MGTP 上での仮説推論の例


以下では、MGTP 上での仮説推論の例として、

  1. Kオペレータを導入した変換例と推論結果
  2. Gelfond が論文「Disjunctive Defaults」の中で示した例題
  3. 法的推論への応用例(JavaMGTP による実行例含む)
を説明する。

1. Kオペレータを導入した変換例と推論結果

以下の general logic program を考える。

R <- not R.
R <- Q.
P <- not Q.
Q <- not P.

これらのルールは、以下のような MGTP 問題節に変換される。 -> -K R, R ; K R.
Q -> R.
-> -K Q, P ; K Q.
-> -K P, Q ; K P.

上記のルールに対して MGTP 実行を行うと、以下の3つのモデルが生成される。

S1={KR,-KQ,P,KP}
S2={KR,KQ,-KP,Q,R}
S3={KR,KQ,KP}

ここで、S1 と S2 は T-condition を満たさない。よって、 S2 のみが求めるべき安定モデルとなる。


2. Gelfond が論文「Disjunctive Defaults」の中で示した例題

(Inoue, et.al., "Embedding Negation as Failure into a Model Generation Theorem Prover" より)

Lh-Usable(X) <- Person(X), not Ab1(X).
Rh-Usable(X) <- Person(X), not Ab2(X).
Ab1(X) <- -Lh-Usable(X).
Ab2(X) <- -Rh-Usable(X).
Person(john) <-.
-Lh-Usable(john) | -Rh-Usable(john) <- .

この問題においては、john が右利きであるという証拠も左利きであるという 証拠もないが、逆に右利き(左利き)であることを否定する情報もない。 したがって、右利き、左利き両方が安定モデルとなる。

上記のルールを MGTP ルールに変換してモデルを求めると以下の2つとなる。

S1={Person(john),-Lh-Usable(john),Ab1(john),K Ab1(john),-K Ab2(john), Rh-Usable(john)}
S2={Person(john),-Rh-Usable(john),Ab2(john),K Ab2(john),-K Ab1(john), Lh-Usable(john)}

S1、S2はともに T-Condition を満足する。したがって、共に安定モデルである。


3. 法的推論への応用例

MGTP 上での仮説推論の実現の応用として、法的推論への応用が考えられる。 たとえば、以下のような例題を考えてみる。

<例題>

ラクーン商会は、ソフト販売会社6社に対して、最初に承諾した会社1社 に対して、3000万円のライセンス料でホームページ制作支援ソフトの販売 権をライセンスする旨、契約条項を添付した電子メールを通知し た。ソフト販売会社レッドフォックスは、自社のサーバーのタイムスタンプで 7 月7日午前0時12分にラクーン商会に承諾通知を発信したが、ラクーン商会のサー バーにメールが到着したのは、ラクーン商会のサーバーのタイムスタンプで 午前0時15分であった。 他方、同じくソフト販売会社であるキヌタ堂は、自社のサーバーのタイムスタ ンプで7月 6日午後8時にラクーン商会に承諾通知を発信したが、ラクーン商会 のサーバーにメールが到着したのは、ラクーン商会のサーバーのタイムスタン プで翌日午後4時であった。 いずれの販売会社との契約が成立するか ?


この例題に対するルールベースの記述 (記述は、拡張論理型言語による)。

MGTP 入力節

MGTP 実行結果


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