知床峠 Shiretoko Pass

良く考えたら,峠と名のつく「キツイ」峠には,この夏一度も行ってない.この知床峠にしたって,キツイとは聞いていたもののせいぜい 800m である.まぁ海抜 0m からの 800m だから楽ではないだろうが‥‥

とか考えながらのんびりとペダルを踏む.雲をかぶった羅臼岳が見え隠れしながら,標高を上げていく.交通量も思ったほど多くない.観光以外の車両はもっと内陸の国道 244 号を通るためだろう.

ふと見ると,前方にキラキラ輝くものが道路の両側にある.
「なんだありゃ」
こぎ進むにつれて,それは次第に自転車の集団を形作っていく.
「なんだぁ,ありゃぁ」
ついに追いついてしまった.サークルの合宿の一群だ.国道 334 号の両側に 50 台は下らない自転車が駐車してある.ある意味,圧巻だ.人間は一人もいない.恐らく羅臼湖に行ったのだろう,近くに羅臼湖への入り口があった.しかし自転車もこれだけの数になると見物だ.しかも全ての自転車が長期ツーリング用の装備で固めてあるのだ.
「あぁーあ」
と半ば呆れながら,当時幹事長の杉浦(仮名)の自転車に,
「追いついたぜ.峠にて待つ」
と置き手紙を残し,先行する.

その後しばらくすると,傾斜は緩やかになった.そして終いには下り坂になってしまった.峠を見過ごしたはずはない.でもちょっと不安になって下っていくと,霧が出てきた.かなり濃い霧だ.ほとんど視界が遮られて,髪が濡れてくる.そうしてある角を曲がった時,知床峠の駐車場に到着した.

視界ゼロ.まったくの不運.風が強い.霧が流れる.
最初は火照っていた体も,徐々に冷えてきて,ズボンと雨具を取り出して着込む.一応,やっぱり写真は撮ってはみたものの,辺り一面真っ白で,本来なら北方領土なんかも見渡せるはずだったのに,残念である.
さっき後輩に「峠にて待つ」なんて書き置きしてしまったものだから,ちょっとは待ってみようかな,とフラフラ歩いていたがどうにも我慢できないほどに寒くなってきた.ウィスキーをあおってみたりもしたが,まったく聞き目無し.先に降りるか,と思った矢先,後輩の先頭グループが到着した.でもあまりにも寒いものだから,一言二言交わしてさっさと降りてきてしまった.

楽しみにしていた峠だけに残念だ.また来るか ?


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