研究の趣旨

本研究の目的は、並列推論マシンの利点を活用することにより、自然言語処理の
ための自然な並列協調モデルを提案することである。

近年、自然言語処理の分野では、形態素解析、構文解析、意味解析などを含め
たシステムの統合が提案されている。このような考え方の基盤として、人問の情報
処理が情報の部分性あるいは不完全な情報に基づいて行われているという認識が
ある。このように統合された自然言語処理は、処理の方向性を捨象しているという
意味で並列処理に適したものである。したがって、自然言語の統合と並列協調は
自然な処理モデルということができる。

しかし、そのようなモデルを実現した例はほとんどない。なぜなら、効率的に
並列協調を行うには全ての処理過程は相互に情報を交換する必要があるが、モジ
ュール間での情報交換やその制御は非常に実現困難な問題だからである。このよ
うな問題に対する一つの解答は、解析の段階を区別なく同一の機構で処理するよ
うに処理の枠組みを抽象化してしまうことである。我々は処理の枠組みとしてレ
コード的型構造に関する型推論を採用した。

アプローチ

形態素解析や構文解析に関しては効率的なアルゴリズムが存在しており、統合
的自然言語処理においても,実用的なシステムを構築するにはそういった知識を
無視するわけにはいかない。

P.114 Figure 1
レイヤードストリーム法による構文解析
幸いなことに我々は型判断と既知の構文解析手法との間に関係を見いだすこと ができた。松本による並列構文解析システムPAXは「レイヤードストリーム法」 という並列論理型言語による探索問題のための効率的な処理手法を用いて構文解 - 114 -