JIPDEC AITEC NEWS |
February 29, 1996 |
Issue #1 |
立春も過ぎたというのに、まだまだ寒い日が続いています。今年は各地で 大雪の便りも聞かれ、久々に冬らしい冬という気がします。東京では、毎 日乾燥した晴天が続き、今から水不足がちょっと心配です。 さて、以前、ICOT TODAY No.13 (最終号)でもお知らせしましたとおり、 ICOT は昨年6月末で所期の目的を達成して解散致しました。6月からは 金杉橋に移転し、12月末をもって清算業務を全て終えました。 第五世代コンピュータプロジェクトおよびその後継プロジェクトで開発さ れたICOT フリーソフトウェア(IFS)の普及・育成事業は、7月に JIPDEC に引き継がれ、10月からは JIPDEC内に設立された先端情報技術研究所 (AITEC)が実施することになりました。 「ICOTって本当になくなっちゃうの?」、「IFS に関する問い合わせはどこ にすればいいの?」といった皆様のご心配の声も多々ありましたが、このほ ど新生研究所の運営もほぼ軌道にのり、先端情報技術研究所の活動をお知ら せする AITEC NEWS (アイテック ニュース)を創刊することになりました。 皆様のご愛読よろしくお願い致します。また、いろいろなご意見を aitec-news@icot.or.jp までお寄せ下さい。お待ちしております。 (佐藤 真紀子)
【AITEC-NEWS HEADLINE】
1. ごあいさつ
AITEC-NEWSの創刊にあたり、内田研究所長より、ごあいさつと新研究所の紹介をさせていただきます。
2. 平成7年度 IFS育成委託研究の募集と実施
今年度より、IFSの普及・育成事業の一環として、ICOTフリーソフトウェア (IFS)を改良したり、それを利用したり、さらに発展させたりしたソフトウェ アの開発をお願いする委託研究が始まりました。今年度は27件の応募があり、 査読方式による審査の結果、22件の委託研究をお願いすることになりました。 3月11日と12日の2日間、東京グランドホテルで、この22件の委託研究の研究成 果発表会を行ないます。ご聴講ご希望の方は、
なお、来年度も第五世代技術普及のため、引続き委託研究の募集と実施を行な う予定でおります。来年度委託研究にご興味のおありの方は、上記担当までメ ールで、またはfaxでお問い合わせください。なお、来年度、委託研究への応募 をお考えの場合には、委託研究の研究成果発表会にもぜひご参加ください。
電気通信大では、試験期間中にも関わらず、初日には32名、2日目には17 名の参加がありました。また、東京理科大でも28名が参加し、教室は満員の 大盛況となりました。
電気通信大で実施した遺伝子情報処理研究のデモや東京理科大での並列定理証 明器 MGTP のデモも熱心な見学者を集め、高い関心が寄せられていました。
今後とも、IFS講習会は続けてまいりますので、IFS講習会の開催ご希望の場合 には、
研究所長 内 田 俊 一 昨年10月1日に発足した先端情報技術研究所(AITEC)の活動も軌道に のり、皆さんにその活動の速報版「AITEC NEWS」をお届けできるまで になりました。 AITECは、2つの役割を期待されています。その一つは、第五世代プロジェ クトの具体的な成果であるICOTフリーソフトウェア(IFS)をさらに普 及させ、実用化していこうという「IFSの普及・育成」の事業の実施です。 もう一つは、将来の情報技術がどのような方向に向かうかの調査研究を行う 「技術調査事業」です。 AITECは発足とともに、金杉橋の芝東京海上ビルにオフィスをおき、IC OTからIFSの普及・育成事業を引き継ぎ、IFSの配布、保守をとぎれな く継続したほか、大学においてKLIC講習会なども実施してきました。 この間にも、KLICを初めとするIFSのユーザは増え続け、バグ修正や新 機種への移植、種々のコンサルテーションなどが求められ、随時実施してきま した。 また、そのほかのIFSに関する研究会や、それらの改良、拡張など についての検討会も徐々に立ち上がりつつあります。 これらの作業は、大学に移ったり、メーカに帰社したICOT OBの指導を うけ、AITEC職員や外注のソフトウェア技術者が実施しています。 このように、第五世代コンピュータ技術をさらに発展させるネットワーク上の 仮想研究所を作ろうという構想の一部が、徐々に実現しつつあります。AI TECは、その「おへそ」としての役割を果たしはじめています。 また、IFSの普及・育成事業では、今年度から4年計画で、「IFSの拡大・ 再生産」のプロジェクトを開始しました。 これは、大学の先生方にIFSを 発展させるようなソフトウェアを作る研究を委託し、それを公開してもらって、 IFSを太らせていこうとするものです。 今年度は、準備の都合もあり、ICOT OBや従来第五世代プロジェクトに ご協力いただいた先生方を中心に、応募して頂き選考させていただきましたが、 これからは徐々に、その範囲を拡大していきたいと思います。 応募していただいたソフトウェア作りのテーマのどれを採用するかは、「オー プン アンド コンペティティブ」の原則にもとづき、約40名の査読者の評価 をもとに、渕先生を委員長とする10名の審査委員会で議論し、決定しました。 採用に際しては、できてくるソフトウェアがさらに多くの人に使われる可能性 が高いか否かという実用性重視で評価しています。 マニュアル等のドキュメ ンツも重視されます。 1年計画と2年計画の提案がありますが、当初の提案にそった進捗になってい るか否かを年度末に発表会を開いて評価し、はかばかしくないものは、1年で 打ち切り、新規の応募と入れ替えることも考えています。 平成7年度分については、27件の応募のうちから、22件を採用しました。 どのようなテーマが採用になったかは、AITECのWWWで公開しております。 Internet Addressは、http://www.icot.or.jpで、当分の間、 ICOT時代と変りません。 平成8年度も予算次第ではありますが、追加募集予定ですので、興味ある方は、 WWWを覗いたり、年度末の発表会に出席し、どんな提案が望まれているか見 て、ぜひ、応募してみてください。 また、そのほか、KL1によるプログラミング・コンテストの開催なども検討 中です。現在、汎用並列マシンは、並列サーバや小規模な超並列マシンとして、 普及しつつありますが、まだ、その普及は不十分で、使えるマシンが少ないか と思いますが、将来をみつめ、その実施を検討しております。 以上、IFSの普及・育成事業に関しては、ほぼ、当初の予定軌道にのり、こ れから、テーマごとのWGや各種のシンポジウムなどを開催していき、皆さん との協力関係を密にして行きたいと思っております。 これまでおつきあいい ただいた方々も、ぜひ、周囲の方々をお誘いただき、にぎやかに活動していき たいと思っております。 AITECのもうひとつの役割である先端情報技術の技術調査事業については、 現在、MITIや関連メーカの関係者が中心となり、その詳細を検討中です。 近年、Internetの急速な普及や、その上でマルチメディア技術の新た な展開がおこり、社会構造の一部を変革しそうな勢いをみせています。 また、従来、特別の用途向きの専用マシンと考えられていた超並列マシンが、 大量の原データを保管し、目的により高速に検索をおこなう中心的サーバ(デー タ・ウェアハウス)として、新たな位置付けを与えられるなど、情報システム の捉らえかたも急速に変化しつつあります。 情報技術が、メインフレーム中心に動いていた時代は、ひと昔前の話となりま した。パソコンから超並列マシン、さらにネットワークまで、そのハードウェ アをとっても、多様性にとみ、これにソフトウェアや応用を含めれば、その注 目すべき領域は無限に広がっていくように見えます。 このような新しい情報技術の将来動向を予測することは、きわめて困難ではあ りますが、まずは、米欧の政府支援プロジェクトにおける先端情報技術の動向 などを参考に、予測の基礎となるデータ収集などを開始し、徐々に政府の新政 策の立案や産業界の将来計画立案に有効な情報を提供できるようになればと考 えております。また、IFSの普及・育成の活動は、このような先端情報技術 の行方を見るセンサーの一つになることでしょう。 いずれにしても、AITECは、生まれたばかりの、小さな研究所で、IFS の普及・育成の事業にしても、技術調査事業にしても、ICOT OBやその 関係者の方々、関連メーカの研究者の方々などの協力が、事業の実施について 不可欠となっています。皆さんの協力により、得られた情報や、あらたに作成 される拡大IFSや、技術調査の結果など、有益な情報を整理して、順次、公 開していければと考えております。 米国においては、政府支援プロジェクトの成果の多くは、公開され、現在、I nternet上での公共財として、世界の自然科学技術のみならず人文科学 を含め、学問全域に大きな影響を与えはじめています。 AITECも、小さいながら、日本のみならず、世界にちらばっている第五世 代コンピュータプロジェクトに関連した世界の研究者達との交流を活発化し、 幾つかの得意とする研究分野をもち、皆さんに有益な情報を提供できる研究所 に成長していきたいものだと、夢みております。 AITEC NEWSは、このような皆さんとのコミュニケーションの一媒体 として、創刊しました。ご愛読のほどよろしく御願い申しあげます。
2. 平成7年度 IFS育成委託研究の募集と実施
先端情報技術研究所では、今年度より、IFSの普及・育成事業の一環として、 ICOTフリーソフトウェア(IFS)を改良したり、それを利用したり、さらに発展 させたりしたソフトウェアの開発をお願いする委託研究を開始しました。 このようにして開発されたソフトウェアをあらたにIFSの拡張部分として公開 してもらい、IFSの拡大・再生産をしようという試みです。今年度は準備の都 合もあり、ICOT OBで大学に移った方や従来第五世代プロジェクトでご指導い ただいた先生方を中心のテーマの募集を行ないました。 応募された27のテーマについて、48名の査読委員による評価を行ないました。 その結果を、渕東大教授を委員長とする10名の委員からなる審査委員会にかけ、 以下のような、22テーマを採択しました(順不同)。テーマの概要については、 WWWのAITECホームページ(http://www.icot.or.jp)でご覧ください。 1 「KLICの実行時システムの改良・拡張」 近山 隆 先生(東京大学) 2 「KL1のゴール・スケジューリング最適化」 中島 浩 先生(京都大学) 3 「KL1プログラミング開発支援ツール」 上田 和紀 先生(早稲田大学) 4 「単一化に基づく日英文法の開発および言語知識評価支援システム」 松本 裕治 先生(奈良先端科学技術大学院大学) 5 「一般化LR法を用いた頑健な並列構文解析に関する研究」 国藤 進 先生(北陸先端科学技術大学院大学) 6 「KL1によるPROGOLの並列化に関する研究」 古川 康一 先生(慶應義塾大学) 7 「高速仮説推論システム」 石塚 満 先生(東京大学) 8 「協調ロボットプログラミング言語/システム」 溝口 文雄 先生(東京理科大学) 9 「帰納的な並列記号処理のためのプログラミング環境の開発」 佐藤 泰介 先生(東京工業大学) 10 「集合制約ソルバー」 佐藤 洋祐 先生(立命館大学) 11 「並列処理による低電力LSI用シリコンコンパイラ」 瀧 和男 先生(神戸大学) 12 「膜タンパク質立体構造予測のためのタンパク質判別・二次構造決定システムの 開発と公開」 美宅 成樹 先生(東京農工大学) 13 「並列論理型言語を用いた最尤法による分子進化系統樹作成プログラムに 関する研究」 国藤 進 先生(北陸先端科学技術大学院大学) 14 「演繹オブジェクト指向データベース言語Quixote の実用化のための拡張 機能の研究」 横田 一正 先生(京都大学) 15 「KLIC上のMGTP処理系」 長谷川 隆三 先生(九州大学) 16 「高度問題解決のための推論プログラムの開発」 井上 克己 先生(豊橋技術科学大学) 17 「制約MGTPによる知識表現と自然言語処理への応用」 雨宮 真人 先生(九州大学) 18 「KLICによる並列アクティブデータベース処理の実現」 横田 治夫 先生(北陸先端科学技術大学院大学) 19 「異種分散協調問題解決系Heliosの協調作業への応用の研究」 横田 一正 先生(京都大学) 20 「EDR辞書を用いた日本語解析ツール」 田中 穂積 先生(東京工業大学) 21 「ゴールに依存した抽象化を用いた法的推論の研究」 原口 誠 先生(北海道大学) 22 「KLICの視覚的インタフェースに関する研究」田中 二郎 先生(筑波大学) 開発期間が、1年のものと2年のものがあり、毎年度末に、進捗の報告会を開催 し、評価していく計画です。今年度も、3月11日と12日の2日間行なう予 定です。また、それぞれの研究テーマの中間報告、年度末報告もWWWで公開し ていく予定です。 それぞれの研究テーマから、どのようなソフトウェアができてくるか楽しみで す。 また、関連記事を、AITEC NEWSの次号以降で、ご報告する予定です。 なお、先端情報技術研究所では、来年度以降もこの委託研究を続けてまいりま す。来年度、委託研究にご興味のおありの方は、