ICOT Free Software ニュースレター

					平成5年12月1日
						第7号



[Table of Contents]




[「ICOT無償公開ソフトウェア」の追加公開のお知らせ]


  これまでICOTは77本のソフトウェアをICOT無償公開ソフトウェアとして公開
してきました.
  今回,さらに加えて7本のソフトウェアを公開することとなりました.その中
には,逐次版のKLICの第1版があります.前回,平成5年の6月に処理方式検討用
処理系を公開しましたが,これは方式検討用ということもあり,機能面等で一
般ユーザには使いにくい点がありました.今回公開する処理系は汎用機上のKL1
処理系としてより機能を充実させ,一般ユーザの方にも使いやすいものになっ
ています.
  その他にも,知識表現言語QuixoteをKLIC上で動作可能とする処理系や,
Quixoteをより簡便に汎用機上で動作させるためのC言語で記述した処理系,あ
るいはPrologで記述した定理証明器MGTP,遺伝子情報処理のためのツールなど
も公開することができるようになり,準備が整いしだい公開して行きます.


(1)追加公開ソフトウェアの名称

  今回追加されるソフトウェアは, 下記の通りです. 

記号処理分野: 1本
- - ------------------------------------------------------------------
78   並列論理型言語 KL1 の汎用機上の処理系: KLIC 第1版
    

知識処理分野 (知識表現,知識ベース,制約):  2本
- - ------------------------------------------------------------------
79  知識表現言語: Quixote KLIC版
80  知識表現言語: μ-Quixote

    
知識処理分野 (問題解決,高次推論,定理証明): 2本
- - ------------------------------------------------------------------
81  並列定理証明器: MGTP/G Prolog版
82  並列定理証明器: MGTP/N Prolog版

    
応用実験分野: 2本
- - ------------------------------------------------------------------
83  Quixoteを用いた蛋白質特徴知識ベースと検索システム
84  階層的記述法を用いた蛋白質の立体構造予測システム


(2)追加公開ソフトウェアの概要説明

1. 並列論理型言語 KL1 の汎用機上の処理系: KLIC 第1版

      「並列論理型言語 KL1 の汎用機上の処理系 KLIC 第1版」は,並列論理
      型言語 KL1 を,汎用機上で動作可能とするシステムです.ただし,本
      システムは汎用機上の動作を目的とする処理系であるため,従来PIM上の
      KL1言語処理系が持っていた機能すべてを,本システムで実現するわけで
      はありません.たとえば従来の処理系でPIMのためのオペレーティングシ
      ステムPIMOSの機能を利用した部分は,この処理系ではそのままでは動作
      しません.しかし,KLICを利用することで,KL1プログラムを,ICOTにあ
      る並列推論マシンを使わなくても,手近のUNIXワークステーションなど
      で利用することができるようになります.さらにKLICでは,KL1で記述さ
      れたプログラムをお手持ちのCなどで記述されたプログラムと組み合わせ
      てお使いになることもできます.

      このプログラムは以下の部分からなります.

      ・KL1言語のサブセット言語のためのC言語へのコンパイラ

      ・C言語によるプログラムにコンパイルされたプログラムについてその動
        作環境を提供する実行時ライブラリ


     また,本プログラムは,以下のような特徴を持っています.

      ・KL1プログラムを汎用計算機上で動作させることが出来ます.

      ・KL1プログラムを一旦C言語のプログラムへと翻訳し,さらにCコンパイ
        ラとCのライブラリを用いて実行可能な形式へと変換するような実行方
        式をとっています.

      ・コンパイル時に C 言語を介することにより,ハードウェア・アーキテ
        クチャによらず,UNIX オペレーティング・システムの基本機能が動作
        する計算機システムになら容易に移植でき,異なるアーキテクチャ上
        での性能を評価できます.したがって,UNIXワークステーションのみな
        らず,たとえばパーソナルコンピュータでKL1を実行することもできる
        ようになります.

      ・一旦 C 言語を介する処理方式であるにも関わらず,機械語を直接出力
        する方式に比して遜色ない高い速度・メモリ性能を持っています.

      ・既に公開済みの「KL1 言語処理方式検討用処理系」から得られた知見
        に基づき,KL1のより多くの言語仕様を,より効率良く実行する処理系
        となっています.

2. 知識表現言語: Quixote KLIC版

      「知識表現言語: Quixote KLIC版」は,1992年にICOT無償公開ソフトウェ
      アとして公開された「知識表現言語: Quixote 」を,汎用機上で動作す
      るKL1言語処理系であるKLICを用いて,汎用機上で動作可能とするもので
      す.したがって,従来Quixoteによって記述されたプログラムを動作させ
      るためには並列推論マシンPIMが必要でしたが,KLIC処理系とこの処理系
      を使うことで,汎用機上でQuixoteプログラムを動作させることができる
      ようになります.

      本システムは,KLICで動作するKL1言語で記述された部分とC言語を用い
      て記述された部分からなるため,その動作には,KLIC処理系およびC言語
      処理系(ユーザインタフェースとしてGNU-EmacsおよびX-Window)が必要で
      す.

      知識表現言語: Quixoteは,論理とオブジェクト指向,そして制約という
      概念を融合させた,演繹オブジェクト指向データベースのための言語と
      して研究開発された言語で,従来の知識表現言語と比較して,より複雑
      な概念をより自然にかつ少ない記述量で表現することが可能で,多くの
      知識情報処理システムに適しています.

      このプログラムは,以下の特徴を持っています.

     ・ 知識表現言語: Quixote KLIC版処理系は,C言語で記述された,主にユー
        ザインタフェースや入出力まわりを担当するクライアント部と,KLICで
        記述された,主に推論処理を担当するサーバー部とから構成されていま
        す.

     ・ 知識表現言語: Quixote KLIC版を用いることで,複雑な概念を伴う知
        識を,より自然かつコンパクトに表現できます.1992年にICOT無償公
        開ソフトウェアとして公開されている知識表現言語: Quixote は,す
        でにICOT内外のいくつかの応用に利用されはじめており,本プログラ
        ムは,これをさらに使い易い環境で提供するものです.

3. 知識表現言語: μ-Quixote

      「知識表現言語: μ-Quixote」は,1992年にICOT無償公開ソフトウェア
      として公開された「知識表現言語: Quixote 」をより簡便にかつ高速に
      動作させるため,その機能を縮小し,C言語のみを用いて汎用機上で動作
      可能とするものです.したがって,Quixote処理系,あるいは上のKLIC版
      処理系では動作するプログラムもこの処理系では動作しないことがあり
      ます.しかし,中心的機能は利用可能であり,さらにより軽い処理系と
      してあるため,動作効率はより良いものとなっています.この意味で,
      手軽にQuixoteプログラミングを行うのには最適な処理系です.またC言
      語処理系を使うことで,たとえばパーソナルコンピュータ上で動作させ
      ることもできます.

      本プログラムは,Quixoteの処理において効率面,実装面においてボトル
      ネックとなっていた機能:

      ・ 複数解のマージ
      ・ データベース機能
      ・ 継承の一部(属性継承)

      を削除,あるいは縮小することで,効率の良く,軽い実装を目指したも
      のです.

      本プログラムにより,Quixoteの知識表現言   語としての大きな特徴で
      ある,包摂関係による束および制約,仮説生成,仮説推論,モジュール
      機能を汎用機上で容易に取り扱うことができます.


4. 並列定理証明器: MGTP/G Prolog版

      「並列定理証明器 MGTP/G Prolog版」は,1992年にICOT無償公開ソフト
      ウェアとして公開された,KL1言語を用いた「並列定理証明器 MGTP」を,
      汎用機上で利用可能とするためにPrologを用いて書き直したものです.
      したがって,並列推論マシンPIMで動作するMGTPと比較して,効率的には
      劣りますが,より簡便な環境でMGTPを利用することができます.

      本プログラムは,公理がすべて基底項で表される,すなわち公理がすべ
      て列挙可能であるような,たとえばデータベースのような状況における
      定理を,前向き推論に基づいて証明するもので,MGTPのグラウンド版と
      呼ばれるものです.定理はPrologの述語にコンパイルされ,Prologのプ
      ログラムとして,証明が行なわれます.

5. 並列定理証明器: MGTP/N Prolog版

      本プログラムは,1992年にICOT無償公開ソフトウェアとして公開された
      「並列定理証明器: MGTP」や,あるいは前述の「並列定理証明器: MGTP/G
      Prolog版」と比較して,扱うことの出来る公理の範囲を拡張した定理証
      明器であり,さらに汎用機上で利用できるようにPrologを用いて書き直
      したものです.その意味で,「並列定理証明器: MGTP」の機能拡張版に
      なっています.ただし,Prolog版ですから,KL1で記述した場合のような
      並列処理はできません.

      本プログラムは,公理に変数を含むような,たとえば一般の数学におけ
      る定理を証明するもので,MGTPのノングラウンド版と呼ばれるものです.
      定理は,Prologの述語にコンパイルされ,Prologのプログラムとして,
      証明が行われます.

6. Quixoteを用いた蛋白質特徴知識ベースと検索システム

      本プログラムは,1993年3月にICOT無償公開ソフトウェアとして公開され
      た「並列反復法によるマルチプルアラインメント」や「知識を用いたア
      ラインメントの修正プログラム」といったシステムと一緒に使用するこ
      とで,DNAの核酸配列や蛋白質のアミノ酸配列について,特徴パターンを
      抽出し,それを処理するための一連の手段を提供するものです.

      DNAの持つ核酸配列や蛋白質のアミノ酸配列には,生物学上の特定の性質
      に密接に関連した,モチーフと呼ばれる部分があります.また,これら
      モチーフの間には,たとえばあるモチーフを含むような配列には別のモ
      チーフが含まれる場合が多いといったような,ある種の関連があり,そ
      れを特徴知識ベースとしてまとめることができます.

      本プログラムは,上に述べたような生物学的知識を,知識表現言語Quixote
      を用いて記述し,知識ベース化したものです.それにより,ある配列が
      持っているであろうモチーフの検出や,あるモチーフと生物学上の特定
      の性質との関連についての推測を確認したりするための方法を提供して
      います.


7. 階層的記述法を用いた蛋白質の立体構造予測システム

      本プログラムは,立体構造が既知の蛋白質の局所構造,中規模構造,お
      よび大規模構造の間の階層的な特徴に着目し,これらの構造とアミノ酸
      配列との関係を抽出し,立体構造が未知の蛋白質の立体構造を予測する
      ためのものです.

      蛋白質の立体構造は,その蛋白質の機能を知る上で,欠かすことのでき
      ない重要な情報であり,その予測には多くの手法が取られてきたが,予
      測精度は必ずしも十分なものになっておらず,より精度の高い予測手法
      が望まれています.

      本プログラムの動作には,PIM上のKL1処理系,C言語の処理系,および
      Silicon社のグラフィックワークステーションが必要です.


  なお, これら6本のICOT無償公開ソフトウェアについては, 「ICOT無償公開ソ
フトウェア一覧:追補版」をご覧ください.また,これまでお配りしてきた,
「ICOT無償公開ソフトウェア一覧」,「一覧-II」,および今回の「追補版」
を合わせた,「ICOT無償公開ソフトウェア総覧」を用意しました.必要な方は,
本ニュースレター末尾の担当窓口まで,電子メールあるいはファックスでご請
求下さい.



[ユーザーグループ結成について]


  ICOT 無償公開ソフトウェアとして公開されているソフトウェアに関し, ユー
ザグループを結成し, そのソフトウェアに関する研究, 改良, 改版等を行いた
いとお考えの方がおられましたら, 本ニュースレター末尾の無償公開ソフトウェ
ア担当まで, メールでお知らせ下さい.

  お申し出の内容を, メール, ニュースレター等で告知の上, それに対する反
応を連絡します.
  また, 改版を行った結果, 他のユーザにも有用であると判断され, さらにご
希望があれば無償公開ソフトウェアのFTPサーバーに登録します.



[cu-Prologのユーザーグループのお知らせ]


  制約論理型言語cu-Prologは,UNIX上で動くIFSオリジナル版と,中京大学の
白井英俊先生により移植された Macintosh版および MS-DOS版とがあります.
  cu-Prologは自然言語処理ツールとしてだけでなく,C言語によるソースつき
のコンパクトなProlog処理系としても国内外で利用されているようです.利用
者も,大学院生から,自然言語処理や制約論理型言語の研究者と多岐にわたっ
ています.
  このたび,cu-Prolog各版のバージョンアップ等の情報を提供し,さらに制約
ベース文法,制約論理型言語の自然言語処理への応用といった分野の情報交換
を行なうため,cu-Prologユーザーズグループ(メイリングリスト)を作成しま
した.アドレスは   cup@icot.or.jp   です.メイリングリストに登録ご希望
の方は  cup-request@icot.or.jp  までメイルをお願いします.現在の登録者
は26名(国内15名, 国外11名)です.



[IFSセカンドサイトのご案内]


  以前お知らせしたように,IFSはSICS (スウェーデン計算機科学研究所)のマ
シンにも置かせていただいておりましたが,このたび、SICSに加えて,さらに
ドイツのGMD,アメリカのオレゴン大学のご好意により、この2ケ所のサイトに
IFSを置かせていただくことになりました.ディレクトリ構成は,ICOTのサー
バマシンと同一です.

それぞれ3つのサイトのFTPサーバは,

	SICS:		ftp.sics.se
	GMD:		ftp.gmd.de
	オレゴン大学:	ftp.cs.uoregon.edu

です. ただし, これらのFTPサーバはそれぞれ外国にありますので, ICOTかあ
るいはこれらのサイトのどちらか近い方へのアクセスをお願いします. アクセ
ス方法は, ICOTへのアクセス方法と, サーバの名前を除いて同じです.



[Common ESPの問い合わせ先]


  ICOT無償公開ソフトウェアの中には, UNIX上のESP言語であるCommon ESPで動
作可能なものがあります. このCommon ESP言語は, ICOT無償公開ソフトウェア
には含まれていません. Common ESPに関する問い合わせは, 下記(株)AI言語研
究所までお願いします. 


    〒247  神奈川県鎌倉市大船 5-1-1
           三菱電機株式会社 情報システム研究所 内
           株式会社 AI言語研究所
           研究管理部

           e-mail: cesp-request@air.co.jp
           FAX: 0467--48--4847



[ICOT無償公開ソフトウェア担当窓口]


  本ソフトウェアに関するお問い合わせ, ご連絡などは原則としてe-mailでお
願いします. また本ニュースレターはe-mailで配布しておりますので, 新規購
読ご希望の方, バックナンバーをご希望の方は, e-mailアドレスを次の宛先ま
でご連絡ください.

                  ifs@icot.or.jp

  なお, e-mailがご利用になれない場合, お問い合わせの節は以下の宛先まで
郵便またはファックスでご連絡ください.

    〒108  東京都港区三田 1丁目4番28号
           三田国際ビル 21階
           (財) 新世代コンピュータ技術開発機構
           無償公開ソフトウェア担当

           FAX : 03--3456--1618

  皆様のお近くに, ICOT無償公開ソフトウェアに興味をお持ちの方がいらっしゃ
いましたら, 上記窓口までご連絡ください. 同一覧を郵送し, 今後, 本ニュー
スレターを継続してお送りします.


www-admin@icot.or.jp