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並列記号処理技術による高い実行性能と開発効率

実験的応用システムは並列推論システム上で動作するよう開発した。並列推論 マシンの性能を生かすことによって、逐次処理方式では達成し難い高い実行性 能を得ることができた。また、並列記号処理を前提として設計されたプログラ ム言語と、並列処理のために設計されたソフトウェア開発環境を利用できたた め、非常に高いソフトウェア開発効率を得ることができた。

従来も同程度の困難さを伴う問題を扱う技術はあったが、処理効率やソフトウェ ア開発環境の問題から、机上の検討や小規模の実験のみに終ることが多かった。 これに比べ、第五世代コンピュータ・プロジェクトにおいては、プロジェクト で構築した高性能の並列推論マシンと快適なソフトウェア開発環境を利用でき たため、実用レベルの複雑性と規模を持つ問題を解決することができた。

たとえば並列 LSI-CAD 実験システムの一部である論理シミュレータでは、問 題が必ずしも並列処理に向いていないにも関わらず、256台のプロセッサで166倍 の高い並列処理効果を得ており、絶対速度としてもスーパーコンピュータに匹 敵する高い性能を得ている。この並列性能を得るためには、バーチャルタイム 法という複雑なアルゴリズムを用い、種々のチューニングを施す必要があった が、並列推論システムの提供する諸機能を利用することによって、約3人月と いう、従来の方式による並列プログラミングに比べてひと桁以上少ない工数 での開発が可能だった。また、他の並列アルゴリズムについても同様に少ない 工数で開発できたため、実験的な比較検討も可能になった。