JIPDEC AITEC NEWS
News on FGCS Technology and related activities by Research Institute for Advanced Information Technology(AITEC), the successor of ICOT

August 24, 1998
Issue #19

目次

はじめに

今年の夏は梅雨が長かったり、夏らしい晴天がないまま、秋の気配が感じられ
るなど、まさに異常気象と呼ぶにふさわしい天候となりました。

また、今年の夏は、「日本経済再建」を争点とした参議員選挙で始まりました。
連日、円や株の動きなどの情報が流れ、景気浮揚策や日本経済再建の議論がマ
スコミを賑わし、それは今日も続いています。

日本経済再建の議論の中には短期的対策と長期的対策があると思います。

われわれが関わっている情報産業は、産業の生産性を上げたり、日常生活を便
利にしてくれるようなソフトウェアを生み出すのみならず、インターネットや
電子マネーなどからも分かるように、その技術によって、長期的に、社会構造
や経済活動の変革をもたらす重要な位置を占めるものとなりました。

つまり、日本経済再建のための長期的対策において、情報産業の育成は最重要
課題の一つと考えるべきものです。しかし、わが国の情報産業を振り返ってみ
ると、米国などと比べ大きな格差がついているのが現状です。では、どうすれ
ばよいのでしょう?

この度、通産省は、「情報産業の発展と研究開発のあり方について」の報告書
をまとめました。AITEC は、この報告書をまとめた検討会に、米欧の研究開発
の仕組みや制度など種々の検討材料を提供しました。

また、わが国の先端的な知識処理や並列処理のソフトウェアの開発を刺激する
ことを目的として、AITECでは、プログラミング・コンテストや、ソフトウェア
作成を前提とした、大学等への知的ソフトウェアの委託研究も実施しています。
これらの活動は、小さいながらも、わが国の情報産業の育成に貢献し、いずれ
は日本経済再建に繋がるものと考えています。

現在、わが国の経済は、この夏の異常気象のように混乱していますが、情報産
業が日本経済に実り豊かな秋をもたらしてくれるよう、皆さんと努力していき
たいと思っております。

それでは、AITEC の活動をお伝えする、AITEC NEWS 第19号の Headline を
お知らせします。

                              (高橋 千恵)


【AITEC-NEWS HEADLINE】

1. 平成10年度「KLICプログラミング・コンテスト」課題公開 KLICプログラミング・コンテストの課題を公開しました。エントリ・コースの 課題は「ライツアウト」、スピード・コースの課題は「スケルトン・コンテス ト」です。 今年度は、KLIC の初心者の方にも参加していただける「エントリ・コース」 を設けました。本コンテストも今年度が最後です。初心者の方も、腕に自信が ある方も、長年アイデアを暖めてきた方も、奮ってご参加下さい。 KLICプログラミング・コンテスト ホームページ: http://www.icot.or.jp/AITEC/FGCS/KLICON/main-J.html                            (記事 No. 19-1) 2. 第一回 ICOT OB会 開催のお知らせ 早いもので、ICOTが平成7年に解散してから、3年余の年月が過ぎてしまい ました。ICOT解散の後を受け、先端情報技術研究所(AITEC)が設立され、第五 世代コンピュ−タプロジェクトの成果の普及振興事業が行なわれていることは、 AITEC NEWSを読んで下さっている皆さんがよくご存知の通りです。 その事業も、平成10年度末をもって従来規模の活動は終了し、対応チームも 解散する予定です。その後の活動は、拡大したIFSの配布のためのサーバの運用や 問い合わせへの対応程度となる予定です。 IFSの改良・拡張など活動の中心は、 大学の先生やメーカ研究者などによるボランティア活動に移行することとなります。 そこで、ICOT関係者の集う機会を新たに設けようとのご提案を頂き、第一回 ICOT OB会を下記により開催することと致しました。皆さん、お忙しい時期 とは存じますが、ご出席下さいますようお願い申し上げます。 尚、このご案内は、電子メイル(AITEC NEWS)と往復葉書の両方で行なっております。 連絡先が不明となっている方のために、お近くの方にも転送いただければ幸いです。 日時 平成10年10月1日(木) 18:30−20:30 場所 メルパルク東京(郵便貯金会館) 電話:03-3433-7210 会費 5000円 ご出欠、および連絡先を9月11日(金)までに、ご回答下さい。回答、および お問い合わせは電子メイル、もしくは返信用葉書にてお願いします。 連絡先: 電子メイル junko@icot.or.jp (研石順子) 住所: 〒105-0014 港区芝2-3-3 芝東京海上ビル2F 先端情報技術研究所 電話:03-3456-2511 Fax: 03-3456-2513 幹事: 大山節子、奥山達夫、研石順子、相場亮、小峰三夫、内田俊一                               (内田 俊一)                             (関連記事なし) 3. 「情報産業の発展と研究開発のあり方について」の報告書まとまる  皆さんがよくご存じの通り、わが国の情報産業、特にソフトウェア産業は、 米国などと比較して大部格差がついてしまいました。 このようなことが情報 技術全般に波及しつつあり、国としても何か対応策を講ずるべく、通産省機情 局に検討会を設け議論してきました。「情報産業の発展と研究開発のあり方に 関する検討会」という名称です。  当研究所は、この検討会で議論するための材料を提供してきました。議論の ポイントは、日本の情報産業の国際的な競争力を強化するためには、国が行う 情報技術、特に、ソフトウェア技術の研究開発と産業育成の仕組みや制度をど のように変革したらよいかということです。 このたび、この検討会の報告書がまとまりました。この報告書では、国の支 援する情報技術、特に、ソフトウェア技術の研究開発成果を効果的に産業活動 に結びつけていくためには、どのような問題点を克服していくべきかに重点を おいて、次のような指摘を行なっています。 1) 国の研究開発支援制度は、フロントランナー時代に適合し、研究開発目的に 応じた適切なものとすべき   ・護送船団方式からトップ伸長方式への実施手法の転換   ・「協調方式」からオープン性を確保した公募制に基づく「競争方式」    への移行   ・政策目的に応じた適切な研究スタイルの選択 2) 経済構造改革、新規産業創造に向けた優良テーマへの誘導と知的所有権の 取り扱いの柔軟性の確保   ・知的所有権の帰属について、基礎的・独創的研究開発と、経済構造改革・    新規産業創造を目指した研究開発を区別   ・ソフトウェア分野については、キーテクノロジーの他にノウハウが含ま    れるプログラムのソースコードの取り扱い、パブリック・ドメイン化等    に関し知的所有権の柔軟な取り扱が必要   ・技術面の評価に加え、事業面の評価の必要性   ・国際的水準のテストベッドの提供による研究開発の促進  この報告書の概要は、平成10年7月31日付けで報道発表され、通産省の ホームページで見ることができます。 http://www.miti.go.jp/press-j/f-menu-j.html また、この報告書の基礎データの一つとなった当研究所技術調査部の作業委 員会の報告書も併せて御覧ください。 http://www.icot.or.jp/AITEC/FTS/FTS-home.html                               (佐藤 博)                             (関連記事なし) 4. 平成10年度 知的ソフトウェア委託研究のテーマ決定   海外も含めて広く展開してきたAITEC の委託研究も、平成7年度の開始か ら4年目を迎え、一応の区切りとして今年度が最終となります。そこで、今年 度の委託研究は、今後のIFS および拡大IFS をより広く、知的ソフトウェア分 野に限らず他分野の研究者や技術者にもツールや教材として利用してもらうこ とを狙いとして、それらソフトウェアのブラッシュアップを実施することとし ました。   知的ソフトウェア分野における委託研究は、IFS(ICOTソフトウェア)を ベースに並列記号処理や知識情報処理の分野を中心とした成果ソフトウェアを 拡充してきました。アクセスも世界各国から数多くあり、さらなる利用性の向 上が期待されています。   今年度はブラッシュアップ提案を公募し、海外も含めて計15件の応募が あり、昨年からの継続分6件と合わせた21件から、審査の結果、19件(国 内16件、海外3件)が採択されました。                               (相場 亮)                            (記事 No.19-2)

【THIS ISSUE'S ARTICLES】

1. 平成10年度「KLICプログラミング・コンテスト」課題公開 先にお知らせ致しました平成10年度「KLICプログラミング・コンテスト」の 課題(「エントリ・コース」「スピード・コース」)を公開しました。 詳細は当コンテストの Web ページをご覧下さい。 http://www.icot.or.jp/AITEC/FGCS/KLICON/main-J.html 今年度は KLIC の初心者の方にも参加していただける「エントリ・コース」 を設けました。「エントリ・コース」では課題を工夫して、コンテスト参加 者に楽しんで頂けるようにすると共に、多くの方に副賞のチャンスがあるよ うな配慮もしております。 コンテストは次の3コースでプログラムを募集します。 (1)「エントリ・コース」:課題「ライツアウト」ゲームを作ろう! プログラムが出来れば副賞(2万円)が貰える可能性大!! (2)「スピード・コース」:課題「スケルトン・コンテスト」 技術と知能を駆使して高得点の出る高性能のプログラムを作ったら勝ち。 我こそは、と思う方は挑戦してみませんか。 (3)「アイデア・コース」: 自由な発想でプログラミングして下さい。 例年、応募の少ないコースです。あなたにも受賞のチャンスが!! 日頃、暖めていたあなたのアイデアをここで応募してみませんか? 今年度が最後のチャンスです。 同時に、コンテストのタイムリーな情報をお送りするために、 「コンテスト情報メーリング・リスト」への登録を受け付けています。 本コンテストに興味を持たれた方は是非登録して下さい。 (上記 Web ページから登録できます) どうぞ、奮ってご応募下さい。                              (金田 喜代史) 2. 平成10年度 知的ソフトウェア委託研究のテーマ決定   AITEC NEWS No17 にて平成10年度の知的ソフトウェア委託研究に関する 提案公募案内を行いました。   その案内の中でも触れましたが、第五世代技術の普及振興事業の一区切り にあたり、本年度末をもってAITEC の「第五世代普及振興部」は解散する予定 になっています。それに伴い、公募方式による委託研究も今年度が最後となり ます。   そこで今年度の委託研究は、IFS および拡大IFS を対象に「先進的ソフト ウェア資源化のためのブラッシュアップ」を中心に実施し、広く技術者や当分 野以外のユーザにも使いやすいソフトウェアとすることにしました。ブラッシュ アップとは具体的には、 ・プログラムの操作性の向上 ・操作説明書や例題集の拡充 ・プログラムや用いられたアルゴリズムの解説の拡充 などを対象とします。   新たな応募15件と、平成9年度に採択された2年計画の研究テーマ6件 について2回の審査委員会で審議した結果、今年度は19件(国内16件、海 外3件)の研究グループにブラッシュアップをお願いすることとなりました。   これら19件は、分野としてもKLIC などのように基盤的なもの、法的推 論や遺伝子情報処理のようなアプリケーション分野のもの、Java のような既 存の技術との共存など、多岐にわたっています。   平成11年2月に委託研究成果発表会を開く予定ですが、今年度は、スケ ジュールが許せば、この発表会に海外の委託研究グループからの参加もお願い し、成果の発表をしてもらう予定です。   IFS および拡大IFS は平成11年度以降も公開し広く利用に供する予定で すが、今年度のブラッシュアップにより使いやすくなり、ますます利用が増え、 さらには研究者や技術者の自律的なソフトの改善・拡充により、共有のソフト ウェア資源として発展することを期待しています。 −−−− 平成10年度 委託研究テーマ一覧(19件) −−−− (1)IFS日本語(形態素)解析パッケージ・配布プロジェクト 佐野 洋 先生 (東京外語大学) (2)KL1のスレッド実行の高速化 中島 浩 先生 (豊橋技術科学大学) (3)Java-MGTPと高度推論機構の開発 長谷川 隆三 先生 (九州大学) (4)帰納論理プログラミングによるデータマイニングエンジンDatagol の研 究開発 古川 康一 先生 (慶應義塾大学) (5)Applying Constraint Logic Programming Languages for Modelling Multi-objective Decision Making under Uncertainty John Darlington 先生 (Imperial College) (6)Distributed Constraint Solving for Functional Logic Programming Bruno Buchberger 先生 (RISC-Linz) (7)WEB-KLIC software Enrico Pontelli 先生 (New Mexico State University) (8)klicの視覚的インターフェース(klitcl) ・klic と Javaのメッセージ インターフェース 田中 二郎 先生 (筑波大学) (9)集合制約ソルバー 佐藤 洋祐 先生 (立命館大学) (10)ゴールに依存した抽象化を用いた法的推論システムの開発 角田 篤泰 先生 (北海道大学) (11)学習機構内蔵型プログラミングシステム PRISM 佐藤 泰介 先生 (東京工業大学) (12)制約処理系を利用した図形描画システム 五十嵐 健夫 氏 (東京大学) (13)DJ:Java に基づく制約言語とシステム 周 能法 先生 (九州工業大学) (14)並列ビジュアルプログラミング環境 KLIEGの使用性の向上 柴山 悦哉 先生 (東京工業大学) (15)協調ロボットプログラミング言語/システムの開発・協調ロボットプ ログラミング言語/システム 溝口 文雄 先生 (東京理科大学) (16)KL1プログラム静的解析系 上田 和紀 先生 (早稲田大学) (17)KLIC 第3版:KLICへの世代方式ガーベジコレクタの導入 近山 隆 先生 (東京大学) (18)最尤法を用いた分子進化系統樹作成プログラム Deepforest 斎藤 成也 先生 (国立遺伝学研究所) (19)階層連立1次方程式のための効率的制約解消系の改良と移植 松岡 聡 先生 (東京工業大学)                          (茂呂 知明、相場 亮)

編集後記

 以上、AITEC NEWS 第19号、いかがでしたか? 今回は、「KLICプログラミング・コンテスト」の話題や、知的ソフトウェア委託 研究などに関してご報告しました。 AITEC では、このような活動を通して、ICOT 関係者と現在もお付き合いが ありますが、本 AITEC NEWS でもお知らせした通り、この度 ICOT OB会が 開催されることとなりました。 今まで、AITEC NEWS でしか、ICOT 関連の情報が手に入らなかった方、この 際 AITEC に何か言いたい方など、いい機会だと思いますので、皆さんお誘いの上、 ご参加下さい。沢山の方々とお目にかかれることを楽しみにしています。 では、これから季節の変わり目を迎えますが、体調などを崩されませんように。 秋にまたお会いしましょう。(^^)/~~ ☆*********************************************************************☆    AITEC NEWS Issue #19    編集・配布 AITEC NEWS編集グループ      佐藤真紀子  高橋千恵  相場 亮  河西和美      武田 浩一  鳥居良春  佐藤 博  内田俊一    発行 1998年8月24日       財団法人 日本情報処理開発協会 先端情報技術研究所       東京都港区芝2丁目3番3号 芝東京海上ビル2F       TEL  :03-3456-3191  FAX  :03-3455-4877       e-mail: aitec-news@icot.or.jp       URL  : http://www.icot.or.jp ☆*********************************************************************☆

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