適応的移動時刻界(AMTC)

素朴に実装されたタイムワープ機構では、ゲートにメッセージが到着すれば、
即座にその評価を行う。しかしながら、極度に将来の時刻を持ったメッセージに
ついては、評価後に巻き戻される可能性が極めて高い。
MTC(移動時刻界)は、評価を行うメッセージの時刻の上限値を一時的に与え
るものである。MTCの導入によって、極度に将来の時刻を持つメッセージの評
価および生成を抑制できる。したがって、MTCはロールバック頻度を低下させ
ると考えられる。
MTCは適当なタイミングで、適当な時間幅だけ将来の方向に進んで行く。し
かしながら、MTCの適切な移動幅を予め静的に決定しておくことは難しい。例
えば、MTCの移動幅を過小に設定した場合、ロールバック頻度は低減できるも
のの、プロセッサの遊び時間が長くなる。一方、MTCの移動幅を過大に設定し
た場合、ロールバック頻度はほとんど低減できない。
本シミュレータでは、ロールバック頻度や、以前のMTC移動幅が性能に与え
た影響の情報を元に、適応的に新たなMTC上昇幅を決定してゆく(AMTC)。こ
の方法により、対象回路、シミュレーション条件に依存せず、適切なMTC上昇
幅を得る。

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図 3: 適応的移動時刻界(AMTC)
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