第五世代コンピュータプロジェクトの概要 研究開発の目標 第五世代コンピュータプロジェクト(FGCSプロジェクト)は、知識情報処理の 実現に必要な、新しいコンピュータ技術の研究開発を目指した、ナショナルプロジェ クトして、1982年(昭和57年)から、開始された。 このプロジェクトでは、将来における知識情報処理の中核的機能は『知識べ一ス を用いた推論操作』であることを見通し、第五世代コンピュータの中核として、論理 プログラミングを採用した。そして、論理プログラミングによって、知識情報処理と 高度並列処理を結び合わせるという新しい試みを行ない、それによって、新しいコン ピュータ技術の創造を目指した。 第五世代コンピュータプロトタイプシステム 研究開発されるいろいろな要素技術を評価するために、最終目標として、第五世 代コンピュータプロトタイプシステムを試作することが計画された。 新世代コンピュータ技術開発機構(lCOT)は、プロジェクトの中核機関とし て、第五世代コンピュータのための新しい理論や諸技術の、研究開発を実施してき た。現在、第五世代コンピュータプロトタイプシステムは、10年間の主要な研究開 発成果を結集して、稼働を開始している。この強力なシステムによって、新しい知識 情報処理の応用領域が開け、高度な応用問題への挑戦が可能なる。 第五世代プロジェクトの研究開発の経緯 研究開発計画と予算 第五世代コンピュータプロジェクトは、その研究開発目標が、コンピュータ技術の 未踏分野であったため、プロジェクト期間中を、前期、中期、後期に分け、研究の進 捗状況を見ながら目標を、順次、詳細化していく方針をとった。 研究開発予算額については、各期の始めに、その期の研究開発内容に応じて決定 された。結果的には、研究開発は、広く内外の研究者の協力を得て、幾度か技術的な 困難を克服、その歩みを止めることなく、後期の目標まで到達した。 並列推論システムの研究開発過程 並列推論マシンPlMや、大規模な並列ハードウェアを効率良く管理し、かつ、 生産性の高いKL1プログラミング環境を提供する並列OS,PlMOSの開発は、 必要な要素技術をひとつひとつ積み上げる地道な努力の結果、達成された。 前期は、逐次型の推論技術の開発と蓄積につとめ、中期では、逐次型推論のハー ドウェアやソフトウェア技術を土台として、並列処理の世界へと飛び移った。そし て、後期では、並列処理の世界での新しいソフトウェア作成技術や、並列知識処理の 応用分野の開拓に力を注いだ。 法的推論システムや並列プログラム開発支援システムは、高次推論機構を用 いることで、部分的ながら、『知的処理の自動化』を行なっている。これ らでは、強力な並列記号処理能力が、知的水準の向上という質的なものに転 換されており、実際のシステム側としては、世界に先駆けたものとなってい る。 3.第五世代コンピュータの技術の機能実証のための問題の発掘は、従来のコン ピュータ技術では、手の届かなかった応用領域の開拓に、必然的につながっ ていく。法律、遺伝子情報、ソフトウェアの生成、自然言語処理などの分野 への、高水準の知識情報処理技術の適用は、コンピュータ技術の、新たな適 用領域と学際的な研究分野を、生み出している。 平成4年5月新世代コンピュータ技術開発機構 並列推論システム 概要 並列推論システムは、FGCSプロトタイプ・システムの基本部分を構成する.核言 語KL1によって記述された記号処理,知識処理の問題を効率良く並列に実行するこ とができる. システム構成要素 ・核言語KL1は記号処理、知識処理の問題を簡潔に記述し,並列に実行するのに十 分な記述力および機能を持つ汎用並行論理型言語である. ・PIMOSは従来OSの機能に加えてKL1プログラミング環境も提供する. ●PIMのハードウエア・アーキテクチャはKL1を効率良く実行するために、並列 マシンの観点からバランス良く設計されている. ・KL1言語処理系の実装に関して,その並列化、分散化オーバヘッドは低く抑えら れている. ・応用プログラムのレベルでは,動的,静的に負荷分散や見込み計算を行い十分な台 数効果が得られる. 並列論理型言語「KL1」 概要 並列推論マシンのハードウェアから応用ソフトウェアに至るまで,並列推論システ ム全体の設計指針を与えた,Guarded Horn C1ausesに基づく核言語 特徴 ・問題を多くの小さな問題に分けて処理する,細粒度並列処理を容易に記述 ・OSから知識情報処理まで,すべてのソフトウエアの記述に使用 ・プログラムの意味と処理の仕方の指定を明確に分離し,負荷分散を容易に ・PlMの全モデルに共通する言語仕様→高いソフトウェア移植性 並列推論マシン・オペレーテイングシステム「P1MOS」 概要 PIMOSは並列推論マシンP1Mの各モデル、マルチPS1に共通するオペレー ティング・システムで、効率的で快適なソフトウェア開発環境を提供している。 特徴 ・並列論理型言語KL1で全システムを記述 非常に高い移植性を実現 ・階層的な分散管理により,管理の集中によるボトルネックを解消 ・KL1のためのソフトウェア開発ツール群を提供 種々のデバッグ・サポート,負荷分散状況の可視化,... ・並列ソフトウェア研究開発環境として4年半にわたる利用実績 PlM,マルチPS1上のデモはすべてP1MOSの管理下で動作している