(14) 制約処理系を利用した図形描画システム

研究テーマ、研究代表者：

（１）研究テーマ

制約処理系を利用した図形描画システム

（２）研究代表者（氏名、所属、役職）

田中　英彦、東京大学 工学系研究科・情報工学専攻　教授

記述項目：

（１）研究進捗状況

手書き入力から自動的に幾何学的制約を抽出し、それらの制約を 充足する図形を生成して提示するシステムPegasusを研究開発し ている。従来の描画エディタ上で種々の幾何学的制約を満たした 図形を描くためには、複雑な編集操作を組み合わせなければなら ず、特に初心者にとって困難な作業であった。本システムは手書 き入力と提示された候補の選択という単純な操作のみで幾何学的 な図形の描画を描くことを可能とするもので操作の負担を大幅に 低減することができる。 我々はこれまでにPegasusの基本的な仕様決定と整形アルゴリズ ムの設計、プロトタイプの開発とユーザテストを終え、最終的な プログラムの調整と機能の整備拡充をはかっている。

（２）現在までの主な成果

現在までに実装されているシステムによって、手書き入力と候補 選択という操作の組み合わせによって幾何学的図形を手早く描く ことが可能なことを確認した。
特にユーザテストでは、既存の描画エディタに比べてより短い時 間でより正確に多くの幾何学的制約を満たした描画が可能なこと が示された。実装の面では、制約抽出部と制約解消部を分離した 設計、および解を生成する過程で効率良く制約の組み合わせを行 なう制約解消系の複数候補生成アルゴリズムが実時間での整形処 理と複数候補の生成を実現していることを確認した。

（３）今後の研究概要

整形部の実装に関してまだ若干の不安定要素があるためその改善 を行ない、またアルゴリズムの改良によるさらなる高速化を行な っていく。手書き入力という曖昧な情報を扱うため、様々なパラ メータ(閾値)の微調整も実用的なソフトウェアとするに当たって 重要な作業である。さらに、ユーザテストの結果に基づいてイン タフェースの改良を行なう他、ファイルへの保存機能といったア プリケーションとしての機能を充実させていく予定である。

（４）今年度目標成果ソフトウェアイメージ

成果ソフトウェアは、PC/AT 互換機上で通常の Windows用描画 アプリケーションとして機能する。ユーザは、本システム上でペ ンあるいはマウスを利用して自由に図形を入力することができ、 システムはその入力図形から必要な幾何学的制約を抽出、整形を 行なう。手書き入力の曖昧性に対処するため整形結果は複数の候 補として画面上に提示され、ユーザは希望する図形を直接クリッ クすることによって選択することができる。図形のフリーストロ ークによる入力の他に、簡単なジェスチャーによる図形の消去、 メニューによる操作の取消や画面の消去、図形のファイルへの書 き込み、読み込みが可能となる。本システムを利用することによ り、複雑な編集機能を一切用いることなく、正確な幾何学的図形 を手早く描くことが可能になる。