平成8年度 委託研究ソフトウェアの中間報告 |
(1)研究テーマ
(2)研究代表者(氏名、所属、役職)
(1)研究進捗状況
分散環境で Quixote を利用するには解決しなければならない問題が数多くあ る。複数の Quixote データベースをいかに結合するか、データベース間の矛 盾をいかに解消するか、Quixote の拡張問合せ機能をいかに分散環境に適用す るか、などである。そのためには、各情報源を表現するカプセル記述 (ラッパー) とそれら情報を統合するためにメディエータ記述を明確にするほかに、情報の 局所化も可能にしなければならない。Helios でも分散環境での異種情報源を 統合する問題解決系としてマルチエージェントに基づくアプローチが提案され たが、局所情報を融合するための大域的な記述機能が欠如していた。言い換え れば、分散環境でのビュー、あるいは大域的個別化機能である。本研究では、 メディエータ・アーキチェクチャを Quixote 向きに拡張することによって上 記機能を実現することを目指している。
対象とする情報源は Quixote だけではなく、半構造データを含む幅広い情報 源とするため、それらカプセル記述/自己モデル記述としては Quixote を用い、 融合するためのメディエータ仕様記述としてはモジュールの拡張として情報源 を位置付け、その所在を指定できるように Quixote を拡張した。さらにメディ エータで複数の情報源を制御するために、データ・デクショラリ/ディレクト リ (DD/D) を持たせている。包摂関係には各情報源に対応した局所的なものと、 それらを統合した大域的な包摂関係の2種類を考え、大域的包摂関係は DD/D に持たせている。問合せは、局所的包摂関係を大域的包摂関係に置換すること による拡張ビュー機能、仮説生成による情報源の切替を可能にしている。これ ら情報源の統合を自動化するのは本質的に困難なので、Quixote と同様思考実 験を行なう環境を考えている。
応用としては計算機援用協調作業のひとつであるワークフローと分散環境での 利用が注目されている開放型地理情報処理を検討している。ワークフローにつ いては、実際に業務を行なう人をシステムに組み込むために Helios のエージェ ントの概念を使用している。構造化された業務 (ワークフロー) をオブジェク トの集合として表現し、そのフローを2種類に分類したモデルを提唱している。 ひとつはプロダクションルールにイベントを導入し ECA ルールとし前向き推 論を行なうもの、通常の確定節として表現し後向き推論を行なうものである。 それらを統合したワークフローベースを定義し各種の問合せ機能をもたせてい る。開放型地理情報処理に関しては、空間情報と履歴情報を融合したモデルと、 地理情報を連続オブジェクトとして考えた場合のモデルを検討している。
(2)現在までの主な成果
上記研究の中で、ワークフローモデルに関するものは研究発表を行なっており、 分散環境での情報源の統合および仮説生成による拡張問合せに関しては発表準 備中である。開発物としては、束として表現された局所的な包摂関係を大域的 包摂関係に変換するモジュールとその思考実験環境は Java で実装済である。
(3)今後の研究概要
上記研究は個別的に分割してなされているので、個々の研究の推進・整備の他 に、全体を Quixote 言語およびその処理系の拡張としてまとめ上げる予定で ある。また本格的な開発体制に移行しつつある。その他としては、包摂制約以 外の知識の統合方式、Helios のエージェント概念を使用したワークフローモ デルの拡張についても検討する予定である。さらに開放型地理情報処理に関す るものも発表に向けて準備を行なっている。
(4)今年度目標成果ソフトウェアイメージ
Jave クライアントはファイル入出力を持たないし、遠隔オブジェクトを扱え ないので、そのライブラリの拡張として位置付けられ巡回オブジェクトも持つ Aglets や、HORB も利用したソフトウエア環境を考えている。Quixote の拡張 と位置付けられる QUIK 処理系については、Netscape のような Web ブラウザ を利用者インタフェースとしたものを予定している。