筑紫恋キャンプ場(2) Chikushikoi CA(2)

この夏,二度目の筑紫恋である.なんとなく気に入ったキャンプ場だった.前回は日本一周中の奴がいたが,今回はどうかなぁ,と思いながらキャンプ場に入っていくと,日曜日のせいか,テント乱立の御盛況.RV カーがずらりと駐車場に並ぶ.たしかこのキャンプ場は車両の進入が許されているところ.これはいつも以上に,巨大なテントを立てたファミリーキャンパーを避けねばなるまい.前回張った「土俵」はすでに満席なので,もっと奥の車では入れないところまで入っていくと,
「おぅ兄ちゃん,くたびれた顔してんなぁ.酒呑むか ?」
という声.見ればボサボサの頭をした,山伏のようなオジさんが,カティサークをこちらに差し出している.そんなにくたびれてもいないんだけどぁ,とも思ったが,目的地に着いたという安心感も手伝って,
「はい ! どうも,頂きます」
と電光石火の速さでマグカップを差し出した.
そして,元気出せよ,とか言いながら彼は自分のテントに戻っていった.

さぁて,おいらもテント張るべ,と場所を探すが,あまり良い場所が見当たらないので,比較的良いと思われる,さっきのオジさんのテントの近くに陣取る.下が芝なのはうれしいのだが,蚊が多くて困った.前回はそんなことなかったのに.
すぐにテントを立て終え,自炊の準備を始めると,オジさんがまたやってきて,
「お前さんの夕食はなんだ」
という.飯とナスと挽肉です,と言うと,
「じゃ,それと引き換えに俺んとこで,焼き肉しようぜ.ビールもあるぜ」
とおっしゃる.なんだかあまりの好条件に恐縮して,いいんですか,と聞けば,
「あぁ,いーよ.二人で食べた方が,一人で食うよりうまいだろ」
と的を得た回答.僕は,ナスの下拵えだけして,ウキウキしながら彼のテントを訪問した.

大きなフライパンの上で焼き肉を焼き,程よく冷えたビールを頂く.いろいろ面白い話を伺った.テントはダンロップ製だと分かっていたが,見たことのないタイプだったので質問してみると,特注したものだという.なるほど.フライは二周りぐらい普通のテントより大きいし,出入り口は片方がファスナー,もう一方が冬山用によくある紐で絞るやつ.グランド部の素材も僕のよりもはるかに頑丈でしっかりしている.
仕事は水道管工をしているが,夏は網走の方の牧場で働き,暇を見てバイクで林道ツーリングに出るのだそうだ.なんとうらやましい.愛車はたしか本田の XR だったと思う.逆輸入車ではないだろうか.

たらふく肉野菜を食べてビールが無くなると,まだ話をしたかったが,そこはお互い一人旅をするもの同士,9 時頃には寝ることにした.
最後に,
「他にも一人のキャンパーはたくさんいるのに,どうして僕を誘ってくれたんですか」
とずーっと不思議に思ってたことを聞いてみたら,
「俺が酒を勧めて飲んだのは,お前さんだけだったんだよ」
「あ,そーなんですか」
と二人で大笑い.とても楽しい夕べだった.ごちそうさまでした.


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