モデルに基づくブラント制御用エキスパートシステム デモの流れ 異常時推論機構を単体で動作させてデモする。プラントを模擬したプラントシミュレータとシステムを結合させて実験した結果はビデオテープにより示す。 Step1)不測の異常の発生 以下の二重故障発生の状況を、プラントシミュレータのマルファンクション動作時に収録したビデオテープで示す。デモではマニュアルでPSIに直接入力する。 Step2)不測の異常徴候の検知 プラント監視部は、予測トレンドと実トレンドの偏差大を検知することにより不測の異常を検知する。その結果、異常時推論機構が起動される。 Step3)診断部の起動 定性因果モデルと徴候クラスタリングにより原因仮説を生成し、初期プラント操作として、不良機器の停止を出力する。 モデルに基づくプラント制御用エキスパートシステム Step4)操作同定部の起動 機器モデルと運転原則モデルにより、対策に必要なプラント操作を導出する。 Step5)条件生成部の起動 対策操作の条件を生成し、以下のような運転制御知識をコンパイルする。 Step6)シミュレーション評価部の起動 対策操作実行時のプラント挙動を予測することにより、コンパイルされた運転制御知識の妥当性を検証する。 Step7)対策操作の実行 正常時推論機構に切り替わり対策操作が実行される状況を、プラントシミュレータの動作を収録したビデオテープで示す。また本システムの有効性を示すために、対策操作を実行しなかった時にブラントがトリップする状況をビデオテープで示す。 適応型電子装置診断実験システム 概要 電子装置を対象として、構築・保守が容易で、かつ過去の事例からの学習による適応能力を持った故障診断システムの実現を目的とする。また、その並列処理による高速な実行を目的とする。この目的のために、診断対象装置の構造・動作に関する知識に基づくモデルベース診断技術、経験的知識の学習・利用による適応型診断技術、及び、並列処理技術の研究開発をおこなった。 特徴 モデルベース診断 診断対象装置の構造、動作に関する知識を用いたモデルベース診断により、専門家へのインタビュー等による診断知識べ一スの作成が不要。 経験的知識の学習・利用による適応型診断 過去の故障事例から、診断対象装置を構成する各部品の故障確率分布を学習する。これを診断に利用することにより、経験を積んだ専門家と同等の効率的な診断が可能。 並列処理技術 Mu1ti-PSIを用いた並列処理により、高速な診断及び学習が可能。 適応型電千装置診断実験システム 研究の目的 近年、電子交換機などの電子装置は益々複雑化しており、その保守が困難になってきている。これを自動化する技術として、専門家の保守の知識をインタビューにより聞き出し、ルールで表現して推論を行うエキスパートシステム技術に期待がかけられている。しかし、知識を引き出し、ルールとして記述することが予想以上に困難であるために、小規模の対象装置に適用されるにとどまっている。そ こで、対象装置の構造と動作に関する設計データのみを利用して診断を行うモデルベース診断システムの方式が研究されている。この方式は、設計データを利用するので専門家のインタビューなどを必要としない反面、保守の専門家の経験的知識を利用しないため、効率的な診断が行えない欠点があった。 本研究では、モデルベース診断に経験的知識を利用する機能を付加し、効率よい診断を可能にすることと、経験的知識を過去の事例から効率よく学習する機能を実現すること、及びそれらの複雑な処理を並列処理により高速に実行する技術を確立することを目的として行われた。 まず始めに、学習機能により、過去の事例データを基にして各部品の推定故障確率を求める。この学習方式は、MDL基準に基づく確率帰納推論により行なわれる。この計算は計算時間を要する複雑な計算のため、並列処理による高速化が行われている。 適応型電子装置診断実験システム 次に、与えられた症状データと観測値を基に、被疑部品のリストを作成する。 この処理は、対象装置を、複数の構成部品の集合としてモデル化し、各構成部品の動作と部品間の接続関係を記述した論理的知識(モデルベース)を利用して行う。動作と接続関係の知識は一階述語論理で表現されており、論理型言語であるKL1で記述されている。この計算は、対象装置が、与えられた入力値に対して、期待される出力値と異なる出力値を出す理由(故障候補集合)を求める仮説推論方式により行なわれる。 システムは終了条件が溝たされるまで、テストの選択、実行を繰り返しながら、故障候補集合を絞り込んでいく。この時、最もコストあたりの有効度が高いテストを求めるために、各故障候補の故障確率を利用したエントロピーの計算による情報量の計算を行う。この処理もテストの候補が多くなると処理に時間を必要とするため、並列処理による高速化がはかられている。 実験結果 複数の例題について並列処理の効果を計測した結果、16プロセッサを用いた場合、1プロセッサの場合として比較して、診断機能について約4倍から5倍の高速化、学習機能について約8倍から11倍の高速化が確認された。下図に、学習機能の並列処理による台数効果の例を示す。