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米国における最近のIT重点分野に関する調査

2.3 将来の展望

 今後は、どのような展開が予測されるのか。電子図書館(DL)と電子政府(DG)の研究イニシアチブは、ITの潜在能力を引き出しつつ、ネットワーク関連の技術革新に向けて、新たな道を探り、ひいては社会的な貢献に結び付けるまでの国家的な取り組みの第一歩に過ぎない。PITAC(大統領直属情報技術諮問委員会)は、1999年に発行した報告書の中で、国民1人1人が米国社会に積極的に参加し、情報化時代の恩恵に浴するための基本的な前提条件として、"National Challenge Transformations"(国家規模の課題に伴う変革)に伴う重要課題を10項目提案した。これ以降、発表された電子図書館/電子政府に関する報告書ではいずれも、新しい情報化時代に向けて連邦政府が実施する研究開発関連の投資に関する基本的な指針として、この10項目を基準に挙げている。表2.6に、こうした変革を目標として将来的な発展を導く方向性を決める上に、これまでDLとDGの各プログラムがどのように貢献してきたかをまとめてある。

 

表2.6 電子図書館(DL)/電子政府(DG)がもたらす社会的変革
形態の変化 DLとDG研究の技術的課題(例) DLとDGによる利点(例)
1. コミュニケーション
  • コンピュータと人のインターフェイスの改善
  • グローバルなDLの接続
  • インターネット・ユーザーは、世界中のあらゆる言語でも対話可能
2. 情報の扱い
  • データ・アクセス手段の改善
  • 情報の電子分散に対応する上での方針
  • 各種ネットワーク・メディア(書籍、刊行物、テレビ放送)に対する遍在アクセス
3. 学習
  • スケーラブルなコンピューティング・インフラとデータ・リポジトリ
  • 教材と学習方法の開発用ソフトウェア
  • 世界中の児童生徒が議会図書館、大英博物館、民族学博物館(大阪)にアクセスできる
4. 商取引
  • 電子トランザクションの改善に向けたセキュリティ、プライバシー、信頼性の強化
  • 情報インフラ/物理インフラの統合
  • 消費者は、安心して電子トランザクションを実行できる
  • 消費者がアクセス/共有できるDL/DGインフラ
5. 仕事
  • 仕事とトレーニングを統合するネットワークとインフラの整備
  • グループの相互作用とコラボレーションを支援するソフトウェア
  • 仕事に関連する資料や教材に対するオンライン・アクセス
  • 進歩的な職場とは、電子図書館と同義
6. 健康管理
  • 情報リポジトリのプライバシーの保証
  • ネットワーク化した医療情報/治療システムの開発
  • 患者は、生体臨床医学情報システムにアクセスして正確な自己診断と適切な判断が可能
  • 医療手順を遠隔地で実証可能
7. 物の設計と作成
  • CADソフトウェアの開発
  • 設計/製造に向けた仮想現実テクノロジー
  • すべてのエンジニアリング設計アーカイブ/製造手法に対するe-アクセス
  • 異文化の交流は創造性の鍵
8. 研究
  • コラボレーション・テクノロジーの開発
  • 地球計算グリッドの作成
  • ネットワークを介して時空/国境を越えたデータ/資源の共有が可能
  • あらゆる資料がオンラインで利用可能
9. 環境への対応
  • 気候や環境の研究に向けた計算モデル
  • 環境監視用のネットワーク・データ・システム
  • エネルギー/環境保護のための重要な資源となるDL
  • 政策決定機関への適切な情報提供
10.行政
  • ネットワークを介して機密データを伝達できるような改良されたシステム
  • 電子政府への市民参加を促進する教育/トレーニング・プログラム
  • 行政サービスや情報が、場所、コンピュータ運用能力、身体能力を問わず、すべての市民に提供される
  • 危機管理の強化

出典: PITAC報告書"Information Technology Research: Investing in our Future"(情報技術の研究: 未来への投資)[I4]を基に作成

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