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2.3 2003年度SDPの活動計画

2.3 2003年度SDPの活動計画

 ワークショップからの提案を受けて、米国政府は、通称Blue Book 2003と呼ばれる「ネットワーキング及び情報技術研究開発 ― 2003年度大統領予算教書補足資料」[3]において、SDPに対する2003年度の活動計画を以下のように示している。

2.3.1 取り組み方針

 2002年に、半導体業界は地球上にいる人間の数より多いコンピュータ用チップを生産すると予測されている。これらチップの約1%だけが認識可能なコンピュータに使われ、ほとんどは他のタイプの機器に組み込まれる。すなわち、小さなものでは携帯電話、ポケットベル、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)やリモコンであり、大きなものとしては車、飛行機、製造機械、兵器システム、緊急警報ネットワークのような複雑な物理的システムなどである。組み込み型コンピューティング技術にとって最も有望な新しい方向は、ほとんどリアルタイムで重要なデータを収集し、転送することのできるネットワーク化されたマイクロセンサシステムである。このようなセンサ網は、環境と危険モニタリング、科学的農業、輸送管理、戦闘場面における偵察と早期警戒システムを含む、広範囲のアプリケーションに使われるようになっている。
 IT研究者が、国家のコンピューティング及び情報通信インフラストラクチャ上で動いている現世代のソフトウェアの重大な技術的脆弱さに取り組もうとしたとき、IT研究者は、組み込み型技術における初期の変革において、独特の新しい難問に直面した。今日のソフトウェアは、その開発とメンテナンスに巨大な金額が費やされているもかかわらず、必要とされているほど相互運用性がなく、拡張性もなく、また、コスト効率に優れているわけでもない。
 この問題を解くかぎは、これまではプログラミング“ウイザード”という寂しい技術によって行われてきたソフトウェア設計と開発を、質の高い結果を得るために広く受け入れられる原理、方法、最良の経験で支配された形式的枠組みの科学と工学の学問分野に変換することである。技術者は、技術的要求を満たした詳細な設計図、関連する基本原理や関連材料に対する最先端の訓練で養われた知識、長持ちする品質保証された構成部品を作るためのコスト効率の良い開発プロセスを持たずに、つり橋を架けるような夢を見ることはない。わが国のインフラストラクチャに根を下ろす重要な基盤として、ソフトウェアは少なくとも科学的に設計されたものであるべきである。
 NITRDの研究のひとつは、ソフトウェア開発の新しい科学のために、モデルを作り出し、試験し、評価することに重点を置いている。目標は、今日の特異的で少数の人のみが理解できるコードから脱却し、合理的でモジュラリティがよく、実証的で再使用できる、安定した工学的設計に移行することである。科学的な原理と手法は、開発者やユーザが、自動化された技術を使って、ソフトウェア製品を設計し、構築し、試験し、厳しい使用テストをすることを可能にする。ここで自動化された技術は、ソフトウェア製品が利用される前に、それらの動作を確認し、大規模ソフトウェアの何百万のもの手作りのコード中に潜む、今すぐ簡単に見つけられない弱点を正確に指摘することができるようにする。設計と実装の局面を自動化し、実践的なテストベッドを使うことは、プログラミング段階を合理化するだけでなく、高価なデバッグ工程の効率を上げ、改良することによって、現在の極めて高い開発コストを抑制することになろう。
最終的には、より高品質のより多くの製品を作ることを可能にするだけではなく、実質上開発費を下げ、維持を容易にすることにより、ソフトウェアの「生産性」を劇的に向上させる開発方法論を得ることが目的である。
 ソフトウェアのための科学的基盤は、組み込み型システムにとって極めて重大なものであり、大規模な物理的システムの内側奥深くにある小さなコンピュータ・コンポーネントは、極めて多くのコンピューティング及びノン・コンピューティングタスクをリアルタイムにサポートするための機能を持っている。ちょうど、自分がどこにいるか、そして、または何をしていようとも、我々の心臓と肺は命令されなくとも機能するように、組み込み型プロセッサはその仕事を自動的に絶え間なく行うことができなければいけない。ちょうど我々の命は、新しい細胞が生まれて古い細胞が死ぬことにほとんど影響されないように、組み込み型システムは、いくつかの個々の組み込み型プロセッサが損傷を受け、破壊され、付け加えられ、あるいはアップグレードされても、全体としてのシステムが自動的に機能し続けている間、動作し続けることを期待されている。
 2003 年度に、NITRD参加機関は、ソフトウェアの品質を向上させ、その費用を全面的に削減するための基礎研究を支援する。この先進的技術は不可欠の駆動力となり、我々は、これにますます依存度を深めることになって、大規模及び小規模アプリケーションの両方において、社会により、大きな利益をもたらすことになる。

2.3.2 2003年度のSDPの主要な研究課題

2.3.3 2003 年度における各機関の代表的活動

NSF:

DARPA:

NIH:

NSF/NASA:

NASA:

DOE/NNSA:

NIST:

NOAA:

ODDR&E:

2.3.4 2003年度の予算

 表2に示すように、SDPに対する予算は1.821億ドルであり、NITRD予算の約1割を占めている。

表2 NITRD関係機関の個別研究分野(Program Component Area)
別の予算 2002年度予算(単位:100万ドル)
Agency
HECI&A
HECR&D
HCI&IM
LSN
SDP
HCSS
SEW
合計
NSF 225.1 66.4 132.6 102.8 44.4 45.8 58.8 676
NIH 79.5 7.7 82.0 105.6 5.6 3.6 11.4 295
DARPA 17.4 63.9 35.8 35.0 65.6     218
NASA 36.1 26.0 27.8 14.4 22.4 47.1 7.0 181
DOE 97.2 29.5 16.4 27.8     3.5 174
NSA   41.6   1.3   32.7   76
NIST 3.5   3.2 6.2 7.5 2.0   22
NOAA 13.8 1.8 0.5 2.8 1.8     21
ODDR&E   2.0 1.8 5.7 1.6 1.0   12
AHRQ     8.0 6.0       14
EPA 1.8             2
小計* 474.4 238.9 308.1 307.6 148.9 132.2 80.7 1,691
DOE/NNSA 42.1 33.5   25.9 33.2   4.2 139
合計* 516.5 272.4 308.1 333.5 182.1 132.2 84.9 1,830

HECI&A: ハイエンド・コンピューティング基盤とアプリケーション
HECR&D: ハイエンド・コンピューティング研究開発
HCI&IM: ヒューマン・コンピュータ・インターフェースと情報管理
LSN: 大規模ネットワーク
SDP: ソフトウェアの設計と生産性
HCSS: 高信頼ソフトとシステム
SEW: 社会、経済、および労働力の面から見たIT労働力開発
*小計と合計に2003 年度大統領予算教書と若干の相違があるのは、集計における個別研究分野の多少の変更と端数処理の違いによる

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