研究の目的

近年、電子交換機などの電子装置は益々複雑化しており、その保守が困難になっ
てきている。これを自動化する技術として、専門家の保守の知識をインタビュー
により聞き出し、ルールで表現して推論を行うエキスパートシステム技術に期待
がかけられている。しかし、知識を引き出し、ルールとして記述することが予想
以上に困難であるために、小規模の対象装置に適用されるにとどまっている。そ
こで、対象装置の構造と動作に関する設計データのみを利用して診断を行うモデ
ルベース診断システムの方式が研究されている。この方式は、設計データを利用
するので専門家のインタビューなどを必要としない反面、保守の専門家の経験的
知識を利用しないため、効率的な診断が行えない欠点があった。
本研究では、モデルベース診断に経験的知識を利用する機能を付加し、効率よ
い診断を可能にすることと、経験的知識を過去の事例から効率よく学習する機能
を実現すること、及びそれらの複雑な処理を並列処理により高速に実行する技術
を確立することを目的として行われた。

システムの概要

P.24 Figure 1
システム概要フロー
まず始めに、学習機能により、過去の事例データを基にして各部品の推定故障 確率を求める。この学習方式は、MDL基準に基づく確率帰納推論により行なわ れる。この計算は計算時間を要する複雑な計算のため、並列処理による高速化が 行われている。 - 24 -