ICOT TODAY Issue #13(最終号)

June 30, 1995



[目次]





[はじめに]

今年の梅雨は、梅雨らしく、よく雨が降ります。早いもので、今年も、6月が 過ぎようとしています。

ICOTも3月の研究所の解散、5月末の調査国際部のメンバーの帰社などにより、 ICOT Todayの執筆陣も手薄となってきました。最終号となる今回の第13号は、 好評だった浪越さんに代わり、内田と相場が担当します。

新事務所への移転も完了し、6月末をもって、4月以降も残っていた研究所メン バーも帰社して、いよいよ、ICOTは解散し、事務局のメンバーのみとなり、清 算の業務にはいります。

これに伴い、IFSの普及と育成の事業は、7月1日より、JIPDECに引き継がれま す。IFSのユーザへのサービスやネットワークを通してのWWWのアクセスなどは、 従来と変わりませんので、これまで同様、ご愛用ください。

また、ICOT Todayの役割を引き継ぐようなニュースレターも新たに企画して、 皆さんにお届けする計画です。

それではICOT Today 第 13号、最終号ですが、ICOT関連の最後のニュースとし て、ICOTのその後の状況についてお知らせします。


1.ICOT金杉橋オフィスへ移転する

3月末の研究所解散の後もICOTに残り、平成7年4月から6月に予定された業務を 実施した、IFSの配布担当チーム、研究計画部の設備担当チーム、それに事務 局は、ともに、金杉橋の新事務所への移転を完了し、6月1日より、この金杉橋 オフィスで執務を開始しました。

IFS担当チームは、研究計画部の設備担当チームと協力して、まず、金杉橋オ フィスにマシンやネットワーク環境を設置しました。

その後、IFSの新規登録分の外部への配布準備を完了すると共に、IFSの主要な プログラムについて、Sparc Centerなどの上でデモとプレセンテーションがで きるような体制を作り上げています。

そのほか、研究計画部の設備担当チームは、PIMや種々のマシン類の移設など の物件処分を完了させ、また、三田国際ビルの撤収を行ないました。

事務局は、平成6年度の決算の実施、平成7年4月から6月までの予算の作成、そ れに、財団としてのICOTの解散のための諸準備、また、7月より、IFSの普及と 育成の事業をJIPDECに引き継ぐための準備を行いました。

以上のように平成7年の6月末までに予定された作業は、ほぼ、完全に終了しま した。残っていた研究所のメンバーも、全員が帰社し、ICOTは、6月30日をもっ て解散、7月より清算業務に入ることとなります。清算業務は、残った事務局 のメンバーによって、12月までの予定で実施されます。(記事 なし)

2.IFSの普及と育成事業、JIPDECに引き継 がれる

IFSの普及と育成の事業は、7月1日より、JIPDECの開発研究室に引き継がれま す。

引き継がれるといっても、金杉橋オフィスのフロアーの半分が、マシンやネッ トワークなどの設備を含めて、JIPDECの管理下に入り、実際の作業も金杉橋オ フィスで実施されます。

これまで指揮をとってきた、研究所次長の小川さん、研究計画課長の佐藤さん は、ICOTからJIPDECに帰社しますが、この開発研究室の所属となり、この事業 を担当します。

また、4月以降も残っていた2名の主席研究員のうち、藤瀬さんは、MRIに帰社 後も、IFS担当のソフトウェアハウスのメンバーに加わります。IFS配布を担当 するソフトウェアハウスのメンバーも、JIPDECの傘下に移行するだけです。

また、相場も、新たにJIPDEC開発研究室のメンバーとなり、従来同様、IFSの 普及と育成の事業を担当することとなりますので、よろしくお願いします。

従って、IFSの普及と育成の事業は、JIPDECに引き継がれますが、皆さんにとっ ては、おなじみの顔ぶれが、そのまま事業を継続していくこととになりますの で、引続き従来どおりのご協力と応援をお願いします。

今年度のIFSの普及と育成の事業は、KLIC並列版など、新たに登録されたIFSプ ログラムの配布や保守のほかに、IFSのさらなる発展を期して、IFSを基盤とし て新たなIFSを生み出すような委託研究を実施するなど、より積極的な活動を 予定しています。

これらについては、新たに企画されるニュースレターなどで、お知らせする予 定です。(記事 なし)

3.ICOT無償公開ソフトウエア近況

1992年6月のFGCS'92の時に開始されたICOT無償公開ソフトウエアも、満3年が 経過し、ソフトウエアも計100本となりました。IFS担当の相場が、IFSの現状 と、今後についてご報告致します。(記事 No.13-1)

4.ICLP’95でIFS講習会開かれる

6月13日から18日まで、神奈川県葉山町にある湘南国際村で日本ではじめての ICLP (International Conference on Logic Programming) 1995が開催されま した。この会議は、論理プログラミング言語に関する国際会議で、毎年世界各 地で開催されています。ICOTでは、この会議において、内田が「Current Status of FGCS Technology and its Future Direction」と題して基調講演を 行ないました。また、16日の午後に、IFS講習会と題して、代表的なIFSについ ての講習会を行ないました。IFS担当の相場が、ICLP'95におけるIFS講習会に ついてご報告致します。(記事 No.13-2)

T H I S I S S U E ' S A R T I C L E S
では、Headlineでご紹介した中から、今号は以下の記事をお届け致します。



1. ICOT無償公開ソフトウエア近況

ICOT主席研究員 相場 亮
ICOT Today でICOT無償公開ソフトウエア (IFS) の近況をお知らせするのも、 1993年11月4日発行の第3号以来、2回目となります。

ICOT無償公開ソフトウエアは結局、1992年6月のFGCS'92にあわせた最初の公開 以来、100本となりました。この最初の公開からはやいもので丸3年がたちまし た。そして今月、1995年の6月に、とうとうUNIXベースの汎用機のためのKL1言 語処理系 KLIC がファイル別通算アクセス数のランキングトップになりました。 KLICが最初にFTPで公開されたのが1993年の7月でしたから、2年でトップにたっ たわけです。

ICOTでの主要成果のひとつということもありますし、多くのKLIC講習会や、 ICOT OBで大学に行かれた方々が授業その他で使っていただいたということも あるでしょう。ともあれ、KLICを始め、各IFSへの数多くのアクセス、本当に ありがとうございました。今後とも、IFSをよろしくお願い致します。

さて、それではKLICがランキングトップとなった、ファイル別通算アクセス数 のトップ10を見てみましょう。これは、6月1日付けのランキングです。


順位          ソフトウエア名称                     転送件数
----------------------------------------------------------------------
  1  並列論理型言語KL1の汎用機上の処理系: KLIC       662
  2  制約論理型言語: cu-Prolog                       603
  3  形態素辞書                                      309
  4  UNIX上のKL1プログラミング環境: PDSS             254
  5  力学プログラミング: DP                          252
  6  構文解析処理プログラム                          208
  7  日本語文生成ツール                              200
  8  局所単一化文法: LUG                             169
  9  制限依存文法: RDG                               165
 10  並列オブジェクト指向言語: A'Um-90               161
----------------------------------------------------------------------
全IFS合計                                          7,010

KLIC処理系は最初、KL1言語処理方式検討用の処理系が1993年の7月にFTPで公 開され、ついでその暮れには逐次版のKLIC第1版が、そして今年の4月には第2 版が各々公開ディレクトリに載せられています。本格的なKLIC処理系としては、 第1版からでしたから、実質的には1年半で650件を超えるアクセスがあったこ とになります。現在も、KLICには毎日多くのアクセスをいただいています。

また、最近、PVM上で動作する並列版のKLIC処理系をリリースしました。残念 ながら、多少のバグがあることがわかっていますが、近いうちに、いくつかの 並列マシンで動作する処理系とまとめてリリースする予定で、現在取りまとめ の作業を行なっています。

それでは次にIFSへのアクセスがどのような国、あるいは地域から行なわれて いるかについて見てみましょう。下の表の数値は、READMEやマニュアル、ある いはIFSニュースレターといったようなソフトウエア以外のファイルへのアク セスも含めたもので、()内のものが、ソフトウエアのファイルへのアクセスを 表しています。

		   IFS に対するすべてのアクセス件数
                   ================================

            国名         アクセス人数    転送ファイル件数
	   -----------------------------------------------
            日本          1267 ( 972)       6978 ( 3410)
            アメリカ       614 ( 348)       3644 ( 1797)
            ドイツ         121 (  75)        537 (  266)
            フランス        75 (  51)        483 (  257)
            大韓民国        29 (  21)        409 (  269)
            イギリス       105 (  58)        370 (  143)
            台湾            37 (  30)        272 (  174)
            カナダ          80 (  37)        269 (  107)
            オーストラリア  71 (  33)        249 (   65)
            スウェーデン    43 (  20)        153 (   63)
            その他 *)      342 ( 178)       1214 (  459)
           -----------------------------------------------
            合計          2784 (1823)      14578 ( 7010)

*) その他に含まれる国と地域は、イスラエル、イタリア、オーストリア、オ
ランダ、シンガポール、ポルトガル、フィンランド、スペイン、ベルギー、ス
イス、ロシア、南アフリカ、デンマーク、香港、トルコ、ブラジル、チェコ、
ノルウェー、ポーランド、タイ、中国、ニュージーランド、チリ、メキシコ、
ギリシャ、インド、チェコスロバキア、ウルグアイ、キプロス、ハンガリー、
アルジェリア、エジプト、アルゼンチン、ベネズエラ、ラトビア、リトアニア、
スロバキア、アイルランド、アイスランド、コロンビア、スロベニアで、上の
表とも合わせて、合計51の国と地域からアクセスを受けています。
このデータによると、IFSにアクセスした人の65%以上が、実際のソフトウエア の入っているファイルを転送していることがわかります。また、転送されたファ イルのおよそ48%が、そうしたソフトウエアのファイルであることがわかりま す。

IFSにアクセスした人のうち、日本とアメリカについて、どのような組織に所 属しておられるかを、以下に示します。

       種別                    日本                   アメリカ
                        人数      ファイル件数   人数    ファイル件数
    ------------------------------------------------------------------
    学校 (ac/edu)       930 (711)  5353 (2496)  330 (198)  1913 ( 863)
    一般企業 (co/com)   179 (147)  1087 ( 634)  208 (113)  1398 ( 756)
    非営利団体 (or/org) 117 ( 86)   384 ( 195)   16 ( 10)   135 (  81)
    政府関連 (go/gov)    30 ( 19)   124 (  72)   29 ( 17)   140 (  74)
    その他               11 (  9)    30 (  13)   31 ( 10)    58 (  23)
    ------------------------------------------------------------------
    合計               1267 (972)  6978 (3410)  614 (348)  3644 (1797)

IFSの普及・育成事業は、7月1日以降、JIPDECに引き継がれます。今後の事業 では、これまでに公開してきたIFSの保守や普及はもちろん、IFSをベースとし て新たに開発されるソフトウエアもIFS同様、公開していく予定です。これま で同様、今後のIFSにご期待ください。



2. ICLP'95におけるIFS講習会の報告

ICOT主席研究員 相場 亮

神奈川県の葉山というと、皆さんどんなイメージをお持ちでしょうか?湘南? ヨット? 日影茶屋? 御用邸?

葉山町の山の上(そう、葉山には海だけでなく、山もあるんです)の「湘南国 際村センター」で、6月13日から18日まで、世界各国から約180人の参加者を集 めて、第12回のInternational Conference on Logic Programming (論理プロ グラミング国際会議)が開催されました。ICOTではその最終日、18日の金曜日 の午後、2時から5時半にIFS講習会を開催しました。国際会議の最終日、週末、 と参加者の集まりにくそうな条件がそろったにもかかわらず、およそ40人の方 がいずれかの講習会に参加されました。

講習会にあたっては、汎用機上のKL1言語処理系KLIC、知識表現言語 Quixote、 そして法的推論のテーマについて、ICOT主席研究員の藤瀬さんと、近山さん、 横田さん、そして新田さんというICOT OBの方々に講師をお願いしました。以 下がそのプログラムです。

        時間          プログラム1         プログラム2
  ============================================================
  14:00 - 14:20              Introduction to IFS
                                    相場
  ------------------------------------------------------------
  14:25 - 15:55     Structure of KLIC     Introduction to KLIC
                        近山さん                藤瀬さん
  ------------------------------------------------------------
  15:55 - 16:10                コーヒーブレーク
  ------------------------------------------------------------
  16:10 - 17:30    Overview of a legal      Quixote:
                    reasoning system,     why don't you
                       new HELIC-II         use it?
                         新田さん           横田さん
  ------------------------------------------------------------
本会議の全プログラムが終了し、金曜日の午後にもかかわらず、J. A. Robinsonさんや、Ozの提唱者であるG. Smolka氏、COSYTECのH. Simonis氏を始 め、大勢の方にご参加いただきました。どの講習も活発な質疑応答、場合によっ ては議論を交え、どれも時間をオーバーしようかという熱気の中で行なわれま した。コーヒーブレークでも、参加者同士、あるいは講師をお願いした方々を 交えて議論が行なわれ、最後のセッションに遅れた方もおられました。

今後も、何等かの機会をとらえてこうした講習会をまた開きたいと思っていま すので、その折りには是非ご参加ください。


[MESSAGE FROM THE EDITORIAL DESK]

ICOT Today 第 13号、いかがでしたか ?

UNIX上で稼働するIFSの配布を契機として、第五世代コンピュ−タ技術の実用 化に向けた普及活動は、いよいよ本格的になってきました。

幸い、IFSの配布件数は増えつづけており、特にKLICの配布数は、700件を越え ました。配布先でさらにコピーされていることから、実際の利用者数は、この 数倍に達していると思われます。また、内外のUnixベースの並列マシンへの移 植も、これからが本番といった具合です。(それにしても、並列マシンがもっ と安くなり、そこら中にゴロゴロ...という状況に早くなって欲しいものです。)

7月以降のIFSの普及と育成の事業は、JIPDECの開発研究室により実施されます。 予算的な制約もあり、従来より小人数で頑張ることになりますので、皆さんの 従来以上のご協力をお願いします。

ICOT Todayは、ICOTの研究開発の日常をいろいろな切口でレポートしてきまし たが、その研究開発業務の終了に伴い、今回をもって終了します。2年間のご 愛読ありがとうございました。

ICOT Todayにかわるニュースレターも、また、新たに企画され、皆さんにお届 けできるものと思われます。その上で、また近いうちに、目にかかることにな るかと思います。

ICOTの清算の業務は、金杉橋オフィスで実施し、12月末結了の予定です。事務 局も、北村事務局長、奥山総務部長、小峰経理課長、大山さん、研石さん、顧 問となる堤さん、それに内田という、おなじみの顔ぶれです。

お近くにお越しの節には、是非、お立ちよりください。詳しい場所その他につ いては、ICOTのWWWホームページ (http://www.icot.or.jp)をご覧下さい。


I C O T  T O D A Y	Issue #13 (最終号)
	編集・配布	海外渉外広報担当グループ(IR&PR-G)
			内田俊一 相場 亮

	発行	1995年6月
		財団法人 新世代コンピュータ技術開発機構
		東京都港区芝2丁目3番3号  芝東京海上ビル2F
		電話: 03-3456-2511	FAX: 03-3456-3158
		e-mail: irpr@icot.or.jp

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