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調査資料-1「米国における政府系研究予算の戦略的決定・執行体制」

本資料は、イントロダクション、国家レベルのR&D戦略概論、米国 国家レベルのR&D戦略のファンディングシステム、米国R&D戦略のファンディン グシステムの要点、日本のシステムへの意味合い、まとめで構成されている。

米国における国家の研究開発戦略には、公共目的指向と産業展開指向の視点から 見て4つの型があるが、産業力との関連から見ると、理想的には産業展開可能な 広義公共目的指向のものが最も望ましいとされている。

米国政府の国家研究開発戦略は、大統領の強力な政策イニシアティブで トップダウンに決定される。これを補佐するために、省庁間の調整を行う国家科学 技術会議(NSTC)と産業界・大学からのアドバイスを集める科学技術諮問委員会 (PCAST)が設けられている。このように企業や大学の実務的な専門家が 実質的に国家の研究開発戦略を決定しているのが、日本との大きな違いといえよう。

国家の研究開発戦略により、研究分野の大枠が決まると、この下で、 情報通信分野については、NSF,NASA,DOE,DARPAの 4省庁が主なファンディングを行っている。 NSFはより教育的で研究寄りを目標に、DARPAは よりスペシフィックな開発寄りを目標にファンディングを行など、 各省庁はそのミッションに応じたファンディングを行なう。 しかし、そのファンディング領域は、それぞれかなりの重なりがあり、 これが省庁間の連携を生む要因の一つとなっている。

大学等の研究者は、この大枠の中で、研究テーマの提案を行なう。この結果、 研究開発戦略に盛り込まれた広義の社会的ニーズとこれに対応するシーズ的な 研究がマッチングすることになる。

情報通信分野については、HPCC(High Performance Computing and Communications)プログラムに基づいてR&D戦略が執行されてきたが、 1996年に良好な評価の内に終了し、1997年からはこれが、CIC(Computng, Information,and Communications R&D)プログラムに発展的に組み替えられた。 CICプログラムにおいては、 研究成果をアカデミアのレベルに留めず、商品化することを重要な方針の 一つとしている。そのため、CICプログラムでの研究成果を商品につなげるために、 試作、評価、調達を目的とする他のR&D助成プログラムの有効活用が 図られている。

悪循環に陥っている日本の国家研究開発戦略の戦略性を向上させるためには、責任・ 評価・権限の連結システムによる思い切った資源投入、プロの研究者の導入による 決定スキル・スタッフの増強、透明性を保障する法律設定が当面のカギである。