(1) 動的に変化する状況における法的推論システムの研究開発
研究代表者:
| 新田 克己 教授
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東京工業大学大学院 総合理工学研究科
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研究テーマ、研究代表者:
- (1)研究テーマ
- 動的に変化する状況における法的推論システムの研究開発
- (2)研究代表者(氏名、所属、役職)
- 新田 克己、東京工業大学大学院 総合理工学研究科 教授
記述項目:
- (1)研究進捗状況
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- 知識表現言語においては前年のプロトタイプ版では含まれていない仕様
をまとめた.知識表現言語の拡張の全容は,状況に含まれる命題の扱い
の区別(event/state/property)および,意味論を整理した項と述語の
型階層の導入である.前年は,その中で event/stateの区別により時間
的状況の違いによる推論を実現した.今年は,propertyを区別するとと
もに,property の影響を受け抽象度の表現力を向上させる型階層を導
入した.propertyとは,命題の解釈を実際に起った事実としてではなく,
命題内の主体がある属性を持つことを明言していると捉えることである.
現在の進捗は,仕様を言語の構文と表示的意味論によりまとめて,単一
化と推論規則により実装を行っている.
- 論証構築・論争支援システムは、SICStus Prolog + Tcl/Tkを用いて、
部分的に動作し始めた.
- (2)現在までの主な成果
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- 知識表現言語においては実装の詰めは不十分ながら,上記の拡張を備え
た言語をProlog上で実装した.言語には,項と述語にそれぞれの型階層
を設けて,NewHELIC-IIで指摘されていた意味論の整理を行った.項には,
従来システムにもある素性構造をサポートし,述語には引数の構成を越
えた階層関係を実現した.それには,項に LOGINに基づいた存在限定s:x
と全称限定s を許して,述語に事象的述語pと属性的述語#pのような表記
と単一化の処理の違いを与えている.この属性的述語は,propertyに対
応している.
- 論証構築・論争支援システムにおいては、 論証構築を支援するための優
先度付非単調推論システムの実装と、論争プロトコルの確立とユーザイ
ンターフェースの部分的な実装が行えた.
- (3)今後の研究概要
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- 知識表現言語においては,状況依存性の拡張強化とソフトウエアとしての
実装の充実を行う.現在,状況依存性は命題とルールにのみ許されている.
しかし,これを階層関係の明言にも許すことにより,知識や信念に依存し
た部分的階層関係を記述できる.また,実装では今年度の開発でレベルダ
ウンした機能の修正と質問(query)における出力の追加を行う予定である.
- 論証構築・論争支援システムにおいては第1版の完成を目指す.
- (4)今年度目標成果ソフトウェアイメージ
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- 法的推論の知識表現言語は,Prolog のようなインタープリタ言語となる.
記述したい法律のルールと事例を論理型言語の形式で記述し,質問に答え
る.従来と違って,この言語は述語の階層関係を簡潔に記述できる.さら
に,述語の引数構成が柔軟であるためプログラム中の述語引数の構成を知
らなくても質問できる.それは,推論で行われる述語引数の削除・補充に
よる.さらに,propertyの区別によりその命題が事実の明言か性質の明言
かをはっきりさせて,プログラムを読む側の曖昧性を解消している.型階
層などと組合わせて,それは言語の表現力を向上させている.
- 法的論証構築・論争支援システムは、与えられた法律問題に対して、 複数
ユーザが対話的に論証を構築していくものである. 専門家の使用にも耐え
るような現実的な仕様を決めたつもりである.
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