ICOT Free Software ニュースレター

平成5年8月6日 第6号



[Table of Contents]




[「ICOT無償公開ソフトウェア」の追加公開のお知らせ]


  ICOTはこれまでに計71本のソフトウェアをICOT無償公開ソフトウェアとして
公開してきました. このたび, 新しいソフトウェアを6 本, ICOT無償公開ソフ
トウェアとして追加することになりました. その中には,  UNIX上でKL1プログ
ラムを動作させるためのプログラミング環境 KLICの最初の版や, KL1上のプロ
セス指向の高水準言語の処理系, 遺伝子情報処理のためのいくつかの便利なツー
ルなどがあります.


(1)追加公開ソフトウェアの名称

  今回追加されるソフトウェアは, 下記の通りです.


記号処理分野: 3本
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72  KL1言語処理方式検討用処理系
    /ifs/symbolic-proc/unix/pkl1.tar.Z      130871 バイト

73  AYA言語処理系
    /ifs/symbolic-proc/pimos/aya.tar.Z      235617 バイト

74  KL1負荷分散ライブラリ
    /ifs/symbolic-proc/pimos/ldlib.tar.Z    123055 バイト


応用実験分野: 3本
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75  並列反復法によるマルチプルアライメント
    /ifs/exper-apps/pimos/multialign.tar.Z  178138 バイト

76  知識を用いたアライメントの修正プログラム
    /ifs/exper-apps/pimos/editalign.tar.Z   710383 バイト

77  タンパク質立体構造表示ツール Protein-View
    /ifs/exper-apps/unix/proview.tar.Z      997633 バイト     


(2)追加公開ソフトウェアの概要説明


1.KL1言語処理方式検討用処理系

      KL1言語で書かれたプログラムをUNIXマシン上で動作可能とするプログ
      ラミング環境KLICの最初の版がリリースされました. この処理系を使う
      ことで, KL1プログラムがUNIXの上で動作します.

      この処理系はPrologで記述されていますので, エジンバラPrologとコン
      パチブルなProlog処理系があれば, 実行可能です. このコンパイラは,
      KL1プログラムをCのプログラムにコンパイルします. このオブジェクト
      プログラムをKLIC実行時ライブラリおよびUNIX提供のライブラリとリン
      クし, Cコンパイラでコンパイルして, 実行可能コードを作ります.

      したがって, エジンバラPrologないしそれとコンパチブルなProlog処理
      系, CコンパイラのあるUNIXシステムであれば, 原則としてKL1プログラ
      ムを走らせることが可能となります. また, UNIXワークステーションで
      なくとも, たとえばパーソナルコンピュータのような, PrologとCが動
      作可能な環境があれば, KL1プログラムを実行し, 実験を行うことがで
      きます.

2.AYA言語処理系

      AYA はKL1の上位言語で, 並列プログラムを書く場合に, KL1で直接書く
      よりも書きやすくまた読みやすくなっています. プログラマのミスによ
      るバグがはいりにくい言語でもあります. はいってしまったバグを早く
      に発見できるようにもしています.

      AYA では, プロセスとプロセス間のメッセージ通信をもとにしたプログ
      ラムがそのまま記述できます. プロセスは複数の状態を持つこともでき
      ます.  プロセスにとっての入力と出力のモードも導入しました. また, 
      通信に使用する変数やストリームの後始末を自動的に行なうようにもし
      ています. 

3.KL1負荷分散ライブラリ

      KL1プログラミングにおける, ネットワーク生成, プロセスマッピング, 
      動的負荷分散といった典型的な負荷分散方式を実現するためのユーティ
      リティ群です.

      このライブラリでは, 典型的な負荷分散方式のテンプレートを提供しま
      す. これを, ユーザの書いた問題解法部分, つまり問題に依存した部分
      と結合することで, 応用問題を解く並列プログラムが出来上がります.

4.並列反復法によるマルチプルアライメント

      本プログラムは, タンパク質配列の類似部分を揃える, マルチプルアラ
      イメントと呼ばれる課題を解決するものです. 解析アルゴリズムには, 
      ダイナミックプログラミングによる部分的な最適化を, 反復的に行う反
      復改善法を並列化して実装しています.

      具体的には, 反復の各段階で, 可能な部分的最適化を複数, それぞれ各
      要素プロセッサで並列に行い, そのうちで一番評価の良い結果を採用す
      る, 一種の山登り法をとっています. このプログラムは, KL1で書かれ
      ており, PIM上で動作させることにより, 大規模のマルチプルアライメ
      ントの問題を高品質に解決できます. たとえば, 80文字の長さの配列20
      本のマルチプルアライメントが, 要素プロセッサが256台構成のPIM/m上
      で, およそ10分で解決できます.

      解決結果は生物学的分析を加えるのに足る, 信頼性の高いものとなって
      います. また, 本プログラムの動作の挙動を解析することにより, 並列
      問題解決や並列負荷分散の観点から, 貴重な知見が得られます. 

5.知識を用いたアライメントの修正プログラム

      本プログラムは, タンパク質配列の類似部分を揃えるマルチプルアライ
      メントという課題の解析結果を, 生物学的な観点から, より意義深い結
      果に修正するものです. 生物学者がアライメントを修正するにあたって, 
      どのような方策を適用するかなどの知識を抽出するためのインターフェー
      スツールも合わせ持っています.

      マウスを用いて, マルチプルアライメントが編集でき, 指定した部分配
      列の制約付き自動アライメント機能(必ず揃えたい部分を指定できる)を
      持っています. このツールはC言語, Xlib, OSF/Motif で書かれ, ユー
      ザが注目する部分のアライメントを操作性良く行うことができます.

      部分アライメントの処理は, KL1で書かれたプログラムを呼びだし, そ
      の結果を画面に反映させるかたちで実行されます. またアライメントエ
      ディタとして, マウスによるギャップの挿入削除や, モチーフ検索など
      の機能を持っています. 

6.タンパク質立体構造表示ツール Protein-View

      グラフィックスワークステーションを用いて, タンパク質の立体構造を
      表示するシステムです. このシステムはタンパク質の構造データベース 
      PDB(Protein Data Bank)のファイルを読み込み, それを立体記述言語 
      3D-Talk として出力するツール ProViewと, 3D-Talkを3次元立体表示
      する汎用3次元立体表示ツール 3D-View からなっています. 3D-Viewは
      タンパク質に限らず, ロボットの表示や, フライトシミュレーションな
      どにも対応できるようになっており, とくに, アニメーションが手軽に
      できるようになっています. 3D-Talkは, オブジェクト指向言語で, 構
      文は英語ににていて, 初心者でもわかりやすいものです. Pro-Viewはタ
      ンパク質構造の解析を行なうためのもので, Pro-Talkという3D-Talkの
      拡張された言語をもっています. このシステムを利用することで, タン
      パク質の折り畳みシミュレーションなどが手軽に可視化できます. 


  なお, これら6本のICOT無償公開ソフトウェアの追加に伴い, 「ICOT無償公
開ソフトウェア一覧-II」を発刊しました. この追加分のカタログご希望の方
は, 下記「ICOT無償公開ソフトウェア担当窓口」まで, メール, あるいはファッ
クス, 郵便にてご連絡ください.



[ユーザーグループ結成について]


  ICOT 無償公開ソフトウェアとして公開されているソフトウェアに関し, ユー
ザグループを結成し, そのソフトウェアに関する研究, 改良, 改版等を行いた
いとお考えの方がおられましたら, 本ニュースレター末尾の無償公開ソフトウェ
ア担当まで, メールでお知らせ下さい.

  お申し出の内容を, メール, ニュースレター等で告知の上, それに対する反
応を連絡します.

  また, 改版を行った結果, 他のユーザにも有用であると判断され, さらにご
希望があれば無償公開ソフトウェアのFTPサーバーに登録します.



[Common ESPの問い合わせ先]


  ICOT無償公開ソフトウェアの中には, UNIX上のESP言語であるCommon ESPで
動作可能なものがあります. このCommon ESP言語は, ICOT無償公開ソフトウェ
アには含まれていません. Common ESPに関する問い合わせは, 下記(株)AI言語
研究所までお願いします.


    〒247  神奈川県鎌倉市大船 5-1-1
           三菱電機株式会社 情報電子研究所 内
           株式会社 AI言語研究所
           研究管理部

           e-mail: cesp-request@air.co.jp
           FAX:    0467--48--4847



[ICOT無償公開ソフトウェア担当窓口]


  本ソフトウェアに関するお問い合わせ, ご連絡などは原則としてe-mailでお
願いします. また本ニュースレターはe-mailで配布しておりますので, 新規購
読ご希望の方, バックナンバーをご希望の方は, e-mailアドレスを次の宛先ま
でご連絡ください.

                     ifs@icot.or.jp

  なお, e-mailがご利用になれない場合, お問い合わせの節は以下の宛先まで
郵便またはファックスでご連絡ください.

    〒108  東京都港区三田 1丁目4番28号
           三田国際ビル 21階
           (財) 新世代コンピュータ技術開発機構
           無償公開ソフトウェア担当

           FAX : 03--3456--1618

  なお, 無償公開ソフトウェアの一覧については, 「ICOT無償公開ソフトウェ
ア一覧 (A4版142ページ)」, および「ICOT無償公開ソフトウェア一覧-II (A4
版16ページ)」をご覧下さい. もし, これらの冊子がお手もとに無い場合には, 
住所をご連絡いただければこちらから郵送いたします.

  また, 皆様のお近くに, ICOT無償公開ソフトウェアに興味をお持ちの方がい
らっしゃいましたら, 上記窓口までご連絡ください. 同一覧を郵送し, 今後, 
本ニュースレターを継続してお送りします. 

www-admin@icot.or.jp