JIPDEC AITEC NEWS
News on FGCS Technology and related activities by Research Institute for Advanced Information Technology(AITEC), the successor of ICOT

June 23, 1996
Issue #3

[目次]


[はじめに]

梅雨入り宣言とともに雨模様の蒸し暑い日が続いています。

その日本を先日まで熱くさせていたのが、2002年ワールドカップの日韓共同
開催問題ではないでしょうか。単独開催が実現しなかったので、日韓両国とも
一部の熱狂的なファンはがっかりしたようです。

振り返ってみると、これまで、日本と韓国は「近くて遠い国」と呼ばれ、
自動車や半導体など産業上の協力は行なわれてきましたが、国民的レベルの
共同プロジェクトはなかったように思われます。つまり、ワールドカップの
共同開催が私達の知る限り、初めての国民的レベルの共同プロジェクトとなる
わけです。開会式や決勝戦をどちらの国でやるかなど、解決すべき問題はたく
さんありますが、開催までの 6 年間に国民相互の信頼関係と友情を育むことで
問題を乗り越え、世界のサッカーファンに喜んでもらえるワールドカップを
実現して欲しいと思います。

わが AITECの活動の中心である、IFSの普及と拡大再生産のプロジェクトは、平成
7年度には、ICOT-OBが中心となって実施されました。しかし、今年度からは新規
参加者を募り、さらに来年度は、海外の研究者にも IFSの拡大再生産に参加しても
らい、国際的な枠組へと拡大したいと思っています。そのためには、言語の問題、
知的所有権などの調整、資金面など、ワールドカップより規模は小さいものの、
いろいろ問題が生じることでしょう。これらを解決するにも、やはり、当事者間の
信頼関係と友情を少しずつ育んでいくことが重要です。

さて、創刊号、第2号と AITEC NEWS では、AITEC の組織とそのメンバーや基本的
な活動を紹介してきました。 これからは、皆さんが頻繁に使われるIFSの重要な
プログラムの改良や拡張などの状況をお伝えしようと思います。その最初として、
今号ではKLIC タスクグループの活動状況などについてお伝えします。

それでは、AITEC NEWS 第3号の Headline から、御覧ください。


【AITEC-NEWS HEADLINE】

1. KLIC タスクグループは今. . . .

KLIC タスクグループの活動について、主査をお願いしている東京大学の近山先生 に近況をご報告いただきました。 タスクグループの最近の主な活動は、(1)バグ対応、(2)機能拡張、および(3)問い 合わせへの回答、の3つです。メンバーは、ICOT 時代に KLIC の開発に携わった 方たちが中心となっています。現在はそれぞれ異なった職場で働いており、本来の 仕事に忙しいのですが、自ら開発したソフトウェアをできるだけ多くの人たちに使 っていただこうと、時間を都合して一所懸命、KLIC の改良や拡張などに取り組んで 下さっています。 タスクグループのメンバーの皆さんにとって、KLIC は「手塩にかけて育て上げた 大切な子ども」なのですね。我が子がますます立派になって社会に巣立っていく 様子を見守る近山先生の親心が伝わってきます。

(記事 No.3-1)

2. 平成8年度委託研究の公募締切迫る !!

先端情報技術研究所では現在、先進的な知的ソフトウェアのための技術をより一層 普及させるため、ソフトウェアをつくっていただくような委託研究を行なっています。 この委託研究は昨年より開始したものですが、2年目の今年は対象とするソフトウ ェアの範囲も広げ、広く皆様から研究提案を募集しています。 平成8年度の委託研究募集の締切は6月21日です。お送りいただいた研究提案の 中から、今年度は10件程度採用させて頂きます。皆様からの多数のご応募をお待 ちしています。 なお、昨年度の委託研究につきましては、
http://www.icot.or.jp/ARCHIVE/Museum/FUNDING/funding-95-top-J.html
をご覧ください。 また、募集要項や研究提案用紙は先日別メールにてお送りさせていただいておりま すが、もし必要でしたら、ご連絡ください。至急電子メールにて送らせていただき ます。また、
http://www.icot.or.jp/ARCHIVE/Museum/FUNDING/CFP-96-J.html
でもご覧いただけます。 (該当記事なし)

3. 「KLIC プログラミング・コンテスト」実施 決定 !!

今年度初めての試みとして、先端情報技術研究所では KL1 を使ったプログラム を皆さんから募集し、「KLIC プログラミング・コンテスト」を実施することに 致しました。 募集するプログラムの部門や応募資格など詳細は記事 No.3-2 を御覧下さい。 優秀な作品には、豪華な副賞を計画していますので、皆さん、奮ってご応募下さい。

(記事 No.3-2)

4. 第五世代コンピュータ・プロジェクトの技術論文(TR/TM) Web 上にて公開 !!

後継プロジェクトを含め、13年にわたる第五世代コンピュータ・プロジェクト において蓄積されたTechnical Report(TR)、Technical Memorandum(TM)は総計 2000余りになります。それらは4枚組のCD-ROMに集約され、多くの希望者に頒布 してきました。 しかし、CD-ROMの数にも限りがあるため、この度 Web上で公開することに致しました。 今回は、TR/TM の一覧表からの参照機能と、一覧表に含まれる情報(論文番号、 登録日付、表題(日本語/英語)、著者名(日本語/英語)、所属機関)からの 検索機能を提供します。 日本語: http://www.icot.or.jp/ARCHIVE/Museum/TRTM/trtm-J.html 英語: http://www.icot.or.jp/ARCHIVE/Museum/TRTM/trtm-E.html から、参照頂けます。 今後は、TR/TMの分野別検索等、検索方法の充実に努めてゆきたいと思います。 (該当記事なし)

5. AITEC WWW ホームページの更新進む!

AITECの仕事が軌道にのるにつれ、ホームページの更新も着々と進んでいます。 特にホームページの顔とも言うべき「今月の表紙」は、四季おりおりの風景が 描かれ、AITEC ウォッチャーたちの秘かな(?)楽しみとなっているようです。 詳しくは、
http://www.icot.or.jp/AITEC/SEASON/season.html
を御覧下さい。 また、「今月の表紙」を作成している【ちゅ】とはいったい何者なのか? ヒントは前号の THIS ISSUE'S ARTICLES の 1. 先端情報技術研究所のご紹介 の中にあります。「今月の表紙」に関するご意見、ご感想なども www-admin@icot.or.jp までお寄せ下さい。【ちゅ】の一層の励みとなることでしょう!? (該当記事なし)

【KLIC タスクグループの活動】

KLIC タスクグループ 主査 東京大学 工学系研究科 電子工学専門課程 近山 隆 KLIC タスクグループでは、並列論理型言語 KL1 のポータブルな並列処理系で ある KLIC の改良・拡張や保守、ユーザからの問い合わせへの対応などを行な っています。メンバーは ICOT 時代に KLIC の開発に携わっていた人々を主力 に十名弱で、本来の仕事に忙しいかたわら、手塩にかけた可愛いソフトウェア を守り育てています。 タスクグループのメンバーは、それぞれ異なる職場で働いており、日常的には 顔を合わせることはありません。月に一回、ミーティングを行なっているの ですが、なかなか全員は出席できません。さまざまな連絡や、場合によって は討論も、主として電子メイルを通じて行なっています。 タスクグループの最近の活動は以下の三つに大別できます。 (1) バグ対応 KLIC を多くの方にお使いいただいているのはたいへんうれしいことですが、 ユーザの皆さんから御報告いただく数多くのバグへの対応は、やはり容易な 仕事ではありません。 開発者が思いもよらなかったようなプログラムの書き方をされる方もあり、 もう十分枯れていると思っていた部分に潜んでいたバグがちょっとした変更 で顔を出したこともありました。多くの新しい機種に移植されていく過程 で、想像もしなかった振舞いをするオペレーティングシステムに出会ったり もしました。 問題点が KLIC のバグ報告用のメイルアドレス klic-bugs@icot.or.jp に報告されると、タスクグループのメンバー全員に 転送されます。そのときに時間的余裕のあるメンバー、余裕はなくても自 分が担当した部分に問題が生じたメンバーは無理にでも時間を都合して、 できるだけ早くバグの原因を究明し修正する活動を行なっています。 バグの中には、本質的な修正やかなり根本的あるいは大幅な変更が必要にな るものもあります。そのような場合は急いでバグを直そうとすると、逆に 新たなバグを導入する可能性も強く、当面の回避策をお伝えし、修正は後に 腰を据えておこなうこととする場合もあります。 (2) 機能拡張 KLIC は論理型言語の処理系としてひと通りの機能は持ち合わせていますが、 多くのユーザにいろいろな目的でお使いいただいていると、ああいう機能も 欲しい、こういう機能も欲しいというリクエストを数多くいただきます。 こうしたリクエストについては、許される時間の中でできる限りお応えした いと活動しています。 KLIC は商業製品ではありません。第五世代プロジェクトで育て上げた並列 論理型言語とその実装の技術を、できるだけ多くの人々にシステムを使って いただくことを通じて知っていただくのを目的として公開しているのです。 御利用いただく皆さんのニーズを満たすことは究極の目的ではないつもりで 活動しています。ですから (申し訳ないのですが) KLIC のフィロソフィー に合わないような機能のリクエストには、たとえ実現してしまうのが容易で あっても、お応えできないこともあります。また、個別の要求を直接的に 満たすのは簡単でも、もっと大きな枠組から用意しないと、システムの保守 性や拡張性を損なう可能性があるため、簡単な対応がためらわれる場合も あります。そのような場合でも、タスクグループでは「そのような機能が 何のために必要なのか」を問い合わせ、あるいは推測して、KLIC の本来の 考え方を歪めずに、KLIC 流の解決策を与えようと努力しています。 (3) 問い合わせへの回答 バグ報告以外にも、さまざまなお問い合わせをいただきます。動作する機 種について、インストール法について、特定機能の有無、プログラミングの しかたなど、いただく質問は多岐に渡っています。どんなご質問にもでき るだけお答えするように心がけておりますので、御遠慮なくご質問をお寄せ ください。 こうした問い合わせや議論などのために klic-users@icot.or.jp というメ イリングリストを作ってあります。これはタスクグループのメンバーだけ ではなく、登録している KLIC のユーザに配信されますので、他のユーザの 方からお答えいただける場合もあります。新版のリリースや重大なバグな ど、ユーザ全員に知っていただきたい情報なども流しますので、ユーザの皆 さんはぜひこのメイリングリストにお入りください。 登録は klic-requests@icot.or.jp 宛にどうぞ。 お問い合わせをいただく皆さんへのお願いですが、できるだけ詳しい情報をお 送りいただきたいと思います。その方が迅速に正確な対応ができます。バグ の疑いがあるのなら、どのような場合にどのような振舞いをするのか、どのよ うな OS の上にどのような構成でインストールしたのか、本来はどう振舞うべ きだとお考えなのか、お差し支えなければ問題のプログラムのソースコードや 入力データなどの情報をお送りください。機能についてのお問い合わせにつ いては、単に「こういう機能はないか」ではなく、その機能を用いてどのよう なことをしたいのかを、ある程度マクロに教えてください。そうしていただ ければ、他の機能を用いて必要性を満たす方法などを示唆させていただきやす い場合もあります。 パートタイムの仕事ですので、なかなかユーザの皆さんに御満足いただけるよ うなサポートはできないかもしれませんが、できる限りの努力をしていきます ので、皆さん今後とも KLIC を可愛がってやってください。

【「KLIC プログラミング・コンテスト」実施概要】

第1回「KLICプログラミング・コンテスト」のお知らせ 1. コンテストの内容   第五世代プロジェクトで開発された並列論理型言語 KL1 を用いたプログラム を募集します。 募集するプログラムは与えられた課題について「逐次環境」又は「並列環境」 でプログラムを実行する部門と、「自由課題」についてプログラムする合計 3部門があります。 対象は汎用機上の KL1 処理系 KLIC の上で動作するプログラムとします。 2. 応募の資格 どなたでも応募できます。特にKL1を初めて使用するような新規ユーザーの積極 的な応募を期待しています。応募された方には KLIC についてのチュートリアル テキストを差し上げます。    注)同一プログラムでの複数部門への応募はできません。 3. 実施スケジュール 募集開始: 平成8年 7月末 応募〆切: 平成8年10月末 入選作品発表: 平成8年11月末 4. 入 選   応募作品の中から審査委員会の定める選定規準に基づき、最優秀賞、優秀賞、 佳作の各1作品を各部門ごとに選出し、それぞれに副賞を進呈します。 選定規準については応募要項を御覧下さい。 !! すばらしい副賞を計画していますので、ご期待下さい。!!   また、基準に達した応募作品に対しては参加賞を差し上げます。 「逐次環境」「並列環境」部門に応募されたプログラムについては動作確認 の結果、審査委員会の定めた制限時間以内に正しい解を出した作品、「自由 課題」で応募されたプログラムについては審査委員会で別途定めた一定の基 準に達した作品を参加賞の対象とさせていただきます。 5. その他 詳細は「応募要項」をご参照下さい。 応募要項は、7月末頃にできる予定です。AITEC NEWS上、および Web上、http:/www.icot.or.jp/FGCS/KLICON/main-J.html にて 発表致します。

[編集後記]

以上、AITEC NEWS 第3号、いかがでしたか? 今号では、KLIC タスクグループ の活動状況やプログラミング・コンテストのお知らせなど、KLIC の話題を中心 にお届けしました。プログラミング・コンテストは、どれぐらいの応募があるの か、編集グループ一同、今からわくわくしています。 また、AITEC NEWS は一方的に AITEC の活動状況をお知らせするだけでなく、皆 さんにとって興味のある情報をお届けしたいと思っています。もっと内容を充実 させていくために「こんなことを取り上げて欲しい!」、「こういうわからない ことがあるんだけど、ちょっと説明してほしい!」というようなご意見、ご要望 がありましたら、是非、 aitec-news@icot.or.jp までメールをお寄せ下さい。また、転勤、就職などにより送付先が変更になった 方は、お手数ですが上記アドレスまでお知らせ下さい。 AITEC のホームページも徐々に整備しつつあります。なかなかこちらに遊びに いらっしゃれない方はどうぞ、 http://www.icot.or.jp を御覧下さい。 ☆*************************************☆ *                                     * * AITEC NEWS Issue #3                 * * 編集・配布 AITEC NEWS編集グループ              * *   佐藤真紀子  高橋千恵  相場 亮  佐藤 博  内田俊一     * *                                     * * 発行 1996年 6月20日                      * *    財団法人 日本情報処理開発協会                  * *    先端情報技術研究所                        * *    東京都港区芝2丁目3番3号  芝東京海上ビル2F         * *    電話:03−3456−3191 FAX:03−3455−4877 * *    e−mail:aitec−news@icot.or.jp     * *                                     * ☆*************************************☆

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