする国際会議「Frontiers '96」への出張報告の後、天野委員に よる「プロセッサ間結合網についての解説と問題提起」がなされました。 1,000台から10,000台程度のスケ-ラブルな汎用マシンは、分散共有記憶(DSM)を 持っているCC-NUMA(一貫性キャッシュを持つ非定型的記憶アクセス)モデルを 使うことで実現でき、このときのネットワークはDSMを管理できるものであれば よいといった指摘がなされました。 ペタフロップスに関しては、用途を限れば、目標性能を達成するマシンの実現は 可能だが、汎用を目指したペタフロップスマシンの結合網の設計は、現在の我々 の持つ知識だけでは、実現は難しいという意見が大勢を占めました。しかし、 15年先を目指した研究ですから、過去15年の夢のような技術進歩を考えるとその 実現もあながち夢物語りではないように思われます。 また、一つ手前のテラ・フロップスマシンの開発が終りかけると直ちに次の目標 を掲げて議論を始める米国の底力には、いつもながら脅威を感じざるを得ません。 次回以降、ソフトウエア、アプリケーション、半導体デバイス等の分野を特定し、 議論を深めていく予定です。 (河西 和美) ------------------------------------------------------------------- 2.2) ネットワーク及びAI関連新技術調査ワーキンググループの活動状況 ------------------------------------------------------------------- インターネットが話題になっています。ちょっと大きめの本屋さんへ行けば、インタ ーネットと名のつく本がズラッと並んでいたりします。テレビでもビールのコマーシ ャルでインターネットが話題になるくらいメジャーになってきました。それにイント ラネットなどというものも聞こえてきたり、モーバイルコンピュ−ティングなどなど ネットワークとコンピュータを囲む世界もいろいろと賑やかになってきています。 この数年の間にパーソナルコンピュータやインターネットが急速に普及し、それらを 使ったいろいろなサービスが語られはじめています。このような状況は、何か新しい ものが生まれる前の混沌であり、来たるべき新しい世紀の初めには世の中が大きく変 わっていく予感がします。 でも、今のコンピュータやインターネットは宣伝されているほど便利で、使いやすく て、役に立つものでしょうか? 実状は、難しい言葉の並んだマニュアルを片手に機器を使うのに四苦八苦し、やっと 使えるようになったと思ったら、さんざん待たされた挙句につまらない絵が出てきた などというものではないでしょうか(う〜ん、なかなか辛口)。 役に立つ情報環境、そして、使う人が"苦"を感じないような使い易さを実現しようと すると、従来の情報処理の理論や技術ではカバーしきれない問題が生じているのです。 この技術調査ワーキンググループでは、そのような問題意識をもって、インターネッ トに代表されるネットワークに関連する新技術、それから人間とコンピュータとのイ ンタフェースに関わるAI技術を中心に、将来の情報産業の土台を生み出すと思われる 基礎技術分野や、重要と思われる研究テーマについて検討します。また、その研究を 効率的に進めるために必要なインフラの整備やそのような研究開発投資の将来におけ る社会への波及効果について調査しようとしています。主査には、「インターネット 活用術」の著者でもあるNTT基礎研究所の奥乃博氏、メンバーにはこのワーキンググ ループで取り上げる各技術分野、応用分野の専門家10人に集まっていただきました。 調査対象には以下のような分野を取り上げることにしています。 a) モーバイル・コンピューティング等の新しいコンピュ−タ技術と利用 b) CSCW(協同作業支援)などの新しい利用形態 c) ネットワーク上の処理を含むデータベース技術 d) マルチ・モーダル・インタフェース技術や関連AI技術 e) 社会サービスおよびそれを構成するに必要な情報処理技術 ミーティングはここAITECで月1回、全5回を予定しています。 そして、第1回ミーティングが、11月20日(水)の午後6時から開催されました。メ ンバーの方々は自分の仕事を片付けてから集まった訳で、皆さんの並々ならぬ熱意を 感じます。第1回ということもあって、はじめに当研究所の内田所長の挨拶とワーキ ンググループのメンバーの自己紹介が行なわれました。続いて、電子技術総合研究所 の速水委員からマルチモーダル対話システムの動向についての講演とデモがありまし た。コンピュータグラフィクスで表示されるこびとが人間と話をしたり、法廷論争を 行なったりする興味深い内容でした。そのあと、話は研究評価のことになり、白熱し た議論が行なわれました。 次回以降も、メンバーから提供される最先端の話をもとに議論をかさねていく予定で す。 (武田 浩一)

【海外出張報告 - Frontiers'96に出席して -】

ペタフロップス・マシン技術調査の一環として、去る10月27日から10月31日までの 5日間、米国アナポリスで開催されたIEEE主催のシンポジウムFrontiers'96 (Symposium on The Frontiers of Massively Parallel Computation) に出席しました。 アナポリスはメリーランド州の州都であり,米国の首都ワシントンD.C.から車で東 に40分ほど行った所に位置します。ここには海軍士官学校や軍港があり、町を散策 すると水兵の姿をみることができます。町そのものはこじんまりとしていますが、そ の昔短期間、合衆国の首都だったこともあり、歴史を感じさせる町並みです。ヨット ハーバーや土産物を売っている店もあり、紅葉のシーズンと重なってリゾート地とい った雰囲気でした。 会場となったのは、町の中央に近いローズ・アナポリス・ホテル。古都にふさわし く、落ち着いた感じのホテルです。 Frontiers'96の参加者は、130名程度。日本からは7名が参加していました。い ろいろな国の人が参加していましたが、参加者のリストから判断すると、米国に住ん でいる人が多いようです。 研究発表の目玉は、NSF (国立科学財団) のファンドによる研究で、"Petaflops Computing / Point Design Studies" というセッションです。このセッションでの発 表は8件あり、その多くは2007年までに100テラフロップス・マシンを実現するための 研究報告でした。ペタフロップスを2014年までに実現する以前に、その1/10の性能の 100テラフロップスを目指そうというものです。まだ、基礎研究の段階であり、本当 に2007年に100テラフロップスのマシンが出てくるか分かりませんが、米国のことで あり可能性がないとはいえません。 パネルセッションは全部で4回でしたが、アプリケーションの人が特に元気であり、 基本ソフトの人は元気がないように感じました。ペタフロップス・マシンは、基本 ソフトにイノベーションが要求されており、その解が見いだせないために元気がない のかもしれません。 一方、デバイス関連の発表では、超電導素子が思ったより大きく取り上げられてい ました。CMOSでペタフロップスを実現する場合、プロセッサ数が100万台のオーダー となるため、100GHzを越えるクロックで動作する超電導素子に期待がかかるのは、無 理もありません。現時点でコンピュータへの本格採用は無理でも、DAコンバータなど 用途を特化した超電導素子の製品が開発されており、なかなかがんばっていると思わ せる発表がありました。 Frontiers'96に出席して感じたことは、今は未だペタフロップス・マシン実現に向 けて研究のベクトルがあっていないこと。しかし、米国のことだから誰かがブレーク スルーを見つけると、たちまちベクトルがあってペタフロップス・マシン実現の可能 性が出てくるのでしょう。 昼食の時、古い超並列マシンをNASAゴダード・スペースフライト・センターからス ミソニアン協会に寄贈するための式典がありました。この中で並列マシンの歴史の話 があり、日本の第五世代コンピュータが並列マシンの有効性を示してくれたと紹介さ れました。米国より先に日本で超並列マシンが生まれなかったことを残念に思います。 ある講演の最後の、「日本との協同研究についてどう考えますか」という質問が印 象的でした。どんな回答をするか興味を持って聞いていましたが、「今皆さんがここ にいることが、ペタフロップス・マシンの研究開発にとって意義があるのです」とい う、抽象的な答でした。 スーパーコンピュータのハードウエアについては、今のところ日本は米国に遅れを とっていないように見えます。しかし、ソフトウェアへの米政府ファンドや商用プロ セッサのスーパーコンピュータへの採用など米国優位となる可能性が高く、今後も米 国の動向を把握する必要があることを強く感じた出張でした。 (高張 邦夫)

[編集後記]

以上、AITEC NEWS 第 7 号、いかかだったでしょうか? AITEC は、この AITEC NEWS をお読みになってもお分かりのように、KLIC プログラ ミング・コンテストを始めとする第五世代技術の普及・育成活動、将来の情報技術 がどのような方向に向かうかの調査研究のための、複数のワーキンググループなど、 さまざまな活動を行なっています。 AITEC は、去年の10月1日に発足したばかりの小さな研究所ですが、皆さんのお 役に立つよう、情報公開に努め、小粒でもキリリと小粋な :) 研究所を目指したい と考えています。 そのためにも、皆さんの「こうした方がいい」、「こんなことをしてみたら?」など のご意見をお待ちしています。お気軽に aitec-news@icot.or.jp にご意見をお寄せ下さい。 また、今回の AITEC News で初めて AITEC News を読み、そのバックナンバーや、 AITEC の元となった ICOT/第五世代技術などに関して知りたい方は、是非 http://www.icot.or.jp/AITEC/PUBLICATIONS/AITEC-News/aitec-news-J.html http://www.icot.or.jp/AITEC/FGCS/what-is-icot-J.html などをご覧下さい。 さて、KLIC プログラミング・コンテストに振り回されていたら、師走です!! 短かったような今年も振り返ってみたら、いろいろありました。AITEC News で、 皆さんとお目にかかるようになったのも今年です。来年も引続き、AITEC News を 発行していきますので、よろしくお願い致します。 では、皆さんお忙しい師走とは思いますが、風邪などひかれませんよう。 そして、良い年をお迎え下さい。新しい年に、またお会いしましょう!! (^_^)/~ ☆*************************************☆ *                                     * * AITEC NEWS Issue #7                 * * 編集・配布 AITEC NEWS編集グループ              * *   佐藤真紀子  高橋千恵  相場 亮  佐藤 博  内田俊一     * *                                     * * 発行 1996年12月20日                      * *    財団法人 日本情報処理開発協会                  * *    先端情報技術研究所                        * *    東京都港区芝2丁目3番3号  芝東京海上ビル2F         * *    電話:03−3456−3191 FAX:03−3455−4877 * *    e−mail:aitec−news@icot.or.jp     * *                                     * ☆*************************************☆

www-admin@icot.or.jp