参考資料1.第五世代コンピュータプロジェクトの概要


本小冊子は、「第5世代コンピュータとは」から解きほぐし、図、表を交えて、本プロジェクトの開発計画等を分かり易く解説してます。

【項目】

  1. 第5世代コンピュータとは
  2. 第5世代コンピュータの開発計画
  3. 研究開発課題と進捗状況
  4. ICOT組織の概要
  5. 付録

【概要】

「1.第5世代コンピュータとは」では、
  1. 第5世代コンピュータの開発とその背景
  2. 90年代のニーズに応える第5世代コンピュータの機能
  3. 第5世代コンピュータの適用例とその波及効果
  4. 海外のコンピュータ研究開発プロジェクト
により、第5世代コンピュータを分かり易く説明しています。

まず、「1.第5世代コンピュータの開発とその背景」では、「i.将来のコンピュータ・ニーズへの対応」として、

  • 人間の言葉でコンピュータを利用(自然言語処理)
  • 意志決定・知的活動(事務、研究開発作業等)のサポート
  • ソフトウェアの生産性向上
が挙げられ、 「ii.現在のコンピュータ方式の限界」として、
現在のコンピュータの限界を要約すると、何をしたらよいかがあらかじめ判っていなくて、各局面の複雑な状況を理解したうえで自分で選択しながら進まなくてはならない、といった種類の仕事に向いていない
と述べられています。

しかし、1990年代の社会で要請される新しい応用は、このような性格の知的活動をコンピュータに要求することになります。そして、コンピュータ上でそのような活動を実現する一つの方法として、人工知能の研究がありますが、現在のコンピュータ上では上述の限界のために、十分な研究開発が行えません。

第5世代コンピュータは、このような現在のコンピュータの欠点をカバーするものであると説明されています。

「2.90年代のニーズに応える第5世代コンピュータの機能」では、第5世代コンピュータの位置付けが説明されています。(図2参照)

また、第5世代コンピュータの4つの基本機能:

  1. 問題解決・推論機能
  2. 知識ベース管理機能
  3. 知的インタフェース機能
  4. 知的プログラミング機能
が説明され、これらの機能実現のため、それぞれのハードウェア・アーキテクチャ技術、ソフトウェア・エンジニアリング技術、人工知能技術の研究開発が行われることが述べられています。(図3参照)

「3.第5世代コンピュータの適用例とその波及効果」では、 第5世代コンピュータの適用例として表1が示され、図4に示すような、産業・社会のあらゆる分野への波及効果が期待されています。

「4.海外のコンピュータ研究開発プロジェクト」では、 表2に海外主要国の先端的コンピュータの研究開発プロジェクトがまとめられています。


「2.第5世代コンピュータの開発計画」では、
  1. 第5世代コンピュータの狙い
  2. 第5世代コンピュータのアプローチ
  3. 第5世代コンピュータのイメージ
  4. 第5世代コンピュータの開発ステップ
により、本プロジェクトの開発計画が説明されています。

「1.第5世代コンピュータの狙い」では、 第5世代コンピュータ・プロジェクトの最終目標

1990年代の新しい応用に耐えうるような、幅の広い知的能力を備えたコンピュータを実現すること
であることが述べられています。

また、この目標を具体的にブレークダウンしたものとして、

  • 知識情報処理(KIPS)の実現
  • 複雑で大規模なプログラミング技術の確立
  • 高度並列処理の実現
が挙げられています。

「2.第5世代コンピュータのアプローチ」では、 第5世代コンピュータの目標である、コンピュータによる知的活動を実現するために、知的活動の原理として、述語論理が採用された事が説明され、論理の基本的な仕組みに推論があり、推論は推論規則に従って行なわれることが説明されています。この時、プログラムを論理の形式で記述し、それを推論として実行する論理プログラミングを採用すると、プログラムの大部分が知識となり、並列処理も可能である事が説明されています。以上の関係が図6にまとめられています。

「3.第5世代コンピュータのイメージ」では、 図7で、第5世代コンピュータの最終目標像を示しています。

「4.第5世代コンピュータの開発ステップ」では、

  • 研究開発期間は、前期3年、中期4年、後期3年の計10年間。
  • 前期の研究開発は、基本的要素技術の開発。
  • 中期の研究開発は、前期成果を基礎とし、サブシステムを開発。
  • 後期の研究開発は、第5世代コンピュータの最終的な原型を完成。
  • 前期から中期にかけて、研究開発のためのツールの開発。
などが述べられ、図8に開発ステップを図示しています。


「3.研究開発課題と進捗状況」では、
  1. 前期の研究開発課題
  2. 前期の主な成果
  3. 中期の研究開発課題
により、前期と中期の研究開発課題、前期の主な成果の述べられています。

「1.前期の研究開発課題」では、 前期3年間で実行されている研究開発の課題項目と、それらの関係をまとめたものが、図9に示されています。

また、前期の基本的な研究開発項目が:

  1. 推論サブシステム
  2. 知識ベース・サブシステム
  3. 基礎ソフトウェア・システム
  4. ソフトウェア開発用パイロット・モデル
の4つであることが述べられ、それぞれがさらにいくつかのテーマに分かれ、詳しい開発計画は付録−1で示されています。

「2.前期の主な成果」では、 上記4つの「前期の基本的な研究開発項目」に対する、主な成果の項目が挙げられています。特に、逐次型推論マシン・ハードウェア(PSI)と並列型関係データベース・マシン(Delta)の写真を見ることができます。

「3.中期の研究開発課題」では、 中期は、前期の基本技術開発成果を実用面から実証する重要な時期であるという、第5世代コンピュータ・プロジェクトにおける中期の位置付けが述べられています。

また、中期研究開発の中心課題は、

前期の基本技術開発成果を統合し、推論技術、知識ベース技術として確立し、さらに実際に小規模サブシステムを開発すること
が説明され、さらに、
  1. 基礎ソフトウェア実証システムの試作
  2. 並列ソフトウェア開発用マシンの開発
も行なわれることが述べられています。

中期研究開発の具体的な課題は、

  1. 推論サブシステム
  2. 知識ベースサブシステム
  3. 基礎ソフトウェアシステム
  4. 開発支援システム
に対して、コンパクトに述べられています。詳しい説明として、付録−2にも「中期研究開発計画の内容」が用意されています。


「4.ICOT組織の概要」では、
  1. 設立
  2. 組織
  3. 事業活動
により、ICOT組織概要が説明されています。

「1.設立」では、ICOTは昭和57年4月に設立され、6月に研究所が開設されたことが述べられています。

「2.組織」では、ICOTの組織は、現在67名の研究員からなる研究所と10名のスタッフからなる事務局から構成されていることが述べられ、図10にICOTの組織が示されています。

「3.事業活動」では、

  • 1)第5世代コンピュータの研究開発
  • 2)先端的コンピュータに関する調査研究
  • 3)第5世代コンピュータに関する国際交流
  • 4)事業成果の普及・広報
  • 5)FGCS国際会議の開催
の事業活動が報告されています。

「1)第5世代コンピュータの研究開発」では、

  • 研究開発事業は、通商産業省からの委託を受けて実施。
  • 委託費は、
    昭和57年度昭和58年度昭和59年度昭和60年度昭和61年度
    約4億円約27億円約51億円約48億円約55億円
    となっている。
  • 研究開発の実施は、
    1. 研究員等からなるプロジェクト・チーム
    2. 外部有識者等を含めたプロジェクト推進委員会およびワーキング・グループ
    を設け、1.が研究開発を、2.がアドバイスや意見交換を行なっている。
  • 研究員等を欧米の先端的研究機関に派遣し、あるいは、海外の専門家を短期間招聘する研究交流を行なっている。
と述べられています。図11には委員会構成図が示されています。

「2)先端的コンピュータに関する調査研究」では、

  • 先端的コンピュータに関する内外の技術開発動向と、その適応分野、波及効果に関する調査。
  • 専門家からなる調査委員会を設置して、調査を実施。
と述べられています。

「3)第5世代コンピュータに関する国際交流」では、

  • 欧米主要国へわが国の大学、研究者等専門家の派遣
  • 英文技術機関誌(ICOT Journal, Technical Report等)の作成と提供
という事業を実施していると述べています。

「4)事業成果の普及・広報」では、

  • 年1回の成果報告会(シンポジウム)の開催
  • ICOT研究論文・研究速報・ICOTジャーナル等の出版物の発行
を行なうことによって、研究開発の成果の普及と広報を積極的に行なっていることが述べられています。

「5)FGCS国際会議の開催」では、

  • 1981年10月に第5世代コンピュータ国際会議を開催。
  • 1984年11月に国際会議・FGCS'84を開催。
という実績が紹介され、技術的展望等についての熱心な討議や、 先端的技術開発プロジェクトの意義、研究成果などに関し意見交換が 行なわれたことが報告されています。


「付録」では、
  1. 前期研究開発計画の内容
  2. 中期研究開発計画(案)の内容
という2つの付録が付いています。

「1.前期研究開発計画の内容」では、研究開発項目:

  • 推論サブシステム
    • 機能メカニズム別モジュール
    • 動作実験用シミュレータ
    • 超LSI化技術
  • 知識ベースサブシステム
    • 機能メカニズム別モジュール
    • 動作実験用シミュレータ
    • 超LSI化技術
  • 基礎ソフトウェアシステム
    • 5G核言語
    • 問題解決・推論ソフトモジュール
    • 知識ベース管理ソフトモジュール
    • 知的インタフェースソフトモジュール
    • 知的プログラミングソフトモジュール
  • ソフトウェア開発用パイロットモデル
に関する、前期計画の内容が表になっています。

「2.中期研究開発計画(案)の内容」では、研究開発項目:

  • ハードウェア・システム
    • 推論サブシステム
    • 知識ベース・サブシステム
  • 基礎ソフトウェア・システム
    • 5G核言語
    • 問題解決・推論ソフトウェア・モジュール
    • 知識ベース管理ソフトウェア・モジュール
    • 知的インタフェース・ソフトウェアモジュール
    • 知的プログラミング・ソフトウェアモジュール
    • 基礎ソフトウェア実証システム
  • 開発支援システム
    • 並列ソフトウェア開発用マシン・パイロットモデル
    • 開発支援用ネットワークシステム
に関する、中期計画の内容が表になっています。