平成9年度 委託研究ソフトウェアの中間報告

(19) KL1のスレッド実行の高速化

研究代表者: 中島 浩 教授
豊橋技術科学大学 情報工学系


研究テーマ、研究代表者:
(1)研究テーマ
KL1のスレッド実行の高速化

(2)研究代表者(氏名、所属、役職)
中島 浩、豊橋技術科学大学 情報工学系 教授

記述項目:
(1)研究進捗状況

本研究の目的は,昨年度までに行なった KL1 のスレッド化技法 を改良し,より高速な処理系を得ることにある。具体的には;

(a) スタック管理を中心としたスレッド内実行方式の改良
(b) スレッド粒度の制御を可能とするようなスレッド生成/スケジ ューリング方式の考案

の2項目を中心に研究を進める。

これまでに行なった研究は主に (a) に関するものであり,後述 するように goal stacking および environment stacking の各々に基づくスレッド内実行方式の検討がほぼ完了した。また 検討結果に基づき,比較的単純なベンチマークを用いて予備評価 を行なった結果,標準の KLIC に対して最大2倍以上という大幅 な性能向上が得られることが明らかになった。また environment stacking の優位性も明らかになった。

(b) については,スレッド粒度を静的/動的に把握する手法に関 する文献調査を中心に,検討を進めている。

(2)現在までの主な成果

前述のように goal stacking (GS) および environment stacking (ES) の各々に基づく,スレッド内実行の方式検討をほぼ完了した。
具体的な成果としては以下のものが得られている。

(1) GS において局所変数をスタック中に置くために新たに必要とな る操作の洗い出しと,各々の操作の実装手法の確定。

(2) ES における environment frame の構成,スレッド内制御移行 方式,スレッド間制御移行方式の各々に関する実装手法の確定。

また上記の検討結果に基づき,KLIC の標準配布パッケージに含ま れるプログラムを中心に9種のベンチマークを用いて,標準KLIC, GS, ES のそれぞれの性能を測定した。その結果 GS/ES のどちら も標準KLIC を上回り,最大では2倍以上の性能向上が得られるこ とが明らかになった。また ES の方が GS よりも高い性能を示す ことも明らかになった。

(3)今後の研究概要

これまでの検討結果に基づくスレッド内実行用のコードを生成す るために,コンパイラを修正する。なお ES よりも GS の方が, コンパイラの修正量が少ないため,少なくとも今年度に関しては GS の実装を行なう。また,検討が未完了であるスタック管理方 式については,検討を続行する。

(4)今年度目標成果ソフトウェアイメージ

改良型 GS に基づく解析系/実行系プロトタイプの実装。なお逐 次実行に限定する他,必要に応じて実装を簡易化するための制限 を加える。


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