この数年の間にパソコンや携帯電話(携帯端末)およびインターネットが急速に普及し、社会は情報技術(IT)による大きな変革の波にさらされている。現在、わが国においてもIT革命が叫ばれているが、これを真に成功させ、国民の幸福に結びつける為には、インターネット上の価値あるコンテンツを効果的に開発・維持・検索・活用するための技術と仕組み、および、人間とコンピュータとの間のインタフェースの能力を現在のレベルよりも格段に優れたものへと飛躍的に向上させることが必要である。
従来の情報技術は、コンピュータの高速化、高性能化、高信頼化、大容量化などを廉価に実現し、人間の作業を機械で置き換えることによって、いかにしてコンピュータを既存の人間社会に適応させて行くかが主要課題であったと言えよう。これらは依然として重要であることに変わりはない。しかしながら、インターネットの出現により生活様式の変化や、新たな文化の創出が生まれつつある現実を見据え、情報技術によるより良い社会を実現するためには、新しい「人間・コンピュータ共存系」におけるコンピュータの役割、すなわちコンピュータが人間に与えうるもの(メリット)に、より一層着目する必要がある。これは、インターネットアプリケーションも含めて、広義の「コンテンツ」ともとらえることができよう。
また従来、コンピュータ化しやすい部分は非常に大きな自動化の効果をあげてきたが、知的精神活動に直接かかわるような、コンピュータ化しにくいと言われてきた部分においては、いまだに多くの研究余地が残されており、感性の扱いなどを含め、さまざまな要素を考慮したユーザインタフェースのさらなる向上が期待される。さらに、B-to-Cの電子商取引やG-to-Cの電子政府、そして教育などにおいては、身障者、老人、子供を含めたすべての人が快適に情報技術の恩恵を受けられるような知的なユーザインタフェースの実現が必須であろう。
以上の視点から、調査ワーキンググループでは情報技術の重要領域として、「知的ユーザインタフェース」と「広義のインターネットコンテンツ」に特に重点を置いた「人間主体の知的情報技術」の調査・検討を行うことにした。今年度は各分野の専門家からなる委員や講師の最新知識を集積して、これらの領域における研究開発のリーディングエッジを探り、これを元に今後注力すべき技術分野の検討や、世界におけるわが国の技術ポテンシャルの水準を評価するための元データを得ることを目指した。