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研究の背景と目的

法的推論システムを構築する際に基本となる3要素は、(1) 知識表現と基本推 論システム、(2) 解釈生成システム、 および (3)(解釈に関する)論争支援シ ステムであると言われている。(1) は条文や事例(ケース)および一般常識知 識など、様々な形態で記述された法的知識をできるだけ柔軟な構文で書き下し、 的確な推論を行うために必要なことは自明であろう。一方、基本推論システム が仮定する知識の完全性を、現実には仮定できないことにより、(2) の解釈技 法をシステムが持つべきことも古くから指摘されているとうりである。本研究 の第1の目的は、様々な解釈のうち、特に条文に現れる語彙Aを別の類似した語 彙Bに置き換え、『条文におけるAはBも意味している』と解釈する、いわゆる 類推解釈を行う機能を我々の推論システムに付与することにある。具体的には、 語彙間の類似性を検出・判断する機能である。

語彙間の類似性を考察するときの重要なポイントとして、立場や論証目的(ゴー ル)により類似性の判定が微妙に変化するという事実がある。実際、事例ルー ルを参照するやり方は原告か被告かという立場に依存し、一方がAとBの類似性 により判例を参照したとしても、他方は当然その類似性に異議をとなえ、AB間 の類似性の当該事例における不適切さを主張するであろう。このように、可能 な類似性に関わる論争とは類似性の適切さの問題と表裏の関係にあり、語彙間 の類似性検出機構は必然的に適切さを何らかの方法で判断する基準を持つこと が必要になる。本研究の直接的な目的は、適切さの基準を踏まえてゴールに依 存した類似性を検出する機構を設計することであるが、それに基づいて、より 高度な論争を支援するシステムへの確かな道が開けると考えている。



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