第2章 米国のハイエンドコンピューティング研究開発動向
米国は2001年9月11日の同時多発テロを受けて一変した。この影響は米国のみに留まらず、世界中に大きな影響を与え現在に至っている。
続くアフガニスタンの空爆、アルカイダ政権打倒、暫定政府の成立と激動の世界史が動いている。この動きはハイエンドコンピューティングの研究開発のも影響を与えずにはおかないだろう。
2002年2月ブッシュ大統領がFY2003の予算教書を発表した。テロ対策のため、国防費が5年にわたって増加する見通しが発表されている。研究開発予算全体の傾向としてはバイオテロ対策もありNIHがかなり突出して増加している。
大統領の技術的諮問機関であるPITAC(Presidentユs Information Technology Advisory Committee)に関しては2003年の6月までの継続が決定している。今のところ共同議長およびメンバーの基本的な変更は無く、クリントン政権からNITRD政策は継承されている。
経済面では、米国の景気はテロの影響を深刻に被っており、株価はダウ平均で10,000ドル近辺を、ナスダックは2,000ドルを切り低迷している。
2001年11月に米国デンバーで開催された第14回SC2001 High Performance Networking and Computingコンファレンスでは、プラットフォーム分野はグローバルコンピューティングであるGridコンピューティングが、アプリケーション分野ではバイオインフォマティクス関連が主役にに躍り出ている。
ペタフロップスを追求していた、米国のハイエンドコンピューティング最近の動向はあくまで高性能を追求する動きからGridに代表されるグローバルコンピューティングさらに民生用のハードウエアコンポーネントを利用するワークステーション/PCクラスタに向かっている。超並列、超分散がハイエンドコンピューティングの大きな流れとしてますます加速している。
片や日本でも、2001年、2002年はIT業界の景気の不況は深刻であり、ハイエンドコンピュータを手がける大企業各社も経営難から一斉に早期退職制度を採用し、人員の整理、業種転換とう企業内構造改革に乗り出してた。これは従来日本では、大企業の研究機関を中心にハイエンドコンピュータの研究が行われてきたことを考えるとますます米国に遅れをとる懸念が強い。国研である産総研でも独立法人化が始まり中長期の研究開発が敬遠されるようになっているのも気がかりだ。
以下、本章ではハイエンドコンピューティングの新しい流れを中心に概観する。主な情報源としては2001年11月に開催されたSC2001コンファレンス、通称Blue
Bookと呼ばれているFY2002大統領予算教書への科学技術に関する補足ドキュメント (FY2002 Blue Book)、及びWebで公開されている情報を元にしている。
FY2002 Blue Bookに関しては、下記サイトに全文が載っている。(過去の分もある)
英語原本:http://www.itrd.gov/home.html
日本語訳:http://www.icot.or.jp/FTS/Ronbun/BlueBook2002-J.pdf
米国のハイエンドコンピューティング開発の背景、経緯は過去5期に渡る当研究所の報告書(ペタフロップスマシン技術に関する調査研究、同,同。およびハイエンドコンピューティング技術に関する調査研究氈A同)にまとめられているのでこれを参照下さい。
報告書はいずれもAITECのホームページ( http://www.icot.or.jp/
)から参照可能。