評価基準に従って最適な文章構造を選択する。 最後にDu1cineaは冗長な語を省略したり各オブジェクトに対応する語を選択 しながら立論テキストを生成する。以下の図はFTSに文の順序と接続表現の情 報が加わったテキスト構造を示している。 立論ドメインと立論テーマ一覧 Du1cineaは種々の立論ドメインと立論テーマを扱うことが出来る。以下にその 一部を掲げる。 交通問題:逆行レーンの導入の是非/電気自動車実用化の是非 捕鯨問題:商業捕鯨の停止に関する是非 労働問題:労働時間の短縮の是非 住宅問題:両親と同居することの是非 スポーツ:オリンピック入賞者に褒章金を与えることの是非/オリンピックの商業化の是非 医療問題:脳死を人の死とすることの是非/尊厳死の是非 立論例 立論ドメイン:交通問題 立論ゴール:逆行レーンを実施すべきである 生成される立論テキスト: 御堂筋では一方通行を実施して,逆行レーンが実施されなかったため に,バスルートが変わったので、パスの乗客が40%減ってしまった。こ のように、ー方通行を実施するときに逆行レーンが実施されなければバス ルートが変わって、変わればバスの乗客が減ってしまう。また、パスの乗 客が減ればバスが廃止されてしまう。 また,逆行レーンを実施すれば歩行者が危険なように見える。しかし、 ロンドンではバスがライトを点灯して、逆行レーンを実施したので、歩行 者が危険でなかった。このように、バスがライトを点灯すれば逆行レーン を実施してても歩行者は危険でない。 したがって、逆行レーンを実施しなければならない。 デモ概要 初めに立論ドメインを交通問題とし、「逆行レーンを実施すべきである」とい う立論を行う。この時は本論のみの立論に限定し、各モジュールの動作と出力結 果について簡単な説明を加える。次に、同じ立論テーマについて実例・反論への 批判を加えた完全な立論を行う。更に「実施すべきでない」という逆の立場の立 論や、「実施してもよい」といった立論も実行してみる。また、同じ交通問題で 別のテーマについての立論例も紹介する。最後に見学者のリクエストに応じて、 信念データベースを入れ換えて別の立論ドメインを選択し、立論を行ってみる。 並列協調に基づく自然言語解析実験システムLaputa 目的 本研究の目的は並列推論マシンの利点を活用して自然言語処理のあらゆる処理 (形態素解析,構文解析,意味解析など)を統合するためのソフトウェア技術の基 礎を開発することである。 概要及び特徴 (1)自動的な並列協調処理の実現 自然言語処理の全ての部分処理を共通の処理機構で処理する並列協調モデル を提案した。 (2)性能 32台構成のマルチPSIで、1台での処理と比較して13倍の速度向上率を達成 することができた。 研究の趣旨 本研究の目的は、並列推論マシンの利点を活用することにより、自然言語処理の ための自然な並列協調モデルを提案することである。 近年、自然言語処理の分野では、形態素解析、構文解析、意味解析などを含め たシステムの統合が提案されている。このような考え方の基盤として、人問の情報 処理が情報の部分性あるいは不完全な情報に基づいて行われているという認識が ある。このように統合された自然言語処理は、処理の方向性を捨象しているという 意味で並列処理に適したものである。したがって、自然言語の統合と並列協調は 自然な処理モデルということができる。 しかし、そのようなモデルを実現した例はほとんどない。なぜなら、効率的に 並列協調を行うには全ての処理過程は相互に情報を交換する必要があるが、モジ ュール間での情報交換やその制御は非常に実現困難な問題だからである。このよ うな問題に対する一つの解答は、解析の段階を区別なく同一の機構で処理するよ うに処理の枠組みを抽象化してしまうことである。我々は処理の枠組みとしてレ コード的型構造に関する型推論を採用した。 アプローチ 形態素解析や構文解析に関しては効率的なアルゴリズムが存在しており、統合 的自然言語処理においても,実用的なシステムを構築するにはそういった知識を 無視するわけにはいかない。 レイヤードストリーム法による構文解析 幸いなことに我々は型判断と既知の構文解析手法との間に関係を見いだすこと ができた。松本による並列構文解析システムPAXは「レイヤードストリーム法」 という並列論理型言語による探索問題のための効率的な処理手法を用いて構文解 析を行うものである。PAXは基本的にチャート法と同等の構文解析アルゴリズ ムになっている。我々の型判断システムはPAXのプロセスと通信データの関係 を反転させたものになっている。また、我々のシステムと同等の構文解析システ ムがICOTの瀧によって考案されている。 文法及び辞書記述の例[主語と目的語の意味的関係の動的決定] 以下の文法規則例は、主語に依存していかに目的語の意味範疇の適切性が動的 に変更されるかを示している。 {np,[sem=Subj]}<({vp,VP}→{s,VP=[agent=Subj]}) この規則は、型npの上位の型が関数型“vp→s"であることを示しており、 あるオブジェクトがnpとして判断されたならば、それはvpという型を持つオブ ジェクトが適用されると結果としてsという型のオブジェクトになるような関数 でもあるということを意味している。この規則ではvpが持つ全ての記述はsにマ ージされ、npのsemという素性の値はsのagentという素性の値と単一化され る。 次にこの規則に対応する語彙項目を掲げる。 eats:{np,[sem=Obj]}→{vp,[agent=Ag:{animal,[eat_obj=Obj]}]} john:{np,[sem={human,Id,[name='John']}]} the_tiger:{np,〔sem={tiger,Id,[]}]} この辞書ではオブジェクトeatsはnp→vpという型であり、さらに記述が付 加されている。その記述に書かれているのは、agentという素性の値は型付き変 数であり、その型はanima1というソートであって、そのeat_objという素性の値 が型npのsem素性の値と単一化されているということである。 意味範疇を定義する規則は次のものとする。 {tiger,[]}<{animal,[eat_obj=E:{animal,[]}]} {human,[]}<{animal,[eat_obj=E:{food,[]}]} この規則の意味は、トラは動物を食べる動物であり、人問は食べ物を食べる動 物であるということである。 この文法規則と辞書のもとではjohnもthe_tigerも意味範疇は動物であるが、 (the_tiger,eats,john):sという判断は成功するのに(john,eats,the_tiger): sという判断は失敗する、その理由はこの意味範疇を統御する規則のもとではトラ は食べ物として判断できないからである。