プロジェクト発足当時、知識情報処理技術の急速な発展に寄せる期待は大きく、 比較的短期間に本格的な知識情報処理システムが実用化できるだろうという見 通しに基づいて、機械翻訳システムなどに対して民間でも多大な開発努力が払 われた。これらの研究開発の動向を見ると、現段階の基礎技術に基づいたシス テムでは適用範囲の限定が必須で、汎用的なシステムの実現には知識処理の 基盤技術の一層の成熟が必要であることがわかってきている。
第五世代プロジェクトでは、非常に汎用的な体系である数理論理に基づく知識 表現、管理、利用技術を、並列処理の提供する高い処理能力と組合せることに よって、実用的な知識情報処理システムの共通基盤となし得ることを示した。 これによって、自然科学、社会科学、人文／認知科学等の異なる分野における 知識を、論理を基盤とする知識表現言語を用いて表現し、これらの諸分野で必 要となる知識の質の比較を可能にし、将来の知識情報処理技術の研究開発の方 向の策定に不可欠な座標系を示すことができた。
この成果は知識情報処理の基盤技術を示した点において大きな意義を持つが、 本格的な実用システムの構築に至るまでには解決すべき問題がいまだ数多く残 されている。今後、本プロジェクトが確立した基盤技術に基づいて、一層の研 究開発を進めることが必要である。